「クエスト行きましょう！」

　次の日の出来事だ。

寝そべっているボクに、言ってきたのはクルだ。

「どうした急に？」

「お兄様とクエストに行きたいのです！」

「はぁ。まぁ　クエストはしないとだが、早くないか？」

　と、スマホで時間を確認した。5:00ぐらい……うん、早いですね。

「じゃあ、お休み」

　そう言ってタオルケットに頭を入れた。

「寝ちゃダメです～、起きてくださ～い！」

　そう言って手を引っ張ってきた。このまま引っ張られるとベッドから転落する。

「落ちるから、引っ張らないでいただきたい！」

「じゃあ起きて、クエスト行く準備して下さい！」

　起きないと落ちるなこれ。

「わかったわかった。だから引っ張るなぁ」

「早く準備して下さいね♪」

「はいはい」

　体を起こし、美鈴を起こそうとした。

「美鈴ぅぅ。……ちょっと何故引っ張るんだクル？」

「美鈴さんは寝かせておきましょう！」

「どうして？」

「たまには、お兄様と二人でクエストに行きたいのです！」

　たまにはって…。一回しかクエストしてないけどな。

「はぁ、まぁいいか。じゃあ準備するか」

　美鈴にはメールを送っておけばいいか。…後でいろいろ言われそうだ。

　準備を終え、クルに声をかけた。

「準備完了。行くとしますか」

「はい！！」

　妙に元気だな。昨日はこの宿に帰ってからもほとんど喋っていなかったから元気が無くなったのかと思ったが。…もしや、何か裏があるんじゃ？　　考えすぎか。



　ギルドハウスについた。そういや、このギルドの建物ってギルドハウスって言うのな。地図に書いてた。

　ギルドハウスに入って前に見えるのがギルド新設所で、右側にあるのが検査所。そして左側にクエスト受付所がある感じだな。

「どうしたのですか、お兄様？」

「あ、いや。少し考え事をしてた」

「あやしいですね～」

　と、ジト目でボクを見てきた。

あんさんの方が十分、いや十二分にあやしいっす。

「で、何のクエストにする？………これとかいいんじゃない？」

「クエストは決まってます！」

「そうなのか。どんなの？」

「お屋敷のお掃除ってやつです」

　準備万端だな。

掃除か。まぁ出来なくないからそれでいいか。

「じゃあ、それを受けるか」

「もう受けてます！」

　早っ。

「場所は、森の中で、歩いていると古いお屋敷が見えてくるそうです」

「そうか。じゃあ行くとしますかね」

「楽しみです！」

「楽しみって、掃除がか？」

「いえ、気にしないで下さい」

　場所も調査済みで楽しみときたか。この娘もしかして隠し事下手では？ …まぁ触れないでおこうかな。



　森の中。クルはやたらとボクにくっつきながら歩く。歩きづらいことこの上ない。

「離れたりしませんかね？」

「森の中の魔物って怖いんですよ」

「だからってくっつかなくても」

　森に入る前はやたらと手を繋ぎたがるし、ここではスゲーくっついてくる。……何が起こるのでしょうか。もはや、無事に帰れる気配がしません。

「着きました。ここです」

　ここか。って、やっと離れてくれた。何か美鈴みたいだな。

「お屋敷と言うだけあるな。で、掃除は館内全部か？」

「そうみたいですね」

　こりゃ、大変だな。手早く済ませるか。

「よしじゃあまずは玄関入ってホールから掃除するか」

「ホールがあるってわかるんですか？」

「勘だよ。だけどこれだけの大きさだホールはあるだろう」

　玄関とホールは建物の顔とも言える場所だ。ここだけでも念入りにしないとな。



　掃除……終わった。体力がもうない。限界だ。

いろいろ開かない場所とかあったから、そこは省いて掃除した。その分、楽は出来たが。……おかしい依頼者が全く姿を現さなかった。こんなことあるのか？　まぁいいか。

「クル～！終わったぞ～！」

　あれ、返事がない。　遠くに行ったのかな。探すか。

「お～い、クル～？」

　ん～、いないな。

「お兄様。私の……フフフフ」

　後ろからクルらしき声が聞こえた。何だろう、ものすごく怖いんだけど。

「なぁ、クル。ボクに何かするつm……」

　急に睡魔が…。ボクはその場に倒れ意識を失った。



　　　　「……お兄様ずっと一緒ですよ♪」