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レムデシビルの特例承認の話からサイエンスリテラシーの大切さを思う

今回のレムデシビルの特例承認のニュースを見て、非常にモヤモヤする点があって、メモ代わりに今回のコロナウイルスについて自分なりにまとめていたら、サイエンスリテラシーってやっぱり大切だよなーって思い至った話を書きます。


まずは今回のコロナウイルスの発端から紐解くと、
2019年11月中旬に中国武漢で原因不明のウイルス性肺炎と最初の症例が確認されてから、中国全土のみならず全世界に瞬く間に広がったのはご存じと思います。
最初の症例から2か月半後の2020年1月31日には世界保健機関(WHO)は、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言しました。

その上で、
レムデシビルのニュースをざっくりと時系列で整理していきます。

<日米における初の感染者確認日時>
日本:2020年1月16日(木)@神奈川県
米国:2020年1月21日(火)@ワシントン州シアトル

<累計感染者数/死者数>※2020年5月3日現在
全世界:感染者数/327万2202人、死者数/23万104人
日本:感染者数/1万4545人、死者数/454人
米国:感染者数/106万7127人、死者数/5万7406人
https://covid19.who.int/ を参照


2020年2月25日(火)
米国立衛生研究所(NIH)が「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた米国人を手始めにレムデシビルの医師主導治験を開始。また、同治験などを補完する目的で、開発元の米医薬大手Gilead Sciences社が企業治験(第3相臨床試験)を開始した

2020年4月16日(木)
米Gilead Sciences社が新型コロナウイルス感染症の中等度と重度の患者を対象に実施しているレムデシビルの臨床試験に参加している施設からの情報として、臨床試験でレムデシビルを投与された患者のほとんどで症状が回復し、1週間以内に退院したと報道される

2020年4月29日(水)
NIHがレムデシビルが患者の回復を早める効果を確認したと公表した
(回復期間が15日から11日に短縮したとの暫定的な治験結果を公表)

2020年5月1日(金)
NIHの公表を受けて、米食品医薬品局(FDA)が新型コロナウイルスの治療薬としてレムデシビルの緊急使用の許可

2020年5月2日(土)
日本において特例承認するために薬機法を改正
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行令の一部を改正する政令」(令和2年政令第 162 号)
https://www.mhlw.go.jp/content/000627465.pdf

この改正のポイントは以下の4点です(詳細は上記厚労省のリンク参照)
厚生労働大臣が以下のすべてに合致する医薬品に特例承認与えられる
1)国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病の蔓延防止に必要な医薬品であること
2)当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと
3)日本と同等水準国(米、英、加、仏、独)において、販売もしくは授与の目的で貯蔵が認められている医薬品であること
4)新型コロナウイルス感染症にかかる医薬品であること

これで新型コロナウイルスの治療薬としてGilead Sciences社の「レムデシビル」が日本で特例的(滅茶苦茶早い承認スピード!)に使用できる土台ができました。

加藤勝信厚労相は2日、「ギリアドから承認申請が近日中に出されると聞いている。申請されれば1週間程度で承認できる体制を整えるよう指示した」と述べた。重症患者が使えるように公的な管理のもとで流通させる予定


このレムデシビルの日米での使用に関しては、両国共に特例であることは決して忘れてはいけないポイントです。

FDAの緊急使用認可は新薬の有効性を正式に確認した「承認」とは異なる。緊急性が高いなど一定条件を満たせば特例として認める仕組みだ。FDAはレムデシビルについて「コロナ患者に対する安全性や効用に関する情報は限られている」としており、今後も治験を続ける必要がある。正式な治療薬として使うには、安全性や有効性を確保する必要がある。


これで日本で中程度~重症患者が使用できるようになりますが、
さて、ここからが私のモヤモヤポイントです。

この特例承認は、海外で承認されている医薬品のみが対象となっていて、日本国内で開発中の医薬品、例えばアビガンなどに対して特例承認は基本できないんです、まさにこの一点に尽きます。

今回はラッキーにも該当する5ヵ国に該当する製薬企業に効きそうな医薬品があったから良かったものの、もし海外になく、日本国内で治験中だったみたいな場合は治験が終わって、承認申請して、厚生労働省から承認されるまでは使うことができません。。。。

これってやはりまずいと思うんです。
特に感染症関連に関しては、感染から発症、症状悪化まであまり時間的猶予がないため、日本国内の法整備をこれを機にする機運がでてくるのを願っています。

バイオテロとかもあるでしょうけど、こうした自然発生的な感染爆発にたいしても即応できる体制を是非整えてほしいと思うばかりです。

そして、こうした世界がまたいつ来てもおかしくないわけですから、個人として備えをしておこうと思っています。
地震や自然災害への備えとともに、こうした世界規模の感染症に対しても日頃から物質面と行動面から備えておくことが多くあると思っています。

そして、さまざまなリテラシー(ネット、マネー、メディアなどなど)がある中で、これからはサイエンス・リテラシーも大切になっていくだろうと今回の新型コロナウイルスやこの記事のレムデシビルの特例承認の話から強く思うようになっています。

文部科学省の定義によると、
 科学的(サイエンス)リテラシーとは、「自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し、意思決定するために、科学的知識を使用し、課題を明確にし、証拠に基づく結論を導き出す能力」である。

サイエンスリテラシーについてですが、かなり古い記事があります。
そこには私がとても共感できるる部分があり、それはこれです。

サイエンスリテラシーとは、人が国や地方の決定の基礎となる科学的な問題を特定し、科学的・技術的に情報を得た立場を表明できることを意味します。リテラシーのある市民は、科学的情報を、その情報源とそこに用いられた方法を理解して評価することができなければならない。また、サイエンスリテラシーとは、エビデンスに基づいた議論を提起し、評価し、その議論から得られた結論を適切に利用する能力を意味します。(黒坂意訳)

Scientific literacy implies that a person can identify scientific issues underlying national and local decisions and express positions that are scientifically and technologically informed. A literate citizen should be able to evaluate the quality of scientific information on the basis of its source and the methods used to generate it. Scientific literacy also implies the capacity to pose and evaluate arguments based on evidence and to apply conclusions from such arguments appropriately. (記事原文抜粋)

このサイエンスリテラシーを広く遍く向上させるためにはかなり道のりが長いのは百も承知していますが、科学に携わる多くの人(大学、研究所、企業、教育など)が色々な発信をする世界というのがもっと広がるといいなと思っています。それによって多くの人が質の良い知見に触れる機会が増え、サイエンスリテラシーへの関心にもつながると思っています。

今私たちには各自できることがあると思っています。それを各自よく考えて行動に移してほしいなと思っていますし、私は毎日自宅で過ごしています。COMEMOHUBでの活動は、私にできることの一つで、ニュースを起点とした知見を書いて発信することです。こうした地道な活動をして、多くの人が持つ独自の知見が世に出てくる世界は、もしかするとこのサイエンスリテラシーが広まっているような世界なのかもしれません。

明日は今日よりも一歩でも前へ進んでいるように頑張りたい。


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この記事を読んでいただいたみなさまへ 本当にありがとうございます! 感想とか教えて貰えると嬉しいです(^-^)