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【随筆/まくらのそうし】 薪風呂

 内装は自分でやることとして、石膏ボード剥き出しのまま住んだもので、給湯器などあるはずもなく、薪で風呂を沸かしていた。

 これがなかなか台風の日などは大変で、一日くらいはと台所で湯を沸かし、体を拭いて済ませたものだが、暖を取るのに、薪ストーブなどあるもので、これらのおかげで火の扱いなど、もはや玄人はだしである。

 杉に蝕まれた山なれば、その木を切り、使い切ることなど出来もせず、薪の確保には困らない。

 それが最近、給湯器を導入し、これでいつでも風呂に入れると、喜んだのもほんの一時、ガスと薪で沸かした水の、その違いに驚いた。

 もちろん計れば同じ温度、しかし、感覚的に言うのなら、ガスは水の表面が熱く、薪は水そのものが熱くなったというような。

 薪の風呂は温まるとは、そう言うが、奇妙に思えるその違い、やはり薪で沸かすがいいような、そんな気がしないではないが、人は常に楽に流れる、給湯器様々と、今夜も崇め奉ることだった。

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