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【随筆/まくらのそうし】 蜘蛛の家

 こちらを刺すハチは迷惑なので出て行ってもらう。カメムシも臭いので、出て行ってもらう。

 ムカデも刺すため、アリや蛾や、ハエ、ゴキブリも食べ物を駄目にするため、出て行ってもらうか、もしくは輪廻転生をして頂く。野菜から落っこちたのだろう、イモムシなどは少ないが、踏んでしまうのも嫌なので、やはり出て行ってもらうことにする。

 けれど、クモの類いはどうするべきか、これが非常に悩ましい。

 玄関の片隅に巣を張り、網戸の代わりに巣を張り、あるいは巣を持たずともぴょんぴょんと、ハエトリグモが闊歩している。手のひら大のアシダカグモが、さささと、板の間を横切っていく。

 クモは益虫だと教えられてきたからか、それともこちらに害はないせいか、まぁいいかと見守り続け、冬の初めに巣の主が、ぽとり落ちて掃除を始める。

 他人から見れば、ただのずぼら。そうは知っても何とはなしに、けれどアシダカのほうは耐えられず、虫取り網でご退場頂くという、これは鉄の掟となった。

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