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試される大地の優しさに触れた北海道10日間の旅 / 特急宗谷で稚内へ



10月14日。旅の3日目。

朝からなんだかドキドキしてる。こんな旅の朝は初めてです。

とうとう日本最北端の駅『稚内わっかない』へ行ける日がやってきました。

※今回は、特急宗谷のおすすめ座席や、札幌~稚内までの車窓の紹介、そして北海道の駅名(函館本線、宗谷本線)と、アイヌ語の関係などを書いた記事になります。


前回の記事はこちら


前の記事でも少し触れましたが、札幌から乗り換え無しで稚内に行ける列車は一日一本だけ。

7時30分発 特急宗谷に乗ります。


一日一本のみの運行なので、宗谷そうやには特急や新幹線などで見る “○号” と言う数字表記は付きません。ちなみに上の写真にある特急ライラックは、一日に本数があるので “3号” と付いていますね。

さぁ、いよいよ特急宗谷に乗って最北端の駅、稚内へ!

特急宗谷。稚内までよろしく!
なんかアップで撮影したくなった(笑)


上の写真だけ見ると、なんのマーク?ってなりそうだけど、特急宗谷のヘッドマークに相応しい形はこれしかないでしょうね。

3色に重ねられているのは、稚内の四季を表しているのかなぁ。新緑の春夏、紅葉の秋、雪の冬。 そう考えると周りの青は海ですよね。そう思ったのですが、どうなんでしょうか?

そんな宗谷の乗車時間は約5時間

距離は396.2km



ロングラン特急ですが車内販売や自動販売機はありません。必ず乗車前に調達しておきましょう。

ちょっと買いすぎ?(笑)
北海道の甘い赤飯、好きです。
ドリンクはやっぱり北海道産のものを
このトマトジュース
めちゃくちゃ美味しかった!


ここでちょっと乗り鉄的な?お話しをします。

鉄道が大好きな人だと、ドリンクの写真でお分かりいただけると思いますが、この特急宗谷の窓割りを私、失敗しました。

私が取った指定席
2号車11D


窓際を座席指定するのであれば、もう1つ後ろの席、もしくは前席のほうが視界が広くなり、より車窓を楽しめます。

すべての特急には乗車していないですが、北海道の特急は、2席で一枚窓が主流だと思います。(乗る号車や進行方向によって奇数席か偶数席どちらが広窓かは変わってくる場合があります。)

こちらの席のほうが車窓の視界が広くなる
(これは特急北斗)


調べて指定を取ったつもりだったのですが… やっちゃった(汗)

そもそも自由席なら悩まずに済みますが、宗谷は4両編成で、うち自由席は一両だけです。しかも札幌 → 稚内乗車の場合、車窓のおすすめは進行方向左側のD席。そうなれば一両しかない自由席のD席は14席ほど。単純計算で半分の約7席しか広窓席がないことになります。

今回の旅で、窓割りを失敗したのはこの宗谷だけ。自分で 「よりによって宗谷で…なんでやねんっ!」 と、つっこんでおきました(苦笑)こうゆう失敗、けっこうやらかします。それがくろしおです(笑)

失敗は成功のもと。
出発進行~。


そんな私を乗せた宗谷は、さっそく漢字だと読めない駅に停車します。

こちらは美唄びばい駅。ちょっと見にくいけど、このあたりは紅葉シーズン真っ盛りになっていました。

駅名標がないけど、ただ今
びばい駅に停車中


美唄《びばい》とはアイヌ語で 「カラス貝の多いところ」 を意味するそう。『ピパオイ』がアイヌ語の発音で、そこから変化して『びばい』となったんだって。
昔は、このあたりに沼地が多くあったようです。貝がたくさん取れていたのかもしれませんね。北海道はアイヌ語が語源の駅名がたくさんあります。

その中で北海道の大都市、札幌の『幌』もアイヌ語からきています。北海道では『幌』と付く駅名がたくさんあるんですよ。アイヌ語で『ポロ』(『ホロ』とも読みます。)は 「大きい、広い」 と言う意味があるそうです。


そんなことを言っていると宗谷は次の駅へ。ここからは “川” が付く駅名に4つ連続で停車して行きます。

砂川駅
滝川駅
深川駅
旭川駅
こちらは4日目~5日目に滞在します。


この記事を書いていて気づいたのですが、同じ『川』でも、『がわ』と『かわ』が交互になっています。

『すながわ』『たきかわ』『ふかがわ』『あさひかわ』 面白いですね。

そして最後の “川” 、旭川を過ぎてからの通過駅なのですが、こちら、なんと読む駅名でしょう?


答えは『らんる』駅です。この『蘭』がつく駅名も北海道にはいくつもあります。皆さんがよく知っている『室蘭むろらん』もそのひとつです。

こちらの蘭留駅もアイヌ語からきていて『ラン・ル』とは 「下る道」 という意味だそうです。この辺りの地形を表して付けられたのかもしれませんね。

『室蘭』はアイヌ語で『モルエラニ』→『モルラン』→『むろらん』と変化したそうです。意味は 「小さな坂道を下りた場所」 だそうですよ。


北海道って坂の街が多いのかもしれません。札幌にあった北海道神宮に繋がる道も、坂道だと観光案内所の方が言ってましたね。

こうゆう事を調べたいと思ったのも北海道に実際に行って、自分の目で見たからこそです。北海道フリーパスの価値はこんなところにもあるのだと気付かされます。

そして次の停車駅はこちら

和寒駅

漢字だけだと読めないですね。こちらは『わっさむ』ですが、北海道には『発寒(はっさむ)』と言う駅もあります。紛らわしい(笑)

「はっさむ」は
昨日乗車したこの路線にあります。



そして、蘭留らんる駅と和寒わっさむ駅の間にある塩狩しおかり駅。ご存知の方もおられるかもしれませんが、塩狩峠の事故があった場所です。小説にもなっていますね。今回は紹介はしませんが、気になる方は調べて見て下さいね。

続いての停車駅は

士別駅

こちらの駅には、改札を出たコンコースにお土産屋さんも併設しているとても小さなお蕎麦屋さんがあるのだそうです。いわゆる “駅そば”。

北海道では 「駅そば」 がどんどん減っているのだそう。機会がある方は、途中下車してお蕎麦を食べるのもいいかもしれません。

─────

さて、旅行雑誌などで北海道を調べていると、まっすぐ伸びる一本道が紹介されていることがあります。そんな一本道。鉄道に乗っていても見ることができるんです。

列車で通り過ぎるので、一瞬だけれども、北海道の広さを車窓からも感じることができるので、なんでもない風景でも眺めてみることをおすすめします。

見つけるとちょっとうれしい。
この道の先には海が見える。


そんな宗谷の次の停車駅は

名寄駅


こちらの駅は開業して120年経つ、とても歴史のある駅です。調べたところ駅舎も赤い屋根でとってもステキな感じ。降りてみたかったなぁ。

そんな名寄なよろの屋根の色は改修工事の度に塗り替えられているようで、赤→ 青→ 緑、そして今はまた赤色屋根に。

一周しちゃったのですね。くろしおも、ただ今北海道一周中(笑)

Googleより


「なよろ駅」 。こちらもアイヌ語から来ています。『ナイ・オロ・プト』 → 『川・所・口 』 という意味があるそうで、まとめると 「川の合流するところ」。名寄には天塩川てしおがわ名寄川なよろがわが合流する場所があるため、このような地名になったとされています。『ナイオロプト』が変化して『なよろ』になったのですね。

名寄駅の右側にあるのが名寄川です。
名寄駅の先で天塩川と合流していますね。


宗谷はこの名寄川なよろがわを渡ると天塩川てしおがわ沿いに北へ北へと走っていきます。

なよろ川の標識があった!
名寄川
丘を挟んでこちらも名寄川


立派な河川です。

その名寄川なよろがわを仲間にした天塩川てしおがわの絶景は、こちらの駅を過ぎたあたりから見ることができます。

音威子府駅


となり駅の『さっくる』も面白い駅名ですが、漢字表記はとっても素敵。『咲来(さっくる)』と書きます。

おしゃれな木彫りの駅標
おといねっぷ駅


この『おといねっぷ』。響きからして日本語由来ではないのがわかりますね。

こちらはアイヌ語でも『オトイネップ』なんです。意味は 「濁った川」 だそう。

昔ここは 「常盤村ときわむら」 という地名でした。私が思うに、濁ってはいないですが、立派な天塩川は流れているし、アイヌ語をそのまま使っているところなどから、村の名前が普通だから、おしゃれなアイヌ語を探していたら『おといねっぷ』を見つけ、その意味とのギャップに、知名度が上がるかも!と、つけたのではないか?なんて推測します。

そんな音威子府おといねっぷは今や、北海道では人気の駅名になっていますよね。

もし、それがほんとうなら、昔の人達ー!大成功していますよ!音威子府は今でもおしゃれな駅舎で健在です。

そして忘れてはいけないのが、そばの実を皮ごと挽いて作る、黒い蕎麦  “音威子府そば” 。惜しまれながらも閉業してしまったのですが、そのお店の名前が 「常磐(ときわ)軒」 でした。昔、ここは常磐村だったという名残はこうゆうところに残っていたのですね。

そして、嬉しいことに今また、“新 音威子府そば” と言うものを食べれるそうですよ。

新 音威子府そば、いつか食べてみたいです。

こんな宗谷本線の歴史を一番知っているのは、もしかすると今、私が乗車している特急宗谷かもしれません。

宗谷は天塩川沿いを走り抜けます。
素晴らしい眺めです。


そして、宗谷はこちらの駅に停車。

幌延駅
こちらにも『幌』が使われています。



この駅を過ぎると、くろしおは今まで見たことのない景色の連続に出会います。

どこまでも広がる草原
車窓から牛さんを眺めるのは初めてです!


そして、牛さんの後ろには、利尻富士りしりふじが見えてきます。

牛さんと利尻富士


さらに、すすきと利尻富士。

秋を感じる1枚です。


利尻富士は様々な北海道の大地の後ろにぴったりとくっつくように、走る宗谷の車窓に寄り添いながら、私の目を楽しませてくれました。

くろしおも
車窓にぴったり釘付け中。



あと東北でも見た風力発電のプロペラ。北海道はスケールが違います。

絵になる風景です。

このあと車窓の景色は、またガラリと変わります。

サロベツ原生花園げんせいかえんです。(サロベツ原野げんやとも呼びます。)

紫のマーカー


人の手を加えていない、自然が生み出す湿原です。


しばらく走ると海が見えてきます。


すると視界が開け、海越しの利尻富士が迎えてくれました。素晴らしい景色です。

このあたりも、きっと湿原。この利尻富士と書かれた木の板も、最初はまっすぐ刺さっていたのかもしれませんね。

手を加えていないからこその情景。だと思います。

斜めになっているほうが
味があってすごくいい。

こちらを走行中の宗谷は徐行をしてくれます。そして、車掌さんが利尻富士の案内をアナウンスして下さいます。

ぜひ、海越しの利尻富士とともに、耳を傾けて聞いてみてくださいね。

最高です。


このあと、『抜海(ばっかい)』と言う駅を通過するのですが、この時点で北海道にのまれてしまって、すっかり見過ごしています。なので写真はありません(汗)

この抜海駅も来年開業100年を迎えるのですが、廃駅に動いているようで無くなる日は近いかもしれません。

ばっかい駅



そんな抜海ばっかい駅を通過すると、宗谷は南稚内に停車し、残すは終着 稚内駅です。

南稚内駅


北海道では、駅の終点はすべて、
『終着(しゅうちゃく)』とアナウンスされます。『次は終着、稚内です。』
と車内に流れた瞬間。“終点しゅうてん”ではなく“終着しゅうちゃく” と表現する意味をひしひしと感じ、この言葉の重みをこんなに感じたことは今までありません。

このアナウンスを耳にした瞬間、目が熱くなり涙が出そうになりました。

このように流れます。


ついに、稚内に到着です。



特急宗谷おつかれさま!ほんとうに楽しい移動だった。


くろしお、稚内に立つ。

素晴らしい車窓をありがとう!
ディーゼル音を唸らせて走りきる
宗谷に惚れるよ(笑)


5時間と聞けば、とても長く感じるけど北海道の旅からすれば、ほんの一コマに過ぎません。

しかし、その一コマには北海道を知ることができる要素が、たくさん散りばめられています。

ただ乗るだけなら退屈だし、しんどいと思います。

実際にくろしおも、ちょっとお尻が痛くなりました(笑)しかし、途中デッキに出ても車窓は楽しめます。

札幌発ならば早朝でも駅弁を買えます。北海道グルメを堪能しながら車窓を楽しむのもいいでしょう。工夫すれば、乗車することが何倍も素晴らしいものになると思います。

と、えらそうな事を書いていますが、この後のくろしお…バタバタ劇が始まります。

稚内駅舎の写真を紹介していないのもそのためです。この時には撮ってないんです(泣)



それは、次回に。

駅舎を撮る時間を
ちゃんと考えて行動しないと(汗)



終着駅 『稚内(わっかない)』は、アイヌ語の『ヤム ワッカナイ』が語源だそう。意味は 「冷たい水の出る沢」 。この辺り一帯に良質な冷たい水があったのかもしれないと言われています。

5000文字を超える長い記事に、最後までお付き合い下さりありがとうございました。宗谷に乗車した際の参考にしていただけると、とても嬉しいです。



くろしお

今回紹介した駅(青いマーカー)。オレンジ色の丸印はおおよその砂川駅。札幌周辺拡大路線図にはあるのだけど、広域には記載がなかった(苦笑)あと、路線名や天塩川、利尻富士がある利尻島はピンクのマーカーで印しています。


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