写真って、なんだと思いますか?


 夏の終わりを、毎年寂しいと思ってしまうのは何故だろう。日本には季節が4つもあるのに。夏だけ。夏の終わりだけ、毎年『寂しい』と思うのだ。


10月7日。今日は知り合いがグループ写真展をしていたのでお邪魔してきました。私の写真も展示してくれていて、とても嬉しくて、少し誇らしい気持ちになりました。(彼の撮る写真が奇麗なだけなのだけれども)

ちなみにそのグループ展には3人の知り合いが出展していました。
久しぶりに人と会う高揚感と、普段どんなテンションで接していたっけ、
なんていう戸惑いとで、何故かいつもしない人見知りをしてしまいました。人間の不思議。

でも、あれよあれよと知ってる顔がぽこぽこと現れ、私はもはや無敵、無双状態。
さっきまで人見知りしてたどこかの誰かさんはどこへやら。

そんなこんなで展示を見たりお喋りしたりしてたんですけど、
ふと、会場の真ん中にあるテーブルの上のフォトブック(展示者が各々置いている)が気になって、ぱらぱらと見ていたんです。

めくる度に美しいモデルさんと、美しい景色と。素敵な作品とこんにちは。
なんてご挨拶をしていたんですけど、

最後のね、最後の一ページだけ、明らかにそれまでとは違ったんです。
違う空間に連れていかれたかのような、
意識がその写真の中に吸い込まれてしまったような、
冬なのに桜を散らす暖かい風が吹いたような、そんな感覚。

その写真は、しわしわの手をしたおばあちゃんが、病院か施設か分からないけれど、どこかのベッドに横になりながら何か書いている写真、カメラに向かって指をさしている写真、お腹のところに置いてある手のアップの写真の3枚でした。

心が動かなくなりました。そこから動いてはいけないような、今目の前にしている写真を、ちゃんと目に焼き付けて心を向けなければいけない。
そこにある、確かな愛を、私は人として、
受け取らなければならない。と、本能的に思いました。

その女性は、フォトブックを作った方のおばあさんだと話してくれました。

“あぁ、だからか。こんなに愛に溢れているのは”

「ばあちゃんぼけてたんだけどね」と、とても優しい表情で当時のお話を少しだけしてくれました。だけどね、思ったんです。

きっとこのおばあちゃん、分かってるだろうなって。孫が会いに来てくれたってことも、孫が写真をどれだけ大切に思っているのか、ということも。

なにを小説みたいな、映画みたいなことを言ってるんだ。って思われてしまうかもしれないけれど、声が聞こえた気がしたんです。

「これかぁ。これなんだねぇ。これがあんたの大切にしてるもんかぁ。」って。そんな声が、本当に聞こえた気がしたんです。暖かい、春の風にのって。


最近ね、よく考えるんです。写真とは?って。

今私がいる世界、より身近にある写真はポートレート、美しくモデルさんを作為的に撮る写真・非日常的な、アートな作品。まぁ大きく分けるとその2つなんですけど、それも最高に楽しいです。見ていてワクワクするし、私もこんな風に撮られてみたいなとか、もっといろんな表現ができるように研究しなきゃ、とか、こんな幻想的な世界に入ってみたいな、とか。実際私もそんなことを考えたりします。してました。

だけどただ純粋に、

その時の記憶を、感じた思いを、感触を、匂いを。残す、残したい。ずっとずっと忘れないように。

だから写真を撮る。写真って、そういうことなんじゃないかなって、思いました。

でもそんな、単純な写真って、少ないんですよね。

何故か。きっと答えは、誰かに見せる必要がない、そう思う人が多いからなんじゃないかと。

うまくないから。これはただの自己満だから。きっとこんな感じ。


最近ね、写真つまらないなぁ。って思ってたんです。見ても、同じようなものばかり。同じじゃないけど同じに見える。インスタを開いてちょっとスクロールして、あ、今日もこんな感じか。ってなってすぐ閉じる。みたいなね。

あんなに楽しいと思っていた写真の世界が、
いつの間にかとても窮屈で退屈な世界に変わっていたんです。

だけど今日、あー!なんて素敵な世界なんだろう。日常の些細な出来事の記録としての写真。作為的に作られた美しい写真、非日常的なアート作品としての写真。たくさんの楽しみ方があるのに、私はその世界から離れようとしていました。

なんてもったいない!写真は、写真の世界はこんなにも素敵なのに。こんなにも愛で溢れているのに。

あの展示に行って良かった。あの写真と出会えて良かった。


春の風と共に運ばれてきた感情は、私の心も温かく柔らかくしてくれました。

そして春の風を運んでくれたおばあちゃんのしわしわの手は、強く温かく、どんなものよりも美しく見えました。

とても、とても、美しかったです。



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