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きみと眠り生きた日々よ【詩集】

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高く透明な黒の果て

すきま風にぼくは起きた 寒波到来で凍える夜 布団のなかは冷えきって はみ出た耳も指先も 感覚なんて消えている ぼくは無理矢理そこを出た 毛布をとりに部屋を出た 寝室を別にしようって 言い出したのはいつだっけ 少しあいたドアの隙間 真っ暗なそこに目をこらす やがて視界も慣れてきて 小さなベッドが空だとわかる 端にいるのが背中とわかる カーテンをあけて腰かけるきみ こんな寒さで何を見ているの 明日の予報は雨のち曇り 月も出てないし暗いだけだし いつまで経ってもわから

白露吐露

フロントガラス 歪む道路 白く濁る 視界すべて お喋りなきみ 頷くぼく 何の話 上の空で 挙げ句のはて 怒りだすきみ カルシウム足りないんじゃない 苛立つきみは 聞こえない振り 深いため息 拾いもせず ワイパーの速度 一段上げて 続く沈黙 雨の音 濡れたアスファルト 灰色の風 ちらり横目できみをうかがう のんきな寝顔 映す車窓 頬に残る 涙一筋 への字の口 引き結んだまま 明日の朝は 食卓の上 苦手なトマト 溢れるサラダ 覚悟したほうがいいかもね ゆるく停止 ブレ

スカーレット・レム

あつい、あつい 滴る汗 赤く滲む まぶたの向こう もう何日も熱帯夜 むき出しの皮膚をかすめ 通りすがる 甘いにおい ひとつ、ふたつ 氷の音 独り涼む 気配だけが さみしいのに熱帯夜 少しばかり身動きして 声に出さず きみを呼んだ ぺたり、ぺたり 迫る踵 徐に縮む 距離はどこへ 息もできない熱帯夜 眠りのふち聞こえた声 きみも今 ぼくを呼んだ? ひとつ、ふたつ 重なる肌 二人を編む つめたい指 離れがたく熱帯夜 同じ温度溶け合うきみ 懐かしいね そんな夏も

あおきあけぼの

翼が生えた夢を見た 羽ばたいて宙に浮いて 窓の外へきみと二人 町を眺め風を集め 桜吹雪を追いかけた 雲に触れた目が覚めた 瞬いて振り返って 眠るきみのぬくい背中 共に飛び回り遊んだ 翼はすでに消えていた 塞ぎこんだ窓を開けた 暗いままで薄く光って 遠ざかる夢の景色 明けの空へ青いきみへ 言葉なんていらなかった 満ち足りた朝を待った じっと見つめて微睡んで きみの瞳まであと少し 花は香り風に乗り 夢のように飛んでいった