【短編】ターミナル(1/2)
(2,823文字)
「近い駅だったら止まるの?」
その言葉は、私を眠りの淵から現に引き戻した。私は小春日を背に受け、電車の揺れに身を任せていた。相模鉄道本線、横浜発海老名行きの急行電車。向かいの席に座る、三十代前半と思われる父親に連れられた、四、五歳くらいの男の子が発したものだった。
『近い駅だったら止まるの?』という表現が面白くて、私はしょぼしょぼする目を揉みながら二人の会話に耳をそばだてた。
まもなく二俣川駅だ。
「そう。駅に近づいたら、運転士さんがブレーキをかけ