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恐怖の草男(7)脱出と再生

ここはどこだろう。

わたしはいつも知らない間に知らない所に運ばれている。京子はそろそろと上半身をした。傍らに看護師らしき女が立って京子を覗き込んでいた。

「気がついた?道端で気を失って倒れていたのよ。一緒にいた人が救急車を呼んでくれたの。待合室にいますよ。呼んで来ましょうか」

部屋に入って来た女は美恵だった。
「わたしたち、脱出出来たのよ」
「あそこは一体……」
「新種の雑草栽培工場、だと思う」

そう言って美恵はちょっと得意げに顎を上げた。
「わたし、実はある組織の実態を探っている特別捜査員なの」

特別捜査委員!京子は、穴に落ちてから今も夢の続きを見ているような気がした。
「捜査したいことがあって、自分の体を賭けて目星をつけた男に近づいたというわけ」
 美恵は京子の耳に口をつけ、
「あなたはヒステリー性心身症ということになっているの。そのつもりで。ところでわたしの任務のことだけど」

美恵の話に拠るとこうだ。
  
他の惑星の草の花粉が地球に持ち込まれたのは人工衛星の乗組員を通じてだった。それが偶然だったのか、どこかの惑星の周到な計画だったのかは分からない。

各地で異常に増える新種の草に疑問をもったアメリカの研究者グループの調査により、その草の花粉は人間のオスの精子より生殖力が強く、人間のメスの卵子と合体することが可能であることが判明した。

世界中の研究者が秘密裏に連携し、異惑星から飛来した草の撲滅を議論した。だが、ハーフの子どもは人間の形と心を有している。対処を誤ったらどんなことになるか分からない。

「一般人には知らされていないけど、この草は日本にも飛来したみたいなの。わたし、その正体を追跡しているのよ」
京子は呆然と美恵の話を聞いていた。

 


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