みんな、パタ子（仮名）の言葉が好きだ。

大学時代に仲の良かった友達みんなで自主制作したオリジナル卒業アルバム。
そこには、思い出の写真や、早く結婚しそうな人ランキングのような定番企画に加え、「パタ子語録（仮名）」が堂々たる見開きページで展開されている。

パタ子の性格は、明るい、アバウト、あわてんぼう（本人曰く3つのA）。

ピンクやリボンなど、女の子らしいファッションがよく似合う。
可愛い天然さんで、恋話コイバナが大好き。
勉強にバイトにサークルのマネージャーに、いつも忙しそうに走り回っている。

そして、小柄ながら合気道や剣道はかなりの腕前という、芯の通った女の子。

パタ子の言葉には、力がある。

テスト勉強が面倒な時も、バイトで嫌なことがあった時も、恋愛に消極的になっちゃう時でも、パタ子は元気をくれる。

トータス松本よりも、この言葉を使いこなしている。

パタ子の言葉には、志がある。

いつものピンクばかりではなく、シンプルな白を着こなしたいという憧れ。
めざすビジョンは明確に言葉に表す。

こう宣言した翌日に、真っピンクのトレンチコートを着て登場したことは忘れられない。

パタ子の言葉には、勢いがある。

パタ子が毎年誕生日に掲げる抱負が、わたし達は楽しみでたまらない。
いつもパタパタと落ち着きの無いことを気にしており、落ち着いた女性になりたいという気持ちが非常に強いらしい。

落ち着きたい気持ちが強すぎて、勢いづいてしまっている。

パタ子の言葉には、サバサバした前向きさがある。

鳴かぬなら 殺してしまえ ホトトギス（織田信長）
鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス（豊臣秀吉）
鳴かぬなら 鳴くまで待とう ホトトギス （徳川家康）

パタ子的に言ったら。

意味は分からないでもないが、横文字を入れてくるとは、戦国武将を舐めすぎている。

パタ子の言葉には、信念がある。

パタ子のトータルテーマとして、ある言葉を教えてくれた。
永遠のポリシーで永遠の目標だという。

しなやかなものが、堅いものの勢いをうまく受け流して、最後には勝利する、ということ。

表向きのド天然っぷりに圧倒され、わたし達はパタ子語録に翻弄されてきた。
しかし、実はパタ子は心の内にブレない芯を持っている。

パタ子の言葉。
その自由でしなやかな表現も、剛ごうを制せいすために自然と生み出されるのかもしれない。

今まで笑っちゃっててごめんね、パタ子。

パタ子の言葉には、柔軟性がある。

パタ子が大切にしている四字熟語に、「外柔内剛がいじゅうないごう」という言葉がある。
外見は穏やかでやさしそうだが、心の中は何事にも左右されない強い意志をもっていること。

カタカナ的に言わんでええ。

元の素敵な意味をぶち壊してしまうほど、柔軟にアレンジを効かせすぎている。

さっきの感動を返してくれ。

やはりパタ子語録から目が離せない。








会社で今の部署に着任した当初、部長面談があった。
為人ひととなりを知るために一対一でざっくばらんに話す場として、時間を割いてくださった。

穏やかな話し口調の部長。
世間話から入り、これまでの業務経験や、仕事や人間関係で悩みははないかなど、寄り添う姿勢で丁寧に話を聞いてくださった。

優しい雰囲気ながら、「社内で憧れる人はいるか？」「今後のキャリアプランは？」といった核心に触れるような質問もあった。

30分ほどの面談の最後に、「座右の銘ってある？」と聞かれた。

なんとかその意図を汲み取ろうとするも、困ったように笑いかける部長。
「えーっと。どういうことかな？」

パタ子の影響で、座右の銘や抱負の位置付けがよく分からなくなっている。

パタ子の影響で、お堅い言葉も柔軟にアレンジしすぎてしまっている。



部長面談で、戦国武将を舐めすぎたような座右の銘を口走ってしまった。



パタ子の言葉には、影響力がある。

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さて、次回の #クセスゴエッセイ は

「リスクシナリオまっしぐら」

をお届けします

お楽しみに〜
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