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ぼくはジブリ美術館短編を観てほしい(非コンプリート)

※残念ながらコロナの影響で現在は休館中です
ジブリ美術館には専用の小型劇場があって、常時短編アニメが入れ替わりで上映されています。


美術館や劇場自体が素晴らしいのはもちろんの事、各短編アニメもかなりの名作揃いなのですが、意外に知られておらず、まとまったレビューもあまりなく残念に思っていたので備忘録も兼ねて書いてみます。
といっても自分も全作品は見れてないのですが、今度こそコンプリートしたいです。
宮崎さんは長年に渡り、劇場と美術館短編3本を交互に作ってきて、相互に影響を与えてる部分があるので理解の取っ掛かりとして宮崎劇場作品で簡単に区切ってみました。

第一期〜千と千尋からポニョ

くじらとり

絵本「いやいやえん」のアニメ化。
子供のごっこ遊びと現実が混ざり合っていく演出が良い。
大人目線だった観客の視点が子どもたちのゴッコに引き込まれていく。
子供の「子供っぽい」芝居がすごい。
絵本らしさを守るためあまり極端なアングルを使わないのも独特さに繋がっている。
また役職別でない手書きのスタッフリストなども後のジブリ作品に影響を与えている(うろ覚え)
会場のお子さんたちにむちゃくちゃウケてたので小さなお子さんとご一緒の方におすすめです。

コロの大さんぽ

初見地味に感じたが、何度も見ると「街アニメ」として好きになってきた。
ここでの独特な美術の様式がポニョのそれに繋がっていくのだが
本作は「ロケハンアニメ」をあえて「写真的」にしないという意図があるだと思う。
思えば初期のジブリ美術館作品は「ラボラトリー」的な色合いが強かった。
「実際の地理と移動の面白さ」というのは「さらば愛しきルパンよ」とかむかしから宮崎さんの扱ってきたモチーフの一つ。
上記2作は音楽が「耳をすませば」の野見祐二さんで、久石さんとはちょっと違うサウンドが聞けるのも良い。
ちなみに全作品サントラとパンフは美術館で購入できます。

めいとこねこバス

ジブリ美術館唯一の続編モノ。
メイがまた動いてるというだけでもう泣いた。
ネタバレになるので詳しくは書かないが、すべてのトトロファンが楽しめる内容ながらも、ポニョに繋がる要素も感じられる良作。
終盤の疾走感も素晴らしい。
往年のジブリファンで初のジブリ美術館なら、やはり最初は当作品を観るのが良いと思う。
自分も母親を連れて行ったときは当作品の日に調整した。
余談だが、「ラセターさんありがとう」でジョン・ラセターがピクサー試写室で当作品を見るシーンがあるのだが、少年のように目を輝かせる様子は必見。

第二期〜ポニョからハウル

やどさがし


みずぐももんもん

虫の目線に寄り添った世界の面白さや表現の豊かさがすごい。
水面の疾走感が素晴らしかった記憶。
ミズグモの動きを正しく描ける観察眼がまず普通じゃない。
やはり嬉々としてナウシカを描く人は違う。
虫の世界をまじまじと観察していた子供の頃の感覚を精緻に再現したワクワク感がある。良作。
ただし、かなり虫そのものなので虫が苦手な人は絶対に避けよう。

星をかった日

耳をすませばのバロンの世界も手掛けた井上尚久さんのイバラードが舞台。久々の少年主人公作品。
「星を育てる描写」のアイディアと瑞々しさが圧巻!
叙情感もあり、個人的にはかなり好きな作品。
耳をすませばファンはもちろん、年代問わず男性におすすめの一作。

第3期〜ハウルから風立ちぬ

ちゅうずもう

漫画日本昔話的ノリの作品。
あまり宮崎色は強くなく、そのかわり山下明彦監督をはじめとする見応えある相撲作画が堪能できる。

パン種とタマゴ姫

近年の宮崎さんの「万物もっちり主義」とパンというモチーフがシンクロする作品。

物語と並走してパンを作る生活描写がこってり描かれるという、ファンタジーと生活描写をちょっと違う形で結合しようとした作品だったような(うろ覚え)
結構カオスな内容なのでもう一回見たい。

たからさがし

未見。観たい。

第4期〜風立ちぬ以降

毛虫のボロ

企画としては昔あって語られる機会も多かった本作。
またNHKドキュメンタリーでCG屋さんとの制作風景が紹介された。
結局あまりCG作品という感じはないのだが、ものすごく物量に満たされる画面が凄い。
とにかく画面に数を描く宮崎さんのスタイルが炸裂している。


虫の世界を超えて「顕微鏡的世界」に飛び込んでいて、「光や草は虫から見ると我々とは全然違ってみえる」という価値観を限定的にでも描けてるのは凄い。
取り留めのない話と言ってしまえばそうなのだが、視点と表現の楽しい作品。
ほぼ全編毛虫がうんこしてるので、ダメな人は避けてください。


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