空間レシピ

デジタル社会を空間や場所から考える論考メディアです。 空間や場所はいわば述語。空間から…

空間レシピ

デジタル社会を空間や場所から考える論考メディアです。 空間や場所はいわば述語。空間から考えるとは、主語である人や集団(そしてモノ)を述語側から捉え直すこと。 空間レシピらしく空間素材や下ごしらえ、調理手順をお届けしたいと思います。

マガジン

  • 戯れ言

    ほとんどが編集長の戯れ言です。 妄想も翌朝には良案になり、出合いや体験は記録すると他人と共有できるようになります。

  • 空間論のいろいろ

    ギリシャ以来、空間論は世界の秩序を表してきました。プラトンの「コーラ」や、ライプニッツの「モナド」の独創性には驚かされます。しかし、空間論はカントで大きく展開し、それ以降、空間論は内なる世界を語るようになります。 そして現在、空間論は2回目の展開を迎えていると考えられます。

  • 現代の空間論

    デジタル空間の登場で、空間論は見直しが必要になりました。現実空間と同期するデジタル空間は「生きられた空間」として我々の実存を支え、社会活動の主舞台となっています。20世紀の空間論とともに、デジタル空間を取り込んだ最新の空間論を紹介していきます。

  • オフィスを考える NoOffice, NoLife

    オフィスに行かなくとも仕事が成立するのに、オフィスは本当に必要なの? コロナ禍を経て働き方が大きく変容するなか、最新オフィスの動向を紹介しながら、オフィスの新たな価値を考えます。

  • 位置情報/IoT技術

    位置情報サービスやIoT技術を紹介したり、関連する規制や制度の問題などの論考を紹介していきます。

最近の記事

  • 固定された記事

空間レシピを始めるにあたって

編集長の丸田です。 このたび、空間レシピを立ち上げました。どうぞよろしくお願いします。 空間レシピは、空間や場所の観点からデジタル社会を考えるメディアです。 空間や場所は、いわば述語。空間や場所から考えるということは、主語である人や集団(そしてモノ)を、述語側から捉え直すことです。主語を直接理解するより、幅広い理解を得ることができます。 われわれは今、アフターデジタルといわれる世界、物理空間とデジタル空間が並存するデジタルツインを生きています。この未経験の世界へ、そこを

    • 【現代空間論/空間論8】空間は実在せず虚数でしかない

      空間は共時的な拡がりを持つ。 つまり時計を止めれば、今そこにモノや人、道路や家、空や月、太陽や星が静止状態で広がっている、というのが我々が抱く空間の姿です。 しかし、そのような空間は実存せず、共通の今も存在しない。これこそ相対論が導き出すマクロ世界の実像で、我々が持つ空間や時間の通念を、物理学が覆しつつあります。 空間は存在しない! 相対論が示した時空は、ミンコフスキー空間(あるいはリーマン空間)で表現されます。 ミンコフスキー空間とは、時間と空間を対等の次元で扱った座

      • 【空間論7】デモクリトスの原子論

        我々は空間を、均質で無限な拡がりをもつものと考ています。しかし、それは現代の一般的な空間観です。 古代ギリシアのアリステレスから約2千年の長きにわたり、反対に空間は間隙なく有限な物体で充たされているものと考えられていました。 ただし、アリストテレスより前、古代ギリシア初期にまで遡ると、現代の我々と同じように、空間を均質で無限と考える一派がいました。 それがデモクリトスらであり、レウキッポスが創始し、デモクリトスが完成させた古代原子論です。 「空虚」を巡る論争 古代ギリ

        • 新オフィス訪問:株式会社日本設計

          総合設計事務所の自社新オフィス 日本設計本社新オフィスを訪問し、座談会を開催しました。 コロナ禍を経て世界中で働き方が問われていますが、新オフィス移転にあたり定義された「新しい働き方」は、知的生産性の最大化を目指すとともに、日本設計のDNAを踏襲したものになっています。 新オフィスが「新しい働き方」に基づいてデザインされることで、個性あふれる空間と、TDWや環境DXといった独自の空間活用方式を生み出しています。 「建築家の自宅」は、建築家の考えや経験が凝縮した作品として

        • 固定された記事

        空間レシピを始めるにあたって

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        • 戯れ言
          15本
        • 現代の空間論
          8本
        • 空間論のいろいろ
          8本
        • オフィスを考える NoOffice, NoLife
          16本
        • 位置情報/IoT技術
          6本
        • デジタルツインとメタバース
          12本

        記事

          個性炸裂! 設計事務所の自社オフィス/日本設計

          今回のオンサイト座談会は「株式会社日本設計」を訪問しました。 「建築家の自宅」は、建築家の思考や経験が凝縮した作品として注目が集まりますが、それと同様に、日本を代表する総合設計事務所がデザインした新オフィスには注目すべき点が多々あります。 現在、動画編集を進めているので、是非そちらをご覧いただきたいのですが、特に印象的だった点を整理します。 堅実なオフィスづくりが個性を生む テナントオフィスは画一的になりがちですが、この新オフィスは個性が際だっています。しかし、エキセント

          個性炸裂! 設計事務所の自社オフィス/日本設計

          映画『Winny』のメッセージ

          映画『Winny』は新聞のコラム欄で上映を知り、TOHOシネマ日比谷に行きました。休日だったこともあり、映画館はほぼ満席でした。 日本で起こった世界技術史的事件 風化したと思っていたWinny事件が今、映画として取り上げられたことに強い関心がありました。 この事件は、WinnyというP2P型のファイル通有ソフトが著作権侵害幇助に問われたもので、インターネットを巡る大事件でした。それも今では考えにくいのですが、開発者が日本人で、日本国内が舞台となっていたワールドワイドな事件

          映画『Winny』のメッセージ

          NOTEを始めて2ヶ月/反省会

          こんにちは、編集長の丸田です。 NOTEを始めて約2ヶ月がたちました。 この2ヶ月間、記事を書きまくって、NOTEの情報発信が少し理解できるようになったのですが、それゆえピボット(方向転換)が必要と考えるようになりました。 結論からいうと、NOTE proに登録してコンサルティング的なアドバイスを受けながら、しばらくピボットを繰り返してみようと考えています。 オウンドメディアと少し違う 「空間レシピ」は、デジタル社会の論考メディアを目指しています。 スポンサーのWHE

          NOTEを始めて2ヶ月/反省会

          新本社XORK訪問:株式会社イトーキ

          総集編 働き方のショーケースXORK イトーキ本社 XORK・ゾークを訪問し、座談会を開催しました。 XORKは、本社であるだけでなく、ABW(Activity Based Working)を取り入れた新しい"働き方"のショーケース。 XORKデザイナーの香山さん、ABWを推進する酒井さん、そして、岡田執行役員の3人にお話を伺いました。(41分) 1部 XORKと働き方改革 XORKは、2018年のオープンから、オランダから学び入れた働き方ABWを実践したこともあり、

          新本社XORK訪問:株式会社イトーキ

          生物多様性がデジタル空間にも及ぶ ⁈

          記事 「サイバー空間に及ぶ生物多様性」 今日(23年2月24日)の日経新聞記事「サイバー空間に及ぶ生物多様性」は、衝撃的な内容でした。デジタルツイン社会について、別次元の議論が必要になってきたというのが正直な感想です。 記事の内容は、「遺伝資源」のデジタル化に伴い、途上国と先進国が対立しているというものでした。 医薬品や、食品、化粧品には、動植物や微生物が持つ成分を原料にしたものが多いのですが、この成分を作る遺伝子が「遺伝資源」で、その実態はデジタル配列情報です。 多く

          生物多様性がデジタル空間にも及ぶ ⁈

          アバターで人はどこまで自由になる?(2/2)

          アバターとは、デジタル空間で自分に行う「人決め」や「名づけ」で作られた自分の化身です。 しかし、デジタル空間が登場する前まで、自分が自分の名前をつけてはいけない「自己命名の禁止」という社会的忌避(タブー)がありました。命名には権力性や暴力性もみられましたが、デジタル空間にはそれがありません。 そのためデジタル空間では、本名に染みついた様々な束縛から解放されて自由に活動できるようになりました。このことが拓く可能性は計り知れないものがあります。 「プレーヤー」と「キャラクタ

          アバターで人はどこまで自由になる?(2/2)

          アバターで人はどこまで自由になる?(1/2)

          アバターによる「人決め」と「名づけ」 「アバター」は、仮想空間上で重要な役割を果たしています。メタバースの普及もアバターによるところが大きいといえます。 そこで、アバターの真価について考えてみたいと思います。 アバター(avatar)は、サンスクリット語 avatāra が語源で「化身」を意味します。言葉の通り、ユーザーは自身の化身であるアバターを使って仮想空間にアクセスし、自由に振る舞います。 アバターは、ユーザーに似せて作られる場合もあれば、名前、年齢、性別などの属

          アバターで人はどこまで自由になる?(1/2)

          VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(2/2)

          FIFAワールドカップ・VARシステムの測位技術とサッカーの行方 FIFAワールドカップ・カタール大会の対スペイン戦で三笘選手のライン判定「1.8mm」に一役かったVARシステム。 技術的にみると、最初に導入された2018年には、映像判定システム「ホークアイ」が使われ、今回これに「IMU(慣性計測ユニット)」が加わりました。このIMUには位置情報技術「UWB」が使われています。 4.UWBの測位精度 UWB(Ultra Wide Band)とは、超広帯域の無線通信規格の

          VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(2/2)

          VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(1/2)

          FIFAワールドカップ・VARシステムの測位技術とサッカーの行方 FIFAワールドカップ・カタール大会の対スペイン戦で三笘選手のライン判定「1.8mm」に一役かったVARシステム。そこにはどのような測位技術が使われ、どのように高い精度が実現したのかを明らかにします。 そして、この仕組みにより「サッカー」というゲームは「デジタルツイン」に変容しました。人とデジタル技術、あるいは現実空間のサッカーと仮想空間のサッカーが同時並行してゲームが高度化する、新たなステージに突入してい

          VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(1/2)

          タイパは次世代の生き方(SMSFという行動サイクル)3/3

          タイパの行動サイクル(S→M→S→F) 「タイパ」の習慣は「経験のバッケージ」のあり方も変えていきます。個々人が行動サイクルを回しはじめることで、それぞれに独自の「経験のパッケージ」が育っていきます。 それこそが時間マネジメントの「自己モデル」というべきものであり、その人にとって「生きる様式」といってもよいと思います。 つまり「タイパ」とは、自分なりの時間マネジメントの「モデル」を作ることです。 このモデルを基づいて行動サイクルを回し、現実に得られた満足感や充実度を確認

          タイパは次世代の生き方(SMSFという行動サイクル)3/3

          タイパは次世代の生き方(時間マネジメントの行動サイクル)2/3

          タイパという時間マネジメント 大竹伸朗展で体験した大竹作品は、スクラップなどの仕掛によって、失われた時間を回復する事後的な試みでした。 それに対して「タイパ」は事前に時間マネジメントを行い、大胆にバッサリ時間を切り捨てたり、組み立てたりする新しい時間の使い方といえます。 マネジメントは経営管理を意味しますが、計画-実行-審査 ( PDS )、あるいは計画ー実行ー評価ー改善(PDCA)といった管理サイクルを伴っています。 ただ、企業経営のように、個人が自らの活動に対して

          タイパは次世代の生き方(時間マネジメントの行動サイクル)2/3

          オフィスはデジタルツインになる(4/4)

          オフィスのデジタルツインの影響は、「開発設計」段階だけでなく、「日常業務」の高度化にも現れます。前回は①「設計デザイン」への貢献をみてきましたが、今回は、②日常業務に対する貢献、について考えてみたいと思います。 「可視化」による貢献 「オフィスはデジタルツインになる(1/4)」で触れたように、デジタルツインの「②日常業務に対する貢献」は、収集データをフィードバックする「リアルタイムフィードバックルート」で実現しています。 ただし、「リアルタイムフィードバックルート」とは

          オフィスはデジタルツインになる(4/4)