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位置情報/IoT技術

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位置情報サービスやIoT技術を紹介したり、関連する規制や制度の問題などの論考を紹介していきます。
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記事一覧

映画『Winny』のメッセージ

映画『Winny』は新聞のコラム欄で上映を知り、TOHOシネマ日比谷に行きました。休日だったこともあり、映画館はほぼ満席でした。 日本で起こった世界技術史的事件 風化したと思っていたWinny事件が今、映画として取り上げられたことに強い関心がありました。 この事件は、WinnyというP2P型のファイル通有ソフトが著作権侵害幇助に問われたもので、インターネットを巡る大事件でした。それも今では考えにくいのですが、開発者が日本人で、日本国内が舞台となっていたワールドワイドな事件

VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(2/2)

FIFAワールドカップ・VARシステムの測位技術とサッカーの行方 FIFAワールドカップ・カタール大会の対スペイン戦で三笘選手のライン判定「1.8mm」に一役かったVARシステム。 技術的にみると、最初に導入された2018年には、映像判定システム「ホークアイ」が使われ、今回これに「IMU(慣性計測ユニット)」が加わりました。このIMUには位置情報技術「UWB」が使われています。 4.UWBの測位精度 UWB(Ultra Wide Band)とは、超広帯域の無線通信規格の

VARシステム/三笘の1.8mmは正しい?(1/2)

FIFAワールドカップ・VARシステムの測位技術とサッカーの行方 FIFAワールドカップ・カタール大会の対スペイン戦で三笘選手のライン判定「1.8mm」に一役かったVARシステム。そこにはどのような測位技術が使われ、どのように高い精度が実現したのかを明らかにします。 そして、この仕組みにより「サッカー」というゲームは「デジタルツイン」に変容しました。人とデジタル技術、あるいは現実空間のサッカーと仮想空間のサッカーが同時並行してゲームが高度化する、新たなステージに突入してい

位置情報は誰のもの?(3/3)

4.ケースによって異なる「個人の位置情報」の区分 それでは「個人の位置情報」は、どのようなケースで「個人情報」となり、「仮名加工情報」あるいは「匿名加工情報」となるのか、整理したいと思います。 <個人情報か、個人関連情報か> 「位置情報」には、一般的に「ID」「位置」「場所」という3情報が含まれています。この中で、「ID」の扱いが、情報区分を変えることになります。 一般的な測位で取得する「ID」は、名簿や商品管理簿などと簡単に照合して特定個人を識別できるようにしています

位置情報は誰のもの?(2/3)

3.位置情報利用の規制 それでは、「個人の位置情報」の法的な位置づけを整理していきます。 <2003年個人情報保護法で位置情報は対象外> 2003年、個人情報保護法(正式名称:個人情報の保護に関する法律)が成立し、2005年に施行されました。 ここで「個人情報」は、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」で、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができ

位置情報は誰のもの?(1/3)

1.位置情報利用が日常化する 日常生活の様々な場面で利用されている「位置情報」。 位置情報を身近な存在にしたのは、1990年に登場した「カーナビ」です。これは、カーナビに搭載された受信機が複数のGPS衛星の信号を受信することで、自車の地表上の位置(緯度・経度・高度)を把握するという画期的なものでした。 その後、カーナビは、目的地までの経路案内というナビゲーション機能に加え、多くの車から収集した車両の走行情報を収集・分析して、道路の混雑状況を提供する交通情報サービスへと発