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『君に贈る火星の』

『やあ、荷物は届いたかい?』
『ええ。これはワインかしら』
『火星産の特別なね。それで、前に話したことだけど……』
『もちろん、いいわ』
『本当に?』
『貴方と一緒なら月でも火星でも、ついていく。決まっているでしょう?』
『ありがとう!それならそのワインを飲んでくれるかな。火星に住むには火星産のものを口にすることが条件なんだ』
『分かったわ』
 女はワインをグラス注ぎ、それを飲み干した。
『香りはいいけれど、何の味もしないのね』
『ああ。でもそのうち幸福な気分になれるはずさ』
『……え?』
『火星は素晴らしい。火星の高度な文明社会には君も驚くだろうね。ここでは何一つ不安なことはない。皆が幸福なんだ。君を連れてくる許可が欲しいと頼んだら、快く承諾して下さった。
 ワインに入っていた薬の匂いを辿って、じきに火星のお方達が迎えに来て下さるよ。くれぐれも失礼のないように。でないと殺されるよ。当たり前だけど。
 さあ、火星での幸福な生活を。君に』

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