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映画「春の画 SHUNGA」

 大ヒット上映中の「春画先生」に続いて、さらなる春画をテーマとした映画が封切られる。ドキュメンタリー映画「春の画 SHUNGA」である。2023年11月24日(金)、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー。
 春画の深遠なる魅力にあらゆる角度から迫り、その奥深くへと観客をいざなう作品だ。美しい映像で映し出されるのは、葛飾北斎の有名な“蛸と海女”の絵、喜多川歌麿の「歌満くら」、鳥居清長の「袖の巻」、鈴木春信のユーモラスな「風流艶色真似ゑもん」。
 さらには、大名家への嫁入り道具と伝えられる華麗な肉筆巻物、ヨーロッパのコレクター秘蔵の「春画幽霊図」などバラエティーに富んだ傑作の数々や、贅を尽くした源氏物語のパロディー「正写相生源氏」(歌川国貞)の絢爛豪華な“極初摺り”も登場する。

 春画に描かれている性愛のかたちは驚くほど多彩だが、そこには歓喜と興奮、情熱と悲哀、嫉妬、駆け引きなど人間味あふれるドラマや、春画が「笑い絵」と称されるようにユーモアをもって描かれる「生命」そのものの魅力が描き出されている。
 また、復刻やデジタル化などのプロジェクトを紹介。没入感を味わえる春画のアニメ化も必見だ。
 春画には彫り・摺りの高度な技術も投入されて、「美」「技」において超一級の芸術と呼べる作品が数多く生み出された。
 しかし、時代が江戸から明治に変わると“わいせつ”であるとして警察による取り締まりの対象となり、日本文化から姿を消してしまった。 性別を問わず楽しめるアートとして再評価の機運が高まったのは、つい最近のこと。
 2013年、ロンドンの大英博物館で世界初の大規模な春画展が開かれ、大勢の人が詰めかけた。その半数以上が女性だった。
 2015年~16年の、東京と京都での日本初の「春画展」も動員29万人を記録し、ここでもその約半数が女性だった。
 本作には画家の横尾忠則らが出演している。
 監督は平田潤子。これまでにディレクターとして数々のドキュメンタリーを演出してきた。主な作品に『三代の恋物語』(2006/ATP新人賞)、『にっぽんの記憶』(2010/ゆふいん文化記録映画祭松川賞)、『なにゃどやら-陸中小子内の盆唄-』(2012/ 山形ドキュメンタリー映画祭)、『詩人榎本櫻湖の冬の旅』(2016/映文連アワード)など。
 企画・プロデュースは小室直子。主なプロデュース作品に『風に濡れた女』(2016/塩田明彦)、『海を駆ける』(2018/深田晃司)、『フジコ・ヘミングの時間』(2018/小松莊一良)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(2021/堀江貴大)、『あちらにいる鬼』(2022/廣木隆一)、『658km、陽子の旅』(2023/熊切和嘉)、『春画先生』(2023/塩田明彦)などがある。 
 プロデューサーは橋本佳子で、テレビ、映画ともにこれまでに数多くの受賞作をプロデュースし、2005年までの20年間、ドキュメンタリージャパンの代表を務める。主なプロデュース作品に『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎 90歳』(2012/長谷川三郎/キネマ旬報文化映画第1位)、『フタバから遠く離れて 第1部・第2部』(2012・14/舩橋淳/ベルリン国際映画祭正式招待作品)、『FAKE』(2016/森達也)、『いしぶみ』(2016/是枝裕和)、『Ryuichi Sakamoto: CODA』(2017/スティーブン・ノムラ・シブル/ヴェネチア国際映画祭正式招待作品/文化庁映画賞)、『沖縄スパイ戦史』(2018/三上智恵/文化庁映画賞)など。個人として放送文化基金個人賞、ATP個人特別賞、日本女性放送者懇談会放送ウーマン賞を受賞。
 2023年10月13日公開の劇映画『春画先生』(主演:内野聖陽、監督:塩田明彦)が大きな話題をよんでおり、また銀座の「ギャラリーアートハウス」では2023年12月17日(日)までおよそ50点の春画が並ぶ「銀座の小さな春画展」が開催されている。

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