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ペルー、インド、宮古島より

 池袋などを擁する東京都豊島区。区民の約1割が外国籍住民で100か国以上の人たちが住んでいる「多国籍な豊島区」だ。
 それにちなみ2017年から開催されている「Live Musicシリーズ」というワールド・グローバル音楽コンサートが今年もやって来た。
 2014年1月21日(日)、としま区民センター(東京都豊島区東池袋1-20-10)で開かれた「Live Music in Hareza 2024」2日目を見た。

 ナビゲーターのDJで中東料理研究家のサラーム海上さんがまず挨拶した。「豊島区内のライブハウスで活躍するミュージシャンを応援するために2017年に始まりました。多文化共生を掲げる豊島区にふさわしいイベントです。みなさん楽しんでください」。

サラーム海上さん


 まず登場したのは、ペルーのアヤクーチョ地方で生まれ12歳までケチュア語のみの生活環境で暮らしたIrma Osnoさん。Irmaさんは現在、早稲田大学と法政大学でスペイン語講師を務めている。ボーカルのIrmaさんは、ギターのShin Sasakubo(笹久保伸)さんとともにパフォーマンスした。
 Irmaさんが生まれた標高3000メートルのアヤクーチョ地方にはたくさんの牛がいるという。一曲目は牛の祭りを歌った「カチコ祭りの歌」。Irmaさんは左手に太鼓を持って叩きながら歌った。
 アヤクーチョ地方に小さな村があって、そこについての「チェスチの歌」をIrmaさんは小さなギターを弾きながら披露した。
 3曲目からはギターのSakakuboさんが加わり、「エルメス」という歌を演奏した。エルメスとは男の名前だ。踊るための歌が続いた。
 次は「標高が高い所の歌」。Irmaさんは「標高3000メートルぐらいから山には気が生えません。低い草しか生えませんが、中でも一番強いのがイチョという草です。そのイチョや他の草も出てくる歌です」と話した。


 そして続けて「マイソニード」つまり「川の音」という歌。「アンデス川の流れる音についての古い民謡で作者は分かりません」。
 次に歌われたのはいわゆる労働歌で「麦やグリーンピースなどを踏んで収穫する時に踊りながら歌われる歌」で歌詞は「みなさんと一緒に収穫しましょう。強く踏みましょう」というもの。
 日本でもかつて稲刈りの時に歌われた労働歌が各地にあった。人は住む場所、経済社会の発展具合などで違いばかりが目につくようでも、このような労働歌を通して見えてくるのは、「人間の営みは何処にいても基本的に同じなのかも」ということだと感じた。
 「アンデスでは1月からカーニバルがあります。これはヨーロッパから入って来たものですが、アンデスの人たちは自分たちのバージョンを作って楽しんでいます」。そうここでカーニバルの歌が披露された。
 続くは「マリーナマリニータ」という歌。「アンデスには海がありませんが、川に人魚がいます」と話した。これは人魚についての歌。

シタールとタブラで北インド古典音楽
 二番手はヨシダダイキチXレオで北インド古典音楽あるいはヒンドゥスタ―二ー音楽という「インド亜大陸の北の方の音楽」だ。
 ヨシダさんは1996年からインド音楽を学んでいる。2006年からインド唯一のシタール流派であるイムダード派のウスタード・シェキード・カーンに師事。国内外レーベルから多数アルバムをリリースしている。
 レオ(林怜王)は幼少の時からインドに旅し、2011年からタブラを師匠について学ぶ。2016年、14歳の時にインドの全国的コンテストでタブラ演奏が評価され優勝した。
 ヨシダさんは「普通は一曲が一時間半くらいあるんですが、それでは時間オーバーなので、それを20分くらいに短縮しました」と話して、1曲目のシタールとタブラの演奏に入った。
 2曲目はレオによるタブラの演奏。タブラを触るのと叩くのの中間ぐらいのタッチで演奏しているが指先に力がきちんと入っているのだろうかなり強い音色が奏でられていることが印象に残った。
 3曲目は「バイラビ」という曲。「結構知られている曲です。大陸独特のいろんな文化が融合して出来た雰囲気があります」。

林レオさんとヨシダダイキチさん(右)


 最後に登場したのはMiuni。Miuniとは御船のことで(沖縄県)宮古島の古い言葉で船の意味である。島でウタはアーグ(綾語)である。2023年7月にはファースト・アルバム『MIUNI』をリリース。
 與那城美和(唄三味)、川瀬七重(唄三味)、池村綾野(ピアノ)、池村真理野(サックス)から成るグループである。
 1曲目は出航の時の喜びを歌った歌で、続いては豊作を祈る歌。


 3曲目は「クンヌシュ」という歌で「海亀が登場します。食べられる寸前で助けられた海亀はそのお礼に船旅のお供をして、海亀のおかげで目的地に無事に到着することが出来た」と歌われる。
 続いては「トウガニスサ」。スサとはお兄さんのことで「伝統的な言葉遊びで、男女が集まって月の明るい夜に声を掛け合うという歌です」。途中、客席から手拍子が沸き起こった。
 そしてピアノで静かに始まる「宮古島の子守唄」。與那城さんは「私も息子を育てる時に唄いました」と話した。
 次に宮古島のお祝いの歌「ナマスグヌー」が歌われた。「お刺身にどんな貝殻を乗せたら美味しそうかな」という歌詞だ。
 「人生の航路の安全を祈願する歌」が歌われた後、この日のすべてのパフォーマンスの締めくくりは「カニクバタ」だった。

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