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飯舘村からの報告③

 ここでは2023年11月3日(金・祝)に福島県の「飯舘村交流センターふれ愛館ホール」で開かれたシンポジウム「被災後12年の被害実態、暮らしと村人・村の将来を語る」から総合討議の様子を紹介する。

 飯舘村は事故を起こした福島第一原発から北西に位置し、およそ28キロ離れている。2017年春から村の大半の避難指示が解除されていったが、まだ未解除の地区も残っている。3.11前の村の人口はおよそ6510人だったが2017年には488人。その後、回復しているものの、2021年9月1日時点では1480人にとどまっている。
 討議はまず問題視されている汚染木材を使ったバイオマス発電について取り上げられ、村人である菅野哲(かんの・ひろし)さんは述べた。
 「非常に難しい問題です。じゃあどうするのか。(飯舘)村民の8割が村外で暮らしていて、行ったり来たりを繰り返し、村への関心は持ってはいるものの行政の行動に対して、議会に委ねている部分がある」。
 菅野さんは2021年3月に飯舘村での安心・安全な、そして充実して暮らしてきた生活が破壊されたことに対する賠償を求めて提訴している。
 菅野さんはその際に指摘していた。
 「計画的避難とはいえ実際は強制避難だった」「飯舘村民の避難は、避難指示の指定が事故から一か月以上も遅れたことで、高放射線下の村内に残らざるをえず、確実に被ばくしていたはずだが、避難にあたっては、スクリーニングもされず、線量検査もされなかった」
 「村の80%は除染ができておらず、山も川も放射能汚染はそのままで、山の恵みである山菜もキノコも何百年と食べることも出来ない」「「風評」という言葉は、政治・行政が作り上げた戯言で、いかにも安全だとアピールして国民を安心させて黙らせようとするまやかしの手法」

菅野哲さん


 一方、こちらも村人の伊藤延由(いとう・のぶよし)さんは「汚染木材を燃やすことで放射能が200倍に濃縮されるという問題がある。議会が認めて受け入れるとすると、労働裁判になるかもしれない。作業員の被ばくの問題を考えるとしっかりやっていくしかないと思います。多弁フィルターにするから安全だと(行政は)言っているが飛散しますよ。もう出来てしまっているから、どう監視するかというのが私の務めだと思っています」。

伊藤延由さん


 いいたてネットワーク代表の横山秀人(よこやま・ひでと)さんはバイオマス発電について「様々な予算が決定しています。10月に住民勉強会が5ヵ所でありました。その資料の一番最初に紹介されていたのが木材バイオマスでした」。
 「里山再生に役立ち、新たな雇用を生み、放射能物質が発生しないかのチェックもなされると。しかし、周辺の水などもチェックする必要があると分かりました。今後具体的になっていくと思います」。

横山秀人さん


 鈴木譲(すずき・ゆずる)東京大学名誉教授さんは間伐材を燃やすのにあんな大規模なものは要らないという。「発電するのにその木をどこから持ってくるのか。福島や宮城だったらいいんじゃないかと。懸念しているのは汚染を含む木が(そういう原発事故被害地域)から持ち出されることです」。
 汚染木材によるバイオマス発電が稼働する前に「空気中放射線濃度をきちんと計って、連続して監視をきちんとしておく必要がある。しかし、そういうことは(行政は)やっていません。私からすれば手を抜いている」。

鈴木譲さん


 こういうことは「ラウンドテーブルで丁々発止やることが日本の民主主義にとって大切だが、そういうことが条件に入っていないことが大問題なのです」と糸長浩司さんは述べた。

糸長浩司さん


 写真家・豊田直巳(とよだ・なおみ)さんは「誰が(汚染された)木を切ってくるのですか。集めてくるんですか。事故を起こした東電の幹部や原発推進派の政治家がやるんですか。結局、社会で一番弱い人たちが被ばく労働に行く。だから(そういう現場は)取材出来ないのだと思っています」。


 さらに議論の中で飯舘村で進められているキャンプ場計画の話があがり、「キャンプ場を作って子どもたちが遊ぶ。それが村の復興だといっている。でも今、(放射能汚染が)どういう値になっているのか」との声も。
 あるいは「今300人以上の子どもたちが甲状腺がんになっている。国も東電も事故との関係はないとしており、救済の対象にはならず、普通の健康保険で治療をしている。行政が手を差し伸べる必要がある。救済基準があっても、認定が承認されない時には悲劇的な状況が続くおそれがあります」。


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