鹿島の宿願を叶えた「Two-time champion」 GKの喜怒哀楽⑦~2018年ACL決勝2ndレグ、ペルセポリス対鹿島~

「Two-time champion」は偉大だった。鹿島のGKクォン・スンテは、イランのペルセポリスと争うアジアチャンピオンズリーグ決勝の2ndレグを、完璧な立ち回りで完封。3度目の戴冠を果たした。

樹木が年輪を重ねて美しさを増すように、GKは経験で磨かれる。浴びたシュート、喫した失点の数が〝血肉〟となり、予測の精度が向上。いわゆる「スーパーセーブ」が増えていく。その数は、反射神経をはじめとする身体能力がもたらすそれよりも多い。身体能力では補えない速さ、コースのシュートにも、経験則で先回りできるからだ。

1984年9月11日に生まれた34歳は、全北現代でKリーグを3回、ACLを2回、それぞれ制し、韓国代表としても6試合に出場。百戦錬磨であり、勝ち方を知るGKだ。

それだけに、約10万人が駆け付け、ブブゼラが大音量で鳴り響く異様なムードにも動じない。ペルセポリスが多用するクロスを落ち着いて処理し、密集地帯に放り込まれても競り負けずにクリアする。ペルセポリスのアタッカーは総じてフィニッシュが甘く、試合を通じて難しいシュートは少なかったが、前半に飛んできた威力のあるミドルは正面に回り込み、パンチングで堅実にストップした。

さらに、時間を削るプレーを繰り返す。ペルセポリスの選手が蹴ったボールが流れてくれば、すぐにキャッチせず、寄せてくるまで足元でコントロール。クロスやシュートを直接捕った時は、そのまま次のプレーに繋げず、ゆっくりと倒れ込んだ。たとえ微々たる量でも時計の針を進め、劣勢の味方を助けた。

昨年1月に鹿島へ加入した直後は、日本への適応に苦しんだのか――言語が異なれば、細かいコーチングに支障をきたす――、輝かしい経歴に相応しくないポカが嵩んだ。怪我にも祟られ、J1では12試合の出場にとどまった。しかし、今季は一変。とりわけ大舞台で好守を連発してきた。

水原三星と激突したACLの準決勝、1stレグでは接触したイム・サンヒョプに頭突きするふりをして味方に火を点け、鹿島の逆転勝利を間接的に支援。決勝では逆に「明鏡止水」の境地で2試合を完封した。

ACLのタイトルは、鹿島の宿願だった。ようやく手繰り寄せたトロフィーの輝きは、クォン・スンテの献身にも彩られている。

<採点>
ビーランバンド:6
ビッグセーブ:0
ミスセーブ:0
後半、CKにのけぞってクリアミスを招いたが、鋭い反応、強肩を生かしたスローイング、ドリブルを含めた巧みな足技などで実力を示した。

クォン・スンテ:6.5
ビッグセーブ:0
ミスセーブ:0
驚くべき冷静さで完封。時間を削るプレーの数々は、さすが歴戦の勇士だ。

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