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#3_16 2023年地下アイドル業界分析~TikTokとFRUITS ZIPPER/iLIFE!~

(記事内で表現している序列については食前舌語の独断と偏見による判断であるためご容赦いただきたい。)

昨年好評だった「地下アイドル業界構造」に対し、この1年間で地下アイドルの業界縮図は非常に大きく変化した。

「なぜオワコンと言われた地下アイドル業界に変化があったのか」
これに対し、食前舌語は過去の記事をもとにしつつ「TikTok」という背景を絡めつつ、FRUITS ZIPPER/iLIFE!の何がすごいのか、そこから得られるエッセンスを議論したい。

まず2つのアイドルを紹介する

今回の記事は、FRUITS ZIPPERのレコード大賞新人賞受賞に合わせて書かれたものであり、普段このnoteをご愛読いただいているアイドルファンの皆さんには釈迦に説法であると思うが、その点はご容赦いただきたい。

FRUITS ZIPPER

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2022年2月にデビューした7人組のアイドルグループ。

まず圧倒的に特徴的なのが所属事務所の「ASOBISYSTEM」である。
一般人には聞き馴染みがあまりない事務所であるが、かわいいの代名詞きゃりーぱみゅぱみゅさんの所属事務所というとその方向性がお分かりいただけるだろう。
また直近でのバズりである新しい学校のリーダーズも所属しており、いわゆるAKBや乃木坂のような世間一般的の可愛いだけでなく、抽象化されつつもコンセプト起点であるかわいいをしっかり現代に伝えている事務所である。

メンバーも元HKT48の4期生の月足さん、元天てれメンバーの鎮西さんを中心としつつ、全メンバー個性とともに人気が高い。

そして、TikTokで『わたしの一番かわいいところ』が大ヒットしたことでライブアイドルシーンでも不動の人気を博すようになり、いまでは地下アイドルではなく、ライブアイドル界に紛れ込んだ、でも地下アイドルの良さも多数持ち合わせた人気グループとして顕在している。
23年のレコード大賞新人賞も受賞。

iLIFE!

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2020年デビューのアイドル。

悲劇のヒロイン症候群など女性人気の高いHEROINESからデビューしたグループで、数々の変遷を経て現在は9人で活動している。

傾向としては「圧倒的な若い女性からの人気の高さ」があげられる。
23年の高校生最新トレンドランキングにおいて、「今一番話題となったアーティスト・アイドル」の堂々4位に選ばれるなど、その圧倒性は他の追随を許さない。

出典はこちら


2022年から2023年の変化

昨年の記事はこちら。

前回:2022年4月時の振り返り

前回このような図を前提としつつ、地下アイドル・ライブアイドルを前提としてピラミッドを作成しこの時、TOPのまねきケチャの現体制終了・26時のマスカレイドの解散という、いわゆる「地下アイドル業界の再編」があった。そして、その中で様々なグループがいわゆるTOP層にどれだけ近づけるか、というのが勝負であった。

このピラミッドは単なる人気、という話ではなく、
地下アイドル業界における人の流入の入り口としての機能に着目したものである。

2023年の年末も、同じピラミッドを前提として、新たに2023年のピラミッドを作成した。

2023年現状を可視化する


昨年同様、具体的なグループを挙げたほうが議論が明瞭になるため上げたものの、最初に記載の通りこの序列に食前舌語の独断と偏見が多分に含まれていることはご容赦いただきたい。

まずTOP層として「地下アイドルの入り口的代表アイドル」としてFRUITSU ZIPPERとiLIFE!を上げた。
後ほどこの2グループの躍進は議論するものの、23年の見え方としてやはり「圧倒的な初現場客の増加」があげられる。

その次の層として、昨年TOP層の定義である「地下の代表」として#ババババンビや高嶺のなでしこなどを上げている。
今回の議論の主軸はこの層がなぜTOP層へ行けなかったのか?も議論を深めるうえで重要になろう。

その次に真っ白なキャンバス、NEO JAPONISMなどの19年から存在している古参アイドルであるが、この1年では特に主催対バンの実施が目立った。
※この話について過去にも議論済み。

また、3層目については特にyosugalaなどを中心に、新進気鋭の実力はが非常に増えてきており、3年後のライブアイドル界を支える存在への期待感も高い。

2023年、何が起こったのか

①ライブアイドル全体の衰退はやはりとまらなかった

改めてであるが、食前舌語は
・TOP層がライブアイドル界の集客へとつなげる
・その後知人やSNSを通じて下の層へファンが流動していく
という簡略化した2軸を前提に議論を進めている。
その中で「TOP層の集客増加(=地上アイドルの集客と離脱)」「流動化を進めるための新規施策や注目力」が重要であったが、残念ながら2023年もライブアイドルには非常につらい1年であったと言えよう。

この中で、やはり1番大きな要因は最も新規ファンとして相性がいい「大学生の地下アイドルファン」がコロナ禍を過ぎても戻ってきていないことである。
これは過去様々な運営とも議論を重ねたのであるが、「そもそもコンテンツが増加した」ことももちろんであるが、それ以上に「地下アイドルの魅力がうまく伝えられていない、もしくは伝える人が減少した」という要因があげられることが多い。(以前にもnoteで議論しております。)

②地下アイドル界の集客とTikTok

一方で、前回でもBiSH(ライブアイドルから脱却し、ロック界での人気を獲得)を上げたように、この衰退する業界内で人気を獲得するのではなく、別の市場でファンを獲得することも有用であると述べていた。

その中で2023年は改めてTikTokの力が非常に大きな影響力をもたらした。もともと地下アイドル×TikTokの相性はよく、例えば230万フォロワーを抱える金子みゆ(元LinQ)や、120万フォロワーを抱えるわたげ(元chuLa)など、発信力で圧倒的なアイドルも多かった。

一方で、特に22年以降でFRUITSU ZIPPERは『わたしの一番かわいいところ』を皮切りに、23年では『ハピチョコ』『超めでたいソング~こんなに幸せでいいのかな?~』など超王道なアイドルかわいいソングを続々と展開。
いわゆる「どのグループかわからないけどこの曲とこの子だけは知っている」という状況を創り出せた。

一方でiLIFE!も22年の『アイドルライフスターターパック』『可変3連MIXを覚える歌』などを皮切りに、23年も『会いにKiTE!(22年年末公開)』『アイドルライフブースターパック』『ナイナイ恋煩い♡』など、キャッチーな歌詞にキャッチーな振り、という「オンラインから現地ライブへの壁」を気軽に”参加”できるコンテンツとして昇華させたことで、ほかの地下アイドル、ライブアイドルとは一線を画した人気を獲得したと考察される。
(もちろん地雷系メイクなど、メンバーのビジュアル等々女性人気が高くなるようなコンテンツとして一貫して仕立て上げてられていることも大きな要因である。)

これらTikTokの面白いところとして、一度バズると指数関数的に再生回数が増えるという点である。

要因の一つとして、TikTokでの異様なコンテンツ接触数があげられる。
例えばYouTubeでは直近ではショート動画なども開始されたが、基本は数分から約10分前後の長尺動画であり、つまりコンテンツの消化速度が遅い。
一方で、TikTokは「3秒で次の動画にスキップされる」といわれるほど、とにかく高速でコンテンツが消費される、つまり1時間当たりのコンテンツ接触数も多くなる傾向にある。
このような接触回数の増加は、すなわち単純接触効果としての好感を持たれやすい傾向につながるわけであり、地下アイドルという独特なコンテンツが受け入れられやすくなる方向につながると考える。

また、もう一つの要因として、UGC(UserGeneratedContents)、すなわち運営やメンバー以外の人の発信が非常に多いことである。
この特徴でTwitterと大きく異なる点が
・動画コンテンツとして負荷が高いわりにかなりの頻度での投稿が元前られるTikTokerの宿命
・有益コンテンツ系の発信にも音源が使われる
など、ファンではない人にもコンテンツが発信される座組ができているため、Twitterなどと比較してもUGCが生まれやすい環境にあると考察される。

一方で、TikTokでバズることが人気になることの十分条件ではない

ライブアイドルでバズったほかのグループ

一方で、よくTwitterで「SNSでバズれば人気になる」といった安直なコメントが散見されるが、これについて食前舌語の回答はNoである。
というのも、バズりが発生したのに人気がいまいち伸びきっていない(これは将来的な期待も込めて今は伸びていないという表現を用いている)グループがいくつかある。

まず1つ目にAppare!である。
19年のコロナ前のオタクで考えると全く違うような方向性の『ぱぴぷぺpop!』が22年にバズり、コロナ前のピンチケはみな驚いたのを覚えている。
(当時食前舌語も最初聞いたときに天才だと思ったのだが、それはバズるという観点ではなく、ただ単に君ワンなどをやっているグループがこの方向性で挑戦できることに対してである。)

そしてもう一つがゼロイチファミリアの3グループである。
下記3アカウントがそれぞれ#mooove!と#よーよーよーと#ババババンビのグループの公式アカウントであるのだが、グループが持ち曲を広めることを主の目的とせず、メンバーのポテンシャルを発揮して今バズっている曲(やそれこそ先輩が後輩の曲を踊る)など事務所内の交流も含めて非常に魅力的な活用がされている。
その中で特徴的なのはどのグループもグループ名を隠して行っているということである。
つまり、地下アイドルだと思って好きになる/フォローするのではなく、フォローする/好きになったうえでそれが地下アイドルだから会いに行けるとわかる、とカスタマージャーニーが入れ替わっている点にも注目である。

なぜか#2I2だけないのですが、見逃してますか?

なぜ確固たる人気まで取れなかったのか

そのうえで、この2グループが最初にあげた2グループほど爆発的な人気につながっていない理由を2つ考察する。

まず前者のAppare!であるが、あまりに他の人気曲と方向性が違うのである。
やはりどこまで行っても過去の人気曲に囚われてしまうのが地下アイドルの界隈であり、既存ファンの多くがその過去の騒げる曲を求めて通っている。
つまり、新しい需要を創り出したはいいものの、既存ファンと新規ファンの間で需要のギャップを生み出してしまったという点が難しかったところであろう。

後者のゼロイチについては、会いに行く理由が曲ではなくあくまで人にフォーカスしているため、ライブなどの体験価値を保証しているものではないことである。
もともとゼロイチ所属のメンバーは個人の力が強い人が多いので間違った方向性ではないのであるが、もっとオンラインチェキや対面のチェキ会など、ライブ以外のコンテンツの体験方法を多角的に提示してあげる必要があると考える。

まとめ

アイドル業界全体の衰退に伴い、ライブアイドルのファンの獲得の前提である「地上アイドルからのファンの流入」が見込めなくなる中で、地上アイドル以外の別の流入元市場としてTikTokが大きく機能した。

一方で、やはりTikTokとライブの間には大きな壁があることが確かである。そのため重要なことは「バズるような曲を作る」ことではなく、「グループの色を残しつついかにそれ起点でバズれるか」という制限付きの中でいかに露出を増やせるか、もしくはスタート段人気になるいった方向性を前提としてグループを構成するか、が重要である。

また、TikTokの注意点として、”知っている”を作るのではなく、いかに”参加したくなる”という気持ちを作るのかが重要である。
これはライブというコンテンツ、チェキというコンテンツどちらでもあるが、特にライブ自体をどこまで楽しませられることを前約束できるか?という点にこだわってみるのも新規ファンを増やす一つの方向性であると考える。

閑話休題

すごいよね、、、本当に。
どこまでも成長していく彼女らに尊敬以外の何物でもありません。
あとだれか一緒に見に行こうよ、、、一人はさみしいよ、、、(笑)

過去の記事はこちら。

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