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#2_4 ファンが増えるコミュニティを創る(病まないオタクの育て方)

#2では「アイドルが人気になるためには」という本当に簡潔で、非常に複雑な課題に対し、マーケティング観点から紐解いていくものである。

#2_3ではファンコミュニティの定義を改めて確認したうえで、地下アイドルのオタクのファンコミュニティの形成過程、またその中で運営が行うべき施策を論じた。

#2_4では、さらにコミュニティを深掘り、「本当にファンが増えていく、スケールしていくコミュニティ」をどう育てていくかを論じる。

コミュニティのスケールのために

アイドルグループのファンが増えるメリット

まず当然のことであるが、運営側のメリットとしては「収益の増加」があげられる。
また、人が多くなることでグループとしての立ち位置がよくなり、結果としてより大規模なフェスへの招待・タイムテーブル上の優遇など、さらに集客できる好循環に恵まれる
加えて、単純に人がどんどん増えているという勢いは一つのブランドとして機能しており、大きな宣伝効果をもたらす。

一方で、ファンサイドについてもいくつかメリットがあるといえる。
まず「支える」という経済的負担が減るということである。
これについてはピンとこない人もいるだろうが、地下アイドルに通っている人の中にはやはり義務感で通っている人も一定数いることは事実である。
ただ、そんなことを差し置いて、何よりオタク冥利に尽きるということであろう。
自分の応援しているものにお客さんがどんどんつく、というのは別にアイドルに限ったとではなくうれしいことでしかない。

ファンが増えない要因

それでは、どのようなアイドルがファンが伸びないのであろうか。

まず、単純にそのアイドル・現場がつまらないからである。
もうここ議論したくない、と思ってたんですが、実はここ掘るとめちゃくちゃ深いので、今後きちんと深掘ります。
ただ簡潔にいうと「地下アイドルでニッチ戦略をとってもヒットしないし、最初からリーダー戦略をとっても実力のないアイドルは伸びない」ということである。

ただ、ここで議論したいことは、実力があるのにファンが増えないことである。
それはファン同士がどれほど自分がお金を積んでいるか、推されているかのマウント合戦を取り合い、結果としてコミュニティにファンが定着しないことである。
もう、不毛としか言えないが、世の中には「TOになりたがる」人もいるし、ただ単純に「同担拒否な」人もいる。
ガチ恋=同担拒否では全くないが、ガチ恋に多い印象は抱く。

マウント合戦とオタク

ここで、改めて「地下アイドル」という趣味に皆さんは何を求めているだろう。

一概に「楽しさ」と言っても、人によってその定義も異なる。
例えば推しメンと話すのが楽しかったり、成長していく姿を応援しているのが楽しかったり。
ただ、(個人的にかもしれないが)大きく分けると2種類の楽しみ方に分けられると考える。

まずは、ライブや特典会など、地下アイドルが提供するサービスそのものを楽しいと感じる「絶対評価」的な指標である。
この場合、別に誰かと比べたり、最前の席にこだわったりといったことは全くなくなる。
ただ運営としてはあまり顧客単価が高くなるとは言えないため、ライト層に区分されることも多い。

一方で、現場に実際通ってる人であればわかるが、〇〇ちゃんを自分が1番応援している、自分が1番チェキを撮っているといった、自己肯定感を高めるための「(他のオタクとの)相対評価」的な指標を持つ人が一定数いるのも事実である。
小さな環境においてお山の大将になってもしかたないだろ…と突っ込みもごもっともであるが、そもそも人間だからこそ「誰かより優れたい」という感情から同担を牽制し、マウントを取り合うわけである。
もちろんこれはライブアイドル、よもや女性アイドルに限ったものではなく、メンズアイドルであれば「同担拒否」という言葉があるように、お互いを比較することはなんな不思議な現象ではないわけである。

運営/アイドルはなにをすべきなのか

ここで重要なことは、単に「みんな仲良しこよし」のオタクたちを集めたコミュニティを作っても仕方ないわけである。
というのも、上記に記載しているように、一定程度のマウント合戦が起こることで収益が増大するわけで、
・毎月10公演で1枚ずつチェキを撮る
・毎月全通で10枚ずつチェキを撮る
オタクであれば、LTV(そのオタクが生涯で落とす総額)は確実に後者の方が多くなるわけである。

そのため、運営は単に仲のいいコミュニティを創るのではなく、一定の負荷、つまり”ストレス”を掛ける状況が望ましい。
有名な話にオランダの「ポストコード・ロタリー」という宝くじがあるが、これはくじの権利はもちろんお金を払った人にのみ支払われるのだが、くじ番号は郵便番号に依存する。
そのため、買わないと周りの人が当たった時に…といった心理的ストレスを感じ、ついつい買ってしまうのだ。

例えば「オフ会」も、クローズドなものではなく、敢えて公式で実況するなどすることで、行けないストレスを与えて、次のリリイベではCDを積もう、といった気持ちを作れるようになる。

もちろん一見すると「自分の顧客にストレスを与えるなんて!」といったこともあるだろうが、一定程度のストレスはファンの熱狂化や、深化の促進にもつながると考える。

別件:病むオタクを作らないために

先ほどの議論で、楽しみを「絶対評価」と「相対評価」を論じたが、実はこれは別の議論にも通じる。
それはオタクが病む理由である。

病む、というのは結論「オレが好きな推しメンは、オレよりも他のやつを推してるのが許せない」といった感情に生まれると考える。
これは、一種の自己肯定感と承認欲求からなされるものであると思うが、これは相対評価から生まれる自己肯定感の欠如ではないか。

そういう点で、病まないオタクを作るには、いかに相対評価をしないかではないか。
ただ、上記記載の通り、運営もストレスを与えて、相対評価させようとしてくるわけである。
その中で、いかに、アイドルが提供するサービスそのものに楽しさを得るかを意識すべきだと考える。

まとめ

ファン増加にはコミュニティの発展が必須であるが、ファンが相対評価を始めると他に勝ちたいという意識から関係値が悪化してしまう。
そのためら運営はいかに適度に相対評価を感じさせながら、絶対評価で目の前の提供サービスに価値を感じてもらえるか、を常に考え続ける必要がある。

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