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#2_2 アイドルオタクの深層心理分析(なぜ学生オタクがコロナ禍で減少したか?)

#2では「アイドルが人気になるためには」という本当に簡潔で、非常に複雑な課題に対し、マーケティング観点から紐解いていくものである。

#2_1では、とあるツイートのリプ欄を集計することで、地下アイドルがファンを獲得するためにどんなことをすべきなのか、数量的に分析した。

#2_2の第2弾では、「アイドルの価値」を深掘るために、特に地下アイドルオタクの深層心理を考え、アイドル運営が施策を作る根本で気をつけるべきところを確認する。
また、昨今新規、特に高校生や大学生のオタクが極端に減少したことに対しその原因を上記から推測する。

アイドルの価値

機能的提供価値

過去にも実は同じことを分析している。

ただ、これは単なるアイドルの機能的提供価値でしかないわけである。
例えばレッドブルであれば「元気になれる成分が入っている飲料」といった具合である。

しかし、注目すべき点として、コロナ禍の変化に対し、特にアイドルの機能的提供価値は変化していない。
つまり、機能的提供価値だけで今の現状は議論できないのである。

そのため、ここで顧客目線でのインサイトをさらに深ぼっていく。

顧客インサイト

その中で、今回食前舌語は主にメディアアイドルとライブアイドルで、インサイトが大きく異なるのではないかと感じている。

まず、メディアアイドルとの接触点はTVや雑誌などである。
ここで、アイドル対顧客が1:Nであり、そのNが(Twitterなどでの繋がりがあることはあるが)基本的に孤立している。
そのため、メディアアイドルに対し「応援したい」や「癒し」、「憧れ」を求めていく。

そのため、メディアアイドルに顧客が求めるインサイトは「スター性」の一言であり、それを孤独に応援していくことである。

一方で、ライブアイドルとのセッションは日々のライブと特典会である。
ここで、アイドル対顧客が1:Nであることは変わりないが、そのNがSNSだけでなくリアルでつながり、コミュニティを形成している。
そのため、ライブアイドルに対して「応援したい」はもちろんであるが、「現場の良さ」も求められるのである。

そのため、ライブアイドルに顧客が求めるインサイトは「コミュニティ」であり、その中で繋がりを持って応援していくことである、と今回は定義する。

備考
もちろんメディアアイドルにもTwitter上でさまざまな繋がりはある。例えばライブに行く手前でTwitterで仲良くなったり、坂道オタクだと「おはよう」「仕事終わった」のツイートにリプするなどである。
ただ、この時「リアルで高頻度での面会」があるわけではなく、SNS上でのつながりにすぎないため、今回はその点がライブアイドルとの差であると補足する。
また、コミュニティ以外もあるだろ!というご意見はごもっともだが、やはりライブアイドルのよさでもあり課題が、オタク間の横のつながりだと考え、今回はコミュニティを基軸に考察している。

趣味とコミュニティの親和性

まず大前提として、元来人間はコミュニティを求める性質があるといっても良い。
ただ、人間誰しも大学までのタイミングでコミュニティが最大化するものの、その一方で大学入学後、社会人になってからは新しいコミュニティになかなか出会えないものである。
「新しい」コミュニティは、大学・サークル・会社以外ではほぼ生まれることはないし、新しい出会いは意図して作り出さない限りないに等しい。

その中で趣味というのは新しいコミュニティに属する機会を提供してくれる。
もちろん、頻度や参加人数などにより、そのつながりの強度はさまざまである。
例えばスポーツファンであれば、その期間中はある程度の頻度で会場に集まり、共に応援することとなり、強度はかなり高い。
一方で写真など個人でできるものであれば、SNS上の繋がりはあるものの、なかなかリアルで会うハードルも高く、その頻度も少ない。

つまり、地下アイドルが顧客を満たしているインサイトは、ただの恋愛感情の提供といった生半可なものではなく、オタク間の横のつながりによるコミュニティの形成にあると考えられる。

なぜコロナ禍で学生オタクが減少したか

オタクを始めるタイミング

このあたりは感覚値ではあるが、まずライブアイドルを始めるタイミングで、ひとつのボリューム層として「学生」があった。

高校生時代
高校生、部活などがありそこまで自由ない。勉強も必要。
ただ、高卒や、受験勉強を終えたタイミングなど始めるタイミングは多い。
高卒社会人/大学生
高卒で働き始めるとお金の自由が生まれるが、一方で時間はそこまでない。
大学生は逆にアルバイトなどで少し余裕も出てきているが、より時間の自由が生まれる。自分と属性の異なる人が参加する新たなコミュニティの中で、様々な刺激を受ける。
その後(23-25才くらい?)
一律で働き始める。一部で家族を持つ人も増え始め、時間の余裕のなさ、他にやるべきことも増えオタ卒が進む。

この中で、狙うべき新規は「高校生・大学生」とも感じられる。
一方で、このコロナ禍で新規の高校生/大学1-3年生(コロナ禍で大学生になった人)が圧倒的に減少しているのである。

学生とコロナ禍での変化

一方で、コロナ禍で人のつながりがなくなった。
高校も大学も、オンライン授業で友達が減ってきていることは確かである。

(大学内で)次のようなことをする友達は全部で何人くらいいますか
出典:教育新聞「https://www.kyobun.co.jp/news/20220801_02/

とあるアンケートでは、コロナ前後での友達の数はやはり大きく減少してきていることがわかる。
また、こういった友達はどんどん増えていくものであり、単純に時期によって異なるだけではなく、新しい交流が減少していることも指摘できる。

このなかで、私はコロナ禍で新しい出会いがなくなってきた中で、大学生が自分と属性が異なる人も参加する新しいコミュニティに参加するという行動に慣れる機会を失っていると考えている。
そのためライブアイドルに限らず、多様な属性の人が所属する趣味のコミュニティは、大学生に敬遠されてしまっているのではないか、と感じている。

また事実、SNSだけでなくオンラインゲームなど多様な方法で人とオンラインで繋がることは可能になってきた。
例えばAmongUsや荒野行動では、知り合いと会話をしながら楽しむよう設計となっている。
そのため、コロナ以外に技術革新的に「今までの既存コミュニティでの繋がりを強化するツール」が強くなってきており、より一層新しいコミュニティを求めなくなってしまったのではないだろうか。

学生オタクを獲得するために

私は学生オタクを改めて獲得していくために、主に3つ方針をうまく組み合わせていく必要があると考える。

まず第一に、スター性をより一層高めることである。
やはり学生にとって「憧れ」という気持ちは醸成しやすいイメージかと思う一方、金銭面で大きなハードルがある。
そのため、疑似恋愛を元にした顧客単価を上げるための活動ではなく、〇〇を長く応援したいという気持ちをどう作っていくかが重要である。

第二に、ターゲットの悩みに寄り添うことである。
特にこのコロナ禍で学生の悩みは多様に変化しており、それはコミュニティの話だけではなく、将来のこと、今やってることの意味だったりである。
そういったことを、ライブアイドルの楽曲・ステージを通じて背中を押してあげられるかも、学生特有の獲得手段であろう。

最後に、アイドルの存在をターゲットへの単純接触回数を増やすことである。
そもそも何度も当たることで話題感が出る、というのはもちろんだが、ザイオンス効果が指し示すように、複数回情報に当たることで、そのブランドへの好意をあげることにもつながる。
例えばTwitterで「学期末テスト 終わった」「冬休み」など学生らしいワードで広告を回すのも有効度あろう。
また日常の中に刷り込ませたり、何かの学校行事や日々の営みに寄り添えないかを考えることも面白い。
例えば放送委員に限定して、学校へCDを配布し学校放送に流してもらうなどである。

閑話休題

コミュニティって難しい議論だなぁと思いつつ、今年はこの辺りをもう少し深めていけたらと思っています。

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