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#2_3 アイドルにオタクコミュニティを創るには?

#2では「アイドルが人気になるためには」という本当に簡潔で、非常に複雑な課題に対し、マーケティング観点から紐解いていくものである。

#2_2では、アイドルオタクのインサイトをコミュニティー所属というかなり大胆な仮説を設定することで、大学生オタクが新規で流入しないことなどを論じた。

#2_3では#2_2をさらに踏み込み、そのコミュニティ形成をテーマに、そのメリット・手法を論じていきたい。

ファンコミュニティについて

ファンコミュニティの定義

この記事では、ファンコミュニティを主に6つに分けている。

①企業コミュニティ
目的は企業マーケティングである。
企業側のメリットは「顧客ニーズの把握」「ファンと企業の距離を縮める」「迅速なサポート」など。

②ファンコミュニティ
目的はファンとファンとのつながり。
そのつながりから好きなものへの共感を得られる。

③オンラインサロン
目的はノウハウの授受。
カリスマ性のあるサロン運営者と近い距離で接点が設けられるメリットがある。

④ナレッジコミュニティ
目的はノウハウの共有。
Wikipediaのように、参加者で知恵を出し合って構築していく。ライト層の独学をサポートさせるような側面も。

⑤趣味コミュニティ
共通の趣味をもつファン同士が集まって情報交換をしたり創作物を見せ合う場としての役割。
オンライン上だけでなく、オフ会などを通じてオフラインへ展開される関係性も特徴的。

⑥地域コミュニティ
現代的な生活スタイルでは近所の交流がない中で、オンラインでつながることで地域課題を解決したり、問題を共有化でき、地域の活性化を目的とする。

もちろん、アイドルオタクのコミュニティは⑤の趣味コミュニティに当たる。

ファンコミュニティのメリット

ファンコミュニティには大きなメリットがあるが、その中で特徴的なものをいくつか挙げる。

①ファンがファンを呼んでくれる
まず1番の特徴として、「ファンが広告塔として新たな顧客を呼び込む」ことにある。
いいものを教えたくなる、とはまさにこのことだが、特に地下アイドルでは、友達が通ってるから興味が湧くといった逆の現象も多く確認できるだろう。

②LTV・ロイヤリティの向上による解約率の低下
経済心理学の認知バイアスの一つである「保有効果」でも示される通り、人は自分が所有しているものに対して高い価値があると錯誤する。
また、一度手に入れたことで手放すことでの損失(≒サンクコスト)を高く見積もりやめられなくなる「コンコルド効果」などもある。
これらにより、いわゆるやめられない状況が発生し、ある意味で底なし沼にハマったかのようにやめられなくなり、結果として解約率の低下、地下アイドルでは他界しづらい状況が生まれる。

③ライトユーザーのコア化
次の特徴として、その新規のライトユーザーがコミュニティに入ることでコアファンへと成長することである。
特にコア化には「期間の長さ」「顧客単価の高さ」が関わると考えるが、②を原因としてこれらは達成される訳である。
地下アイドルなら、いわゆる「おまいつ」は多くの場合で友達に会いにきていると言ったこともあるだろう。

④ファン同士での問題解決
ここからはコミュニティ形成後の顧客/企業のメリットとなる。
ファンコミュニティ内での課題解決をすることで、企業内での問い合わせオペレーションの負担軽減が可能となる。

⑤ユーザーリサーチ、リサーチインサイトのスピードが早くなる。
コミュニティを自社のプラットフォーム内で確保したり、一つの検索ツールなどで管理できることで、自社分析のための調査を調査会社などを用いずに行うことができる。
無印は自社アプリ内に商品のコメントを記載できる。そのため顧客の各商品に対する意見・感想を即座に確認することができる。

ライブアイドルのコミュニティ形成

ライブアイドルのコミュニティの拡大

ここでは既存のコミュティがある中で、新規オタクが新しくオタクコミュニティに参加する流れを見てみる。

まず地下アイドルオタクで最初に繋がるのは【Twitter】であることが多い。
というのも、アイドルとの出会いと異なり、オタクの投稿は一部のαツイッタラーを除き一般的にRTなどによる拡散が見込まれないため、「おすすめ」といレコメンド機能での接触が出会いとなる。
その点、他のSNSと比較して、TikTokとTwitterはアカウントの興味関心に類似する投稿のおすすめ機能が精度よく、かつコンテンツを大量消化しやすいといえる。
そのなかで生まれるのは最初は「FF外からのいいね」でありそれをきっかけに「Twitterのフォロー」という関係が生まれるのである。

ただ、Twitterは良くも悪くもつながることのハードルは非常に低いものの、その後のつながりを深めることへのハードルはなお高い。
もちろん現地ですぐに会話することもあるだろうが、やはりまずはTwitter内でのコミュニケーションとして「リプ」などがあげられる。

また、Twitterの新機能としての「スペース」もつながりとして非常に有用だと考える。
スペースとは一時期流行ったclubhouseと同様の機能があるものであるが、大きな特徴としてFFが参加しているスペースはタイムラインの上部に表示されることにある。
リアルで話しかける、よりも確実に小さなハードルで同様の趣味を持つ人と会話ができる、という機能は実はファンコミュニティにおいて非常に大きな意味をもたらしたと捉えることもできると考える。

あとは現場で会話する、といったことだったり、最終的に話が合えば飲みに行ったり、LINE交換をしたり、まぁ様々である。

食前舌語も本垢ではフォロワーが500人程度の小さなアカウントであるが、その中で話したことがある人は5割であるし、さらにLINEを知っている人はさらに2-3割まで減少する。

コミュニティを作成するうえで、運営が取り組むべきこと

そもそも運営が能動的にどうこうするものではなく、自然発生的にできるものがファンコミュニティというものである。
その中で、そのようなきっかけを作ることが運営に求められると考える。

①積極的なUGCの創出促進
大前提であるが、人と人とがつながるには、自分の所属(どこのファンだ、など)の発信が必要であり、その点も含めてTwitterの投稿などを含めたUGCをどれだけ多く作れるかがポイントである。
創出とは少し異なるが、コミュニティの盛り上がりもこのUGCの総量で測ることができ、運営やアイドルとしては「メンバーがいいねする」「特典会で投稿内容について触れる」といったUGCのモチベーションをコアファンが維持し続ける仕掛けづくりが必要となる。

②いいねをお互いに生ませるもの
上記の流れの中で、一番最初に出てきたものは「いいね」であり、ここの総量の大きさで以降の大きさが決定する。
(マーケティング的には、最初の層にどれだけいるか×それ以降の層にどれだけ遷移してくれるかで最終のCVの数が決まるわけで、もちろん遷移率を向上させることも重要であるが、まずは最初の層の総数を増やすことが施策効果としてインパクトの大きい施策となる。)
その際、基本的にアイドル対ファン・顧客は1:1の関係がn個存在しているといえるのであるため、運営やアイドル側からの働きかけで相互いいねの数を増やしていく仕掛けづくりも必要となる。。
そのため、先ほど述べた「メンバーがいいねする」ことで○○さんがいいねしましたという形で他の人のタイムラインに流すことができる。
また、「公式のハッシュタグを用意する」ことはエゴサのしやすさにもつながるし、見知らぬアカウントの投稿が自分の好きなグループのファンなのかもわかりやすい。

②交流を生ませること
Twitterでフォローしたうえで交流をさらに持たせるための施策も外せない。ただ、リプについては(個人的にかもしれないですしただの感想ですが)ハードルが高い行為だと考えており。、その点ほかの交流方法を模索する。
まずネット上での交流という点では「アイドル×オタクのスペース」は非常に有効だと考える。
すでに元ハープスターの寺田すずさんなどで実例があるが、特にアイドルが一人ずつスピーカーにオタクを呼び出し、さながら公開の特典会を実施しており、(そもそも寺田さんのトーク力に感服するものがあるのだが)この中で寺田さんのオタクの横のつながりが絶対に創出されているはずである。
※気になる方は#スナック寺田で検索

また、よくUGCキャンペーンなどもあるが、例えば「今日どんな髪型がいい?」ではなく「今日どんな髪型がいい?リプのいいねで一番多いものにする!」といったものなども、ただのいいねとまた違う交流となる。

また、オフラインではど定番の「オフ会」である。

ちょっとこの投稿は古いものであるが、例えばのらりくらりさんでは定期的に、そしてハードルの低いオフ会が実施されている。
オフ会というのは一種のご褒美的な形で提供されることが多いコンテンツだと想像されるが、この内容を見るとお金を払うだけ、そうでなくてもかなり参加ハードルは低いことが見受けられる。
このような仕掛けは、オフ会というメンバー対ファンではなく、ファン対ファンの交流の場所を提供することで、より同グループ内のファンの横のつながりを強固にするための施策だと考えられる。

まとめ

地下アイドルに限らず、ファンコミュニティは放置しても何も始まらず、それぞれのカスタマージャーニーに沿って企業・運営・アイドルがそのコミュニティの盛り上がりを促進させるような「仕掛け」を作ることが必要である。

閑話休題

去年の2月も卒業が相次いだが、今年の2-3月は本当に卒業が多い。
私も自分が通っていたグループで2人、それ以外にも認知をもらっているぐらいのアイドルさんが幾人か卒業された。

去年、私はそこそこ深く通っていたアイドルが卒業したのだが、最後私は何もしてあげられなかった。
何かその心残りがあり続けているのもあり、より一層ここの読者には公開なく卒業を祝ってあげてほしい。

そして、その元推しメンも社畜がんばれ(笑)

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