短編小説 僕の大事な人は隣にいる
他の人はSNSでもフォロワーも多くて、成功しているような人もいっぱいいる。
タワマンに住んだり、それに比べて自分には何もない。
仕事はあってもそれ程収入も多くない。SNSもやっているけど、見る専門で自分から発信することもない。キラキラした人達が羨ましい。
「成功している人達が羨ましいな。金銭的にも余裕があって、チヤホヤされて、自分に一体何の価値があるんだろ。もう分かんないや。」
「どうしたの急に?」
「いやだって仕事をしていても今の僕の職業、給料だったらそんなに多く稼げないし、どうしたって先輩を見て、自分もこうなるのかって見えてくるだろ。そうしたら絶望的に感じてさ。ずっと同じ職業で同じ人間関係で、この先も何十年と過ごすのかと思ってさ、何の希望もありはしない。」
こんなことを恋人に言っても何も変わらない。むしろ自分に対して余計に嫌悪感を抱くだけ。それでも言わずにいられない。
「今はまだね。こうなりたいって希望はあるんだから。」
「まあ少しぐらいはね。でもつい比べてしまうんだよ。年収が高い人だったり、他人の幸せそうな言葉だったり。」
「でもその裏側で苦労している人もいるかもしれないよ。本当に幸せかどうか本当のところは外からは見えないし、その人にも別の不安があるかもしれないよ。」
「別の不安?」
「だって1度得たものを手放したくないでしょ。それより下がることを強く嫌うし、それにその関係が薄い繋がりだったら、それにすがるのもとても危険だと思うの。それよりあなたのことを心から応援してくれたり、大事に思ってくれる人の方がずっと大切なんじゃないかな。」
「つまり自分ということ?」
「まっ、そういうこと。」
「何だよそれ。」
思わず2人で笑い合った。でもここ最近そんな時間なんてなかったな。心に余裕がなかったから、じっくり話し合うこともなかった。こんな時間さえ勿体無く感じていた。何の為に頑張っているのか、よく考えてみれば、将来僕達2人の生活をもっと豊かにしたいから。金銭的なところではなくて、もっと内側から感じられること。内側から込み上げる感情、それが僕らにとっての幸福と呼べることかもしれない。
他人と比較することはある。成功している人達を羨ましく思い、自分を惨めに思うことはあるかもしれない。
それでも成功と幸せは=ではない。
今身近に大切な人がいるなら、その人との時間を大事にして。あなたにとって本当の幸せとは?
最後まで読んで頂いてありがとうございます☺️
藪田建治でした。
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