中途半端なIT化は却って仕事の質を下げる。

私の会社では、今年の大きなテーマとしてDX活用による効率化が設定されています。(効率化と言っているあたりが不気味です)

様々なプロジェクトや組織が作られていて、私も自分の担当である事業計画分野で特命チームに入っています。

それはそれでいいのですが、では、今までどうしていたか?と言えば、もちろん何もやってないわけではありません。例えば、各部署別の経費予算と実績などはイントラネットで見れるようになっていますし、年度計画で作成した標準原価も誰でも閲覧できるようになっています。

そのインターフェースが使いやすいか、と言えば全くそんなことはないのですが、それはいったん横に置いておいて、問題は、「そのようなIT活用によって何が起こったか」です。

もちろん、データが迅速に見れるようになるという嬉しさはあったと思います。でも、それは一部のデータでしかないというのが大きな問題です。

一部のデータをすべてと思い込んでしまう怖さ。

標準原価は私の部署の人であれば誰でも見ることができます。ただ、見る人全員がその標準原価がどのように作られているか理解しているか?といえばそれはNOです。
私の会社の標準原価は予算から作られていますので、つまり「今の実力ではない」ということです。予算を達成して初めて実現する原価であり、非常に厳しい背伸びした目標を振っている状態であればリスクしかありません。
しかし、それを理解せずに、その標準原価で売価の見積を作って顧客に提示する人がいます。その原価は放っておいても実現すると思っているからです。

もちろん、標準原価とは何物かを周知するのは大事です。でも、周知したところで、「じゃあ実力はどうなの?」と思うのが普通かと思います。

ここで見える問題は、「情報が揃っていないから、情報を選ぶことができない」、つまり「限られた情報で仕事をしてしまう」ということです。

先ほど述べた標準原価を閲覧するシステムは私が入社したころにできたようなので、20年近く前のものです。聞くところによると、財務中心に構築したシステムだったようで、財務にとって標準原価は資産評価にも使う重要なものですから気合を入れて作ったのでしょう。でも、それだけしかないんです。

たとえば、予算だけでなく実績も情報として取れると分かれば、自分が今すべきことを考えたときにどちらのデータを使うべきか自分で考えることができるでしょう。でも、どちらかしか持っていないからそれで無理に決断しようとしてしまう。

私にとって、DXの大きな価値は、「情報にアクセスできるようになること」です。仕事をRPA化などして負荷を減らすのも大事でしょう。でもそれは今の仕事に対する手当です。
これから世の中どうなるかわかりません。その時に、会社にある情報にたどり着くことに時間をかけていては何も決断できません

情報はすべてにアクセスできて初めて意味がある。

DXを検討するときに、限られた業務でチームを作ってしまうと、その仕事を是として進めてしまいます。これからは仕事自体が不要になることも、新しい仕事を増やすことも必要になるはず。
そう思うと、まずは仕事の枠組みを取っ払って、会社にある情報にアプローチできるインフラを整えること。そしてそれが陳腐化せずに、常にフレッシュな情報になる仕組みを構築すること。
それによって、はじめて情報を使って決断する、というAIではなく人間にしかない付加価値を出すことができると思います。

DX、となると、とにかく目の前にある業務をホイホイITツールに投げ込んでいくことを考える人がいます。でも、我々がこれから仕事の質を上げるためには、「中途半端にしない」ということが大事です。情報を見えるようにするなら、一部ではなく徹底的に全部の情報にアクセスできるようにする。
DX化しようとしている業務や情報はしっかりと全網羅できているかのチェックと議論に時間をかけるべきです。半端なことをしたら却って仕事の質は下がります。

いま、ツールはいっぱいあります。専門家の方がいるので、イメージさえ伝えられれば、大概は形にしてくれるでしょう。
私たち現場で仕事をしている人間が、如何に業務や事業の全貌をイメージし、情報を網羅できているか。そこに全力を傾けていきたいと思っています。


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