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安倍元首相銃撃事件

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共同通信の記者がこれまでに書いた安倍元首相銃撃事件に関するnoteをまとめています。
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記事一覧

【47エディターズ】別れと始まりの3月から「今」読んでほしい記事を紹介します

共同通信では、注目ニュースの背景や、知られていなかった秘話、身の回りの素朴な疑問などを深掘りしたインターネット向けの記事「47リポーターズ」を随時配信しています。 当コーナー【47エディターズ】では、現場の記者が書いた記事の最初の読者であり、その狙いや内容を精査し、時に議論を交わして編集を重ねたデスクが、3月に出した47リポーターズ計19本を2回に分けてご紹介します。 ■ 犯罪を繰り返した58歳の知的障害者が「ぼく、やっぱり戻りたい」と語る支援施設 近隣は反対、行政は圧力

安倍元首相の事件を目撃した記者が旧統一教会の問題に感じた違和感の正体

8月31日の夕方のことだった。 国民民主党の玉木雄一郎代表が奈良市に来て、近鉄奈良駅前で街頭演説をするというので、僕はその日の作業をあらかた片付けてから取材に向かった。 駅前に着いた時にはもう演説の準備ができていて、仕事帰りと思われるワイシャツ姿の人たちが50人ほど集まっていた。しばらくすると近くに1台の車が止まり、中から玉木さんが降りてきた。拍手が起き、通りがかった人も目をやる。僕はリュックからデジカメとボイスレコーダーを取り出して取材を始めた。 マイクを握った玉木さ

“脱会支援”35年の牧師が語った言葉に込められた思い

こんにちは。大阪社会部の助川尭史です。 安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけにクローズアップされるようになった世界平和統一家庭連合、いわゆる旧統一教会。政治との関わりだけでなく、高額献金によって生活が破綻した信者や、その影響で命を落とした家族など、深刻な被害が連日報道されています。 でも、安倍元首相の事件が起きるまでは、旧統一教会がどんな団体で、今までどんな被害があったのか、知らなかった人も多いのではないでしょうか。私自身もその1人です。 「名前は知っているけれど、何をし

『よく分からない』 宗教への遠慮で踏み込めなかった私たち

安倍晋三元首相が銃撃された事件から、1週間もたたない頃でしょうか。 ツイッターで「フランスではカルトの定義として10の基準を定め、カルトを取り締まっている」という趣旨のツイートを目にしました。 ちょうど事件の重要な背景事情として、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の存在がクローズアップされ、宗教の問題をめぐる議論の渦が大きくなり始めていた時期です。 私はこのツイートを見て、ふと2018年にオウム真理教の幹部らの死刑が執行された時に感じた疑問を思い出しました。 オウム真

歴史にみる国葬の危うさ、国民の分断を招きながら突き進む政府への違和感

みなさんは9月27日の午後2時過ぎ、何をしていましたか? 私は大阪で安倍晋三元首相の国葬のテレビ中継を見ていました。 直前の報道各社の世論調査では賛否が分かれ、当日も会場となった日本武道館の外では数千人が献花に並ぶ一方、国葬に反対する人たちはデモをしていました。 そんな中でも葬儀自体は厳かに進み、菅義偉元首相が友人代表として感動的な弔辞を読み上げ、メディアはこぞってその内容を取り上げました。 岸田文雄首相が後に語ったように「やって良かった」と思う人も大勢いると思います

あの日から、私たちが書いてきたこと

7月8日に奈良市で起きた、安倍晋三元首相銃撃事件。発生からまもなく3ヶ月となります。 山上徹也容疑者は手製の銃で2回発砲し、最も権力のある政治家の一人がこの世を去りました。事件の動機として「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」への恨みがあったことが分かり、宗教が原因で家族が離散したという容疑者の生い立ちにも注目が集まりました。 一人の命が奪われたという事実の重み、「政治と宗教」の問題、新興宗教を信仰する親を持つ「宗教2世」の苦しみ、世論を二分したまま営まれた「国葬」―。