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しゃべらないんじゃないんです。しゃべれないんです。場面緘黙を語る。

休日はパソコンをもって、
カフェめぐりをします♪

先日、池を見渡しながら、
自然に囲まれて落ち着けるカフェを発見。

こりゃ、ここから常連だな笑


共育LIBRARYへようこそおいでくださいました✨

教育、人間、人生など、様々な「知恵」や「情報」が詰まった図書館のような、皆さんがくつろぎ、人生の「気付き」を得たり、知的好奇心を満たしたりできる居場所を目指しています😌

どうぞ、ごゆるりとお過ごしください。

共育LIBRARYりょーやん、元教師です。


家ではおしゃべりなのだが、
学校ではほとんどしゃべれなくなってしまう
話しかけられても、身体が硬直してしまう

そんな子どもがいることを知っていますか。

上記のような特徴が見られる場合は、
場面緘黙かもしれません。

場面緘黙は、
そこまで珍しい症状ではありません。

症状のレベルにもよりますが、
1学年に1人ぐらいいるイメージです。

筆者は、場面緘黙の子どもを、
おそらく5人程度担任したことがあります。

おそらくというのは、
かなり教師として駆け出しの頃に会っているので、思い返してみれば場面緘黙である疑いがあるというレベルであるため、そう表現しています。

ある年には、1クラスに3人
場面緘黙の子どもがいました。

ただ場面緘黙といっても、
その症状は人によって全然段階が違い、
他の要素と複雑に絡み合っているため、
非常に判断が難しい場合があります。

そこで、
この記事では、

・場面緘黙とは何なのか?
・神経発達症とはどのような関連性があるのか?
・具体的なアプローチは?

といった点から、
解説をすることができればと思います。

ぜひ、周囲の人間理解のためにも、
ご覧いただければと思います。


場面緘黙の定義と区分

アメリカの精神医学会が出しているDSM-5の中では、

場面緘黙という症状を以下のように定義しています。

▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

①話すことが期待されている社会的状況において一貫して話すことができない

②その障害が、学業上、職業上の成績、または対人コミュニケーションを妨げている

③上記のような状態が1ヵ月以上続く

▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

要するに、
一定の場所においてのみ、
一貫して話すことができない
という症状です。

この場面緘黙の区分は少し複雑。
それは法律上の関係があるためです。

障害者差別解消法という法律の中には、
場面緘黙は、発達障害(神経発達症)と同じ区分として扱われ、法律上合理的配慮を受けることができるものと明記しています。

合理的配慮を受けることができるのは大切なので、これはOK。

一方、医学上は、
精神疾患のカテゴリーである、
不安症の一種として扱われている
のです。

これは、
神経発達症とは明確な違いがあります。

不安症、精神疾患ということは、
治療によって改善できるということです。

では、場面緘黙がそもそもなぜ発生するのかを見ていきます。


場面緘黙の発症となる要素

場面緘黙を発症する、
最も根底となる要素としてあげられているのが、

「行動抑制的気質」

です。

人間には、生まれつき、
脳の偏桃体の危険信号が、
赤になりやすい人が10人に1人いる
と言われています。

この危険信号が赤になると、
逃避行動を起こすようになる。

場面緘黙の子どもが、
学校にいることを表す言葉としてよく使われるのが、

「1日中舞台の上に立たされているような状態」

というものです。

何もしていなくても、
舞台の上の状態なので、
人と会話して注目されるだけでも、
舞台以上の緊張感を感じます

ましては、
クラスの前に何かを発表するなど、
1000人の前で演説をするようなレベルなのかもしれません。

その強大な不安へ対処するために、
緘黙という手段を使う
黙っていると一時的に不安が緩和されるから。

その対処法が習慣化してしまうと、
場面緘黙という状態になるという要素があります。

ただ、それだけではありません。

場面緘黙は、1~2%程度いると言われ、
その内の74%の緘黙児に、
社会不安、分離不安などの不安障害がある
というデータがあります。

排泄障害を併発しているのは、32%。

ASDの合併率は、
グレーゾーンの状態の子どもを合わせると、
約80%と言われています。

つまり、8割の場面緘黙の子どもは、
ASDをもっているということです。

ということは、

「言語・身体」

の問題があるということ。

ASDは、主に、
言語の弱さや身体の弱さが、
特徴的な症状の1つとしてあげられているから。

先にあげた

「行動抑制的気質」

に加え、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■ 身体運動の問題
■ 言語の問題
■ 感覚過敏の問題
■ 情緒の想像の問題

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

などが複雑に絡み合っているということです。

他にも、
移民やバイリンガルの子どもが、
場面緘黙にもなりやすい
と言われています。

自分以外が他言語を使っている環境に、
いきなり投げ込まれたら、
誰だって不安になり、
しゃべられずに黙ってしまいますよね。

そのことがきっかけとなり、
しゃべれない状態が続くのだそうです。


早期介入が命

場面緘黙は早期介入が命です。

場面緘黙になってから、
すぐに対処をした場合は、
かなり早い段階で、
緘黙では状態に戻ることができます

逆に、8~9歳になっても、
学校で話すことができていない子どもは、
高校生か、高校卒業まで症状を引きずることが非常に多いことが分かっています。

ただ、なぜか、
高校生か、高校卒業後は、
緘黙ではなくなることが多いそうです。

しかし、
それは放っておけば治る、
ということでは決してありません。

話すという経験が、
圧倒的に積み上がってきていないのですから、
少し話すだけでも一苦労。

うつになってしまったり、
コミュニケーションに不安を抱えてしまったりと、かなりの心理的負荷を負って社会で戦わなければならないことになります。

思春期になると、
うつ、不登校、学業不振といった状態を引き起こすことが多いので、なるべく早期に対応した方がよいのです。

場面緘黙児の中で不登校になる割合は、
小学生であれば17倍、
中学生であれば7倍
とされており、

小3以前に不登校だった緘黙児は、
早期介入によって9割が改善し、
登校するようになっている。

緘黙児の中で、
小4以降に不登校になった場合は、
なかなか復帰は難しくなるということも分かっているのです。


アセスメント

場面緘黙の子どもにアプローチするには、
アセスメントをすることが非常に重要です。

大きくは、

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■ 人
■ 場所

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

という二つの要素の中で、
誰とならしゃべれるのか、
どこでならしゃべれるのかを、
一覧表にしてまとめます。

例えば、以下のような表です。

そして、

安心して話せる人
安心して話せる場所

を軸にして、
そこからスモールステップで、
少しずつ慣らしていくという手順を踏みます。


支援の原則

このスモールステップの組み立て方を、
例をあげて説明します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◆小学校の低学年へのアプローチのいち例◆

①母親に教師が電話をし、声を近くで聞かせる
②家庭訪問をし、子どもと母親と3人で遊ぶ
(この事例ではここでは会話あり)
③教師とお手紙交換で、
 コミュニケーションをする取り組みを始める
④教師訪問+子ども+友人+母親で遊ぶ
⑤糸電話で教師と会話+友達とも会話
⑥夏休み中に近所の友達とたくさん遊ぶ
⑦放課後に学校のパソコンルームで母親と遊ぶ
⑧パソコンルームに先生が入ってくる
⑨別日にパソコンルームに友人が入ってくる
⑩また別日に先生がきて途中で母親が抜ける
⑪⑦~⑩のことを教室で繰り返す

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

上記のような手順の支援です。

必要な視点は3つの軸のスモールステップ。

▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

■ 人
■ 場所
■ コミュニケーション手段

▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢

細かくみてみます。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【人のスモールステップ】
・母親と一緒
・母親+先生
・母親+先生+友人
・先生(母親途中で抜ける)
・先生+友人
・先生+友人複数


【場所のスモールステップ】
・家
・家の近く
・学校の敷地内(放課後)
・校舎の中(放課後)
・人があまりいない特別教室(放課後)
・教室(放課後)
・放課後ではない学校で上記を繰り返す


【コミュニケーション手段】
・言語を介さない遊び
・単調な言語を介す遊び
・手紙
・チャット
・電話
・オンライン授業
・糸電話
・直接の会話

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

これらの3つの軸となるスモールステップを、
本人のアセスメントした状態にカスタマイズして、組み立てていきます

ちなみに夏休み期間中や、
休日の学校という手段もあります。

このような場合は、
教員は管理職に相談をして、
教員が校舎内にいる状態で、
休日にその家族を校舎内に招き入れます。

筆者もスモールステップを行おうと思ったのですが、
本人が、

「多少話したい気持ちはあるがそういった取り組みを行いたくはない」

といった状態で、
実行はできませんでした。

小学3年生でしたし、
友達とも楽しく遊んでいたので、
それほど本人も困り感がなかったのかもしれません。

このように、

「本人が現状維持でもいい」

となってしまうからこそ、
早期介入が大事なのだと思います。

場面緘黙の子どもは、
上記のような行動の変化を促す支援と、
情緒の支援が必要です。

「褒める」

ことは場面緘黙の子どもにとっては、
注目される行為となり、
プレッシャーになりかねません

集団に紛れて褒めたり、
1対1のときにこっそり褒めたり、
ノンバーバルでグッドとサインを送ったりという、

ソフトなインパクトのフィードバックを行う。

「話せたね!」

といった褒めはプレッシャーとなり、
逆効果となるので、

「がんばっているのがうれしい」

という過程にフォーカス+Iメッセージ(感情を伝える)ぐらいのバランスが、丁度いいかもしれませんね。


まとめ

筆者が受けもった場面緘黙の子どもの中に、
ASDの特性がかなり強い子がいました。

その子は、1年生の時に、同じクラスの男子から、

「話し方が変」

といったことを言われ、
それ以来一言も学校で言葉を発することができなくなりました

ただ、人と関わりたいと言う気持ちはある子だったので、毎日鬼ごっこや鉄棒に誘ったり、一緒に遊ぶ中で友人関係を結んだりしていく中で、仲のよいグループができました。

すると、突然しゃべり出すようになった

「安心できる環境」
「話したいという気持ち」

が両方揃ったのかもしれません。

他にも、
転校して突然話せるようになる子もいるそうです。

誰も知り合いがいない方が、

「今まで話したことがなかったのに突然話した!」

と注目を集めることがないので、
話しやすいのです。

小学校高学年になると、自分で、

「中学から他の学校に行けば話せるようになる気がする」

と分かるようになる子もいるそう。

かつての同僚にも、
場面緘黙だったという人もいます。

教室で、やんちゃ男子を相手に、
ビシバシ指導していました笑

ただ、夏休みのような長期休暇の場合は、

「学校が始まる1週間ぐらい前から毎日吐く」

と言っていたように、
不安が強い部分はありそうでしたが。

今は普通に話すことができている人も、
実は昔は・・・ということもあり得ます。

このような特徴を経て大人になっている人もいると考えれば、今よりもさらに多様性の視点は広がるのではないでしょうか。

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明日の記事は、

📓名前で性格が変わる??眠れないほど面白い日本語の語感のヒミツ

です。

名前を聞けば、
大体どんな性格をしているかが分かる。
そう言われたら、
あなたは信じますか。
しかし、これはある程度は本当で、
日本語は、わたしたちが思っているよりも、
ずっと深淵な力を秘めている言葉なのです。

是非、楽しみにしていてください🎵

皆さんの今日・明日がよき1日でありますように😊


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