この政策は、喜ぶべきか、憂うべきか。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0500ee37bee452910810f01340bb506a954f0ea5?fbclid=IwAR2TCUJ1-z-KmMoYt-f01pspD2QIvjEMgPnftzLTFlj1gag2UD9hPryPcY8_aem_ASm2LZ_PfJPBnRdH2bBwnxadg-CbSrMnM6faQQHwpoVaOt9C5kAubN3E6vL-PqKlWBk

「働き方改革」と称して打ち出されているこちらの政策ですが、この動きは、本当に手放しで喜ぶべき政策でしょうか。
今回は、そんなことについて考えてみようと思います。

こちらの政策では、まず、文科省が授業時間総数を点検するとされています。
文科省が授業時間総数を点検するということは、学校が文科省にとって好ましいとされる授業時数を報告するという義務を課せられるということだといえるように思います。
それは、つまり、①教員の労働条件を改善するためという名目でもって授業時数をカウントして報告するという義務が正当化されることであるし、②もし授業時数が文科省の好ましいとする時数と合わなかった場合は帳尻を合わせるという余計なタスクを負わされるということでもあります。

また、政策の内容面においても、授業計画に慣れていない教員にとって、余剰時数が減るということは、決められた時間の中で何がなんでも決められた内容を子どもに身につけさせなければいけないというプレッシャーが増すという側面があるということを考慮に入れなければいけないように思います。
それは、教員にとっても、子どもにとっても、しんどい状況を生み出す可能性があるように思います。
「それはその教員の授業計画の力不足だから教員の側の問題だ」と言われればそれまでですが、私からすれば、学習指導要領に法的拘束力を持たせ(1958年の学習指導要領の告示化)、授業内容を扱うことよりも子どもが学習内容を身につけているということを重視(2017年[平成29年]の学習指導要領改訂)した状態で、余剰時数を減らすというのは、「国家が決めた内容を限られた時間の中で過不足なく行いその教育効果を実現するのが学校教育の役割だ」と言われているに等しいように感じます。

家庭訪問や朝早くから開門する習慣の撤廃も言われています。
たしかに、それらは、教員の側から見れば「働き方改革」ということになりますが、必ずしも、メリットばかりのものとは言えないように思います。
たらいの水とともに赤子を流すことになりはしないでしょうか。

何よりも問題なのは、文科省が国からの提言としてこの政策をおろしてきていることであるように思います。
それぞれの地域や家庭の実態があり、それによって、学校の担うべき役割は大きく変わるはずであるのに、すべからく、同じ方策で一括に「働き方改革」を進めるべきとしている点において、この「働き方改革」の政策は、マイノリティの地域や家庭を置き去りにする政策であるように思います。

では、誰にとっても「働き方改革」になる政策があるとしたら、それはどのような政策でしょうか。
たとえば、教育予算を増やして、①授業を実施する教員の数を増やしたり(それによって、一人当たりの授業時数を減らしたり)、②学校を増設して一つ一つの学校がよりきめ細かく子どもをみることができるようにしたりという、そういう政策が考えられます。

しかし、教育の予算を増やすことができるかどうかは、他の省庁とのパワーバランスによって決まるところもあるので(そのパワーバランスを変えていかなければいけないというのも、とても重要な課題ですが)、ひとまず、ここではその部分には触れないとしましょう。
その場合、予算を増やさずにできる「働き方改革」には、どのようなものがあるでしょうか。

私は、一番有効なのは、上意下達の管理体制の弱化ではないかと思います。
管理体制の強化は、説明責任を果たすための書類作成という余計な業務を生み出します。
まずは、不要な管理をやめ、不要な書類作成の業務を削減するべきだと考えます。
指導要録の廃止、自己申告書作成の廃止、週案の廃止、時数報告の廃止、研修報告書の廃止、キャリアパスポートの廃止、通知表の廃止(または形式変更)、旅行命令簿の廃止(または簡略化)、学校グランドデザイン作成の廃止(または簡略化)などがあげられるでしょう。

それでも業務過多になるのであれば、指導内容の削減、行事の精選といったことに手を出さざるを得ないのではないかと思います。

こうしたことを実現するためには、それを各学校や教員がそれぞれの実態に応じて自律的に決定できるように、学習指導要領の告示を例示(試案と同じ。)とする、足並みを揃えることを強いる校長会の改善、教員一人一人が目の前の子どもにとって有意義だと思う教育内容を実施できるようにするための教員の裁量権の拡大などが必要になってくるのではないかと思います。

私はこのように思いますが、皆さんはいかがでしょうか。
よろしければ、是非、皆さんのお考えをお聴かせください。

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