『悪女について』有吉佐和子
同僚Aさんに「色々やってきてるね」、Bさんに「ピュアだね」と言われたことがある。同じ人間と同じ環境で接しても、人によって印象は異なる。
この本は謎の死を遂げた美貌の実業家 富小路公子についての、27名の関係者へのインタビューで構成される。関わりのあった男たち、血族、使用人などなど。彼女のことを、ある人は「あんなに心が綺麗な人はいない」と言い、ある人は「殺されて当然」と言う。果たして彼女はどういう人なのか？読みながら自分なりにプロファイルしていく。
彼女について私が思うのは、自分の信念（お金とか成功とか？）に忠実だったのだろうということ。迷いなく（おそらく）人を利用できるようだから、今でいうサイコパスみたいな人なんだろう。自分の近くにいなくてよかった。私だったら、人の目を気にするし、考えがこんなに及ばないし、そこまで優先順位がはっきりしていないから、彼女のように豪胆にはなれない。ちょっとだけ羨ましい。
社会人になったときに、職場で人の評価がばらばらで、その人がいい人なのか悪い人なのかはっきりしてほしい、と思ったことがある。結局わかったのは自分で決めるしかないということだったのだけど。ミステリーを楽しむというより、そんなことをしみじみ考えてしまった。
77.『悪女について』有吉佐和子
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