日曜日の朝、肉屋へ。

昨日の夜、ぼんやりと献立を考えた。

月曜日から下宿人くんが一週間、ドイツへ。
サッカー観戦の旅なのだって。

二泊六日。
つまりほとんどバスか電車泊。若いわ。

なに作ろうかなあ。
あ!そういえばまだ豚の角煮、作ってないな。

というわけで
日曜日の朝、肉屋へ出かける。

いつも並んでいる肉屋だが今朝はそうでもない。
時間は九時過ぎ。

わたしの前のおそらくアフリカ系のマダムが
爆買い中。
クルマ付きのキャリーバッグを満杯にする気でいるらしい。

鳥三羽、ぶつ切り。
鳥の胸肉、薄切りにして。
牛、ステーキ用に。
ひき肉。

その買いっぷりは後ろで見てて気持ちのいいくらいだが
足先は冷えてくるし手も冷たくなってくる。

壁に営業時間が貼ってある。
火〜金は6:30〜19:00 ノンストップ
日は6:30〜12:30
定休日は月

六時半、って!

さてようやくわたしの番。

「(豚バラ肉、この塊、どのくらいあります?)」

秤にかけると一キロちょい。
もう少し、お鍋に入りそうだな。

「(それ、二つに切ってもらえますか)」

鍋に入りやすい大きさに切ってもらう。
最初、ムッシュー、縦に切ろうとするのを制して横向きに切ってもらう。

「(もう一つの塊の半分を足したいんですけど)」

そうしたら1・5キロ。作り慣れている量になる。

今度は横には切れないという。
残った半分が売り物にならないからと。

しょうがないのでこっちは縦長。
煮た後にスライスするからどうでもいいか。

「(お会計番号、51だよ)」

ムッシューがわたしのところへ言いに来てれる。
「(ありがとうございます。いい日曜日を)」

向かい側に八百屋が出ていた。

珍しく大根がある。
一緒に煮たらいいかも。

ぐるりと二周したがネギがない。
聞いてみると昨日よく売れて売り切れなのだという。
小さめのネギを代わりに買う。

料理用の酒がない。
白ワインくらい、入れた方がいいよなきっと。

小さなカルフールがある。
ここですませてしまおう。

入ると本当に小さい。
「(料理用の安い白ワイン、あります?)」

お店のムッシューに尋ねると
「(奥の、二番目の店舗にありますよ)」

奥の、二番目の、店舗?
言われるままに歩を進めると確かにもうひとつ、お店がつながってる。

いちばん下の棚に、一目でそれとわかる白ワインを発見。
250mlの六本つづり。

こんなにいらないんだけどなー。
そう思いつつ、これならでも毎回使い切りでいいかもと思い直す。

それを持ってレジへ。
さっきのムッシュー、
「(これ、バラ売りできますよ)」

「(?!?!)」

「(そうなんですか?だとしたら助かります)」
「(同僚が、時間がなくてバラしてなかったんですよ、これ)」

「(だいたい、ほとんど人は何も言わずにばらしちゃうんですけどね)」

そうか。バラしていいものだったんだ。思いつかなかった。
なんか、お行儀のいいのをほめられた子どものような気分になる。

「(いい日曜日を!)」

お互いに言い合い、お店を出る。

六本入りのワイン、黙って売ればいいものを
わざわざバラ売りしてくれたムッシューのやさしさがじんわりとしみる。

笑ったら涙が出てきた。
正直に生きようと思う。


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