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京都大学学術出版会 月間ニュース No.6 (2024年3月)

いつもご愛読ありがとうございます。
2024年2月〜3月の新刊、イベント情報をまとめてお届けします。どうぞよろしくお願いいたします。


・概要


新刊10冊、近刊8冊をご案内いたします。動画は2本更新しました。

・新刊案内


『アエタ 灰の中の未来:大噴火と創造的復興の写真民族誌』

1991年、フィリピン・ルソン島のピナトゥボ山が20世紀最大の大噴火を起こし、その山麓奥深くに暮らしてきた先住民アエタ族は甚大な被害を受けた。70年代からアエタの調査を続けた著者はその大噴火に遭遇し、否応なく彼らの苦難に巻き込まれていく。人類学者としてNGOのワーカーとしてアエタと伴走する中で、著者は先住民の強靱な復興力を目の当たりにする。移動焼畑と狩猟採集で培われた柔軟な生業多様性を活かしたアエタは、国や世界をも動かしながら「新しい人間、新しい社会になった」と呼ぶべき創造的復興を遂げたのである。「コミットする人類学」の実践で学士院賞に輝いた著者が、40年にわたって参与したダイナミックな民族誌を多数の貴重な写真で報告する。

『アンチ・ドムス:熱帯雨林のマルチスピーシーズ歴史生態学』

私たちは飼い慣らし、飼い慣らされて生きている——そのドムスから逃れよ!と、彼らは誘いかける。人間と動植物が集住する空間・ドムス(domus)から逃れつづける狩猟採集民。一つの食物に依存せず、一つの生業の固執せず、多種多様な生物たちとかかわりあいながら、森と〈共生成〉しつづける。その〈生き方〉が文化と自然の境界を融かしていく。コンゴ盆地・カメルーンの森でバカ・ピグミーとともにくらしながら、彼らの〈生き方〉と森の〈歴史〉を記述した。シリーズ『生態人類学は挑む』最終巻。

『INDIGENOUS PEOPLES AND FORESTS』

富裕層のスポーツハンティングが許される一方で,地域住民の生活のための狩猟が規制される――。地球大気や生物多様性の保全のために住民が犠牲になるアフリカ熱帯雨林の現状は,外部主導の自然保護が抱える課題を浮き彫りにする。人と自然の共存世界の在り方を問う一冊。第36回大同生命地域研究賞受賞研究。

『哲學研究 第六百十一號』

トマス・アクィナスの《モドゥス》 研究 (三)
―《モドゥス》の意味論的側面 ―
[周藤多紀]

若き西田幾多郎の生の倫理
―新資料「倫理学講義ノート」におけるギュイヨー受容―
[中嶋優太]

「高邁なる者」の形而上学的基礎
―デカルトにおける書簡の道徳と『情念論』の道徳―
[三上航志]

『作田啓一 生成の社会学』

戦後日本の社会学を牽引した作田啓一。彼は人間の非合理性/リアルを語り得る「もう一つの社会学」を求めた。バーチャルとの区別が失われた世界に必要なのは、生きている実感を深部で把握して分析しうる〈最深の理論〉である。文学から社会学は何を学びうるのか? 価値の生成、羞恥の連帯、溶解体験、〈リアル〉とは何か? エゴの相克と分断を超える契機はどこにあるのか?〈超近代〉の展望をひらく希望の思考。

『変動帯の文化地質学』

すべては,地質の上に成る——。地震や火山などの災害と隣り合わせで生きる日本人にとって,地質は自然環境の基盤としてのみならず精神文化の基盤としても相即不離な存在である。環状列石や城郭石垣の材料として,仏教や自然崇拝の信仰の対象として,文学の題材として,観光・教育のテーマとして,様々な形で日本人の精神文化を築いてきた石の文化を,地質学の視点で描き出す。

『自己否定する主体』

朝鮮を含む帝国日本の思潮を総合的に描く。自己否定する主体という視点から、哲学・文芸批評・文学を読み解き、ポストコロニアリズムの理解からもれた日本・朝鮮の思想的関係を問う。

『統治されない技法:太湖に浮かぶ〈梁山泊〉』

中国の太湖周辺に存在するもうひとつのゾミア——「網船鬼」と呼ばれ蔑視された歴史をもつ「統治しがたい人びと」。歴史から漏れた漁民たちの生活実態を現地調査によって探りながら、新たな地域社会論の構築を目指す。

『「私と汝」の教育人間学:西田哲学への往還』

ポストモダンの行先が模索されるなか、出来事の個別性・一回性を重視する分野として注目される教育人間学。その源流は西田幾多郎の哲学にあった。〈自覚の始まり〉をめぐる西田の「私と汝」の思想を介して、戦前と戦後、哲学と教育学の境を越えた対話と応答を再現。緻密な文献考証に基づき教育人間学の理論的な再構築を行う冒険的試み。

『昆虫の休眠』

昆虫は休眠を生活史に組み入れることで,生存に不利な季節をやり過ごし,地球上のあらゆる大陸に進出することができた.昆虫は季節をどのように検知し,それをどう利用して休眠に入り,そしてそれを終了させるのか? 気候変動の影響はあるのか? 保全や害虫管理への応用の可能性は? 分子メカニズムから生態,進化まで,多彩な視点と絡め休眠を包括的に論じる渾身の大著.

・近刊予告


『医師の「献身」:ポーランド建国と草の根知識人 1890-1920』
福元 健之 (4月上旬発売予定)

『田辺 元 社会的現実と救済の哲学』
浦井 聡 (4月上旬発売予定)

『ローマ帝国を生きるギリシア都市:小アジアにおける文化・経済のダイナミクス』
増永 理考 (4月上旬発売予定)

『三蘇蜀学の研究:北宋士大夫による儒家経典解釈の展開』
陳 佑真 (4月上旬発売予定)

『レジリエンスは動詞である:アフリカ遊牧社会からの関係/脈絡論アプローチ』
湖中 真哉、グレタ・センプリチェ、ピーター・D・リトル 編著 (4月上旬発売予定)

『語りの場からの学問創成:当事者,ケア,コミュニティ』
嶺重 慎・熊谷 晋一郎・村田 淳・安井 絢子 編/京都大学学生総合支援機構 協力 (4月上旬発売予定)

『海を越える水産知:近代東アジア海域世界を創った人びと』
楊 峻懿 (4月上旬発売予定)

『春秋戦国時代の青銅器と鏡:生産・流通の変容と工人の系譜』
石谷 慎 (4月上旬発売予定)

・今月の一冊


『先輩、研究ってどうやるんですか』

初めて研究をすることになったとき、皆さんはどうする/したでしょうか。先生や先輩に話を聞いたり、本やインターネットで情報を集めたりする人も多いでしょう。でも、どれだけ情報を集めても、それだけでスムーズに研究が進められることはまずありません。研究を進める過程で直面する課題は百人百様。どのテーマにも当てはまる表面的な解説だけでは個別具体的な課題をカバーすることは到底できないからです。それでは、「研究する力」は、実際に自分のテーマを持って進めることによってしか体得できないのでしょうか。はじめての研究に先立って、基本的な流れや思考のトレーニングができる、そんな実践力を養う自習書ができないものか――。

本書は、高等学校や大学で教鞭をとる現役理科教員の、こんな問題意識から企画されました。本書の軸となるのが、“研究サークルに入部した1年生が先輩と一緒にはじめての研究に挑む”という架空のストーリー。これにより、“はじめての研究”を自分ごととして疑似体験しながら研究のステップを順番に学べるように しています。また、ステップごとに例題と練習問題を設け、実際の研究場面を想定した課題解決の練習ができるようになっています。すべての問題に対して解答例と解説も完備。学生さんが一人でも学べる自習書の形にこだわりました。

「習うより慣れよ」の従来型研究教育に一石を投じる画期的な研究ガイド。これから初めての研究に挑む高校生・大学生はもちろん、研究指導にあたる教員の方にもお薦めの一冊です。

・SNS/イベント情報


◉#春から京大 キャンペーン 実施中!

下記リンクよりご応募いただけます⇩⇩
https://twitter.com/KyotoUP/status/1767390054782222526

◉YouTube動画更新
 下記、それぞれのリンクよりご視聴ください。
[天]第4回②アポロンの蛇退治(おこしやす! 西洋古典叢書)
[天]第4回③デルポイの神託【手順編】(おこしやす! 西洋古典叢書)

◉書店フェア 開催中
『西洋古典名言名句集』刊行記念フェアを各地で開催中です。詳細な開催情報はこちら


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京都大学学術出版会 月間ニュース No.6
2024年3月13日 配信
(毎月 第3水曜日 配信予定)
発行:一般社団法人京都大学学術出版会
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