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秋臣が縁側で涼んでいると、寿美子と叶人が手をつないで入ってきた。 それまでシンと静かだ…
第九章 「先輩、本当に申し訳ありません!」 犬養がこんなにもしおれている姿を見たのは…
第八章 「どうしてもお墓参りがしたいの」 猛暑の中、突然言い出した母の気持ちが秋臣には…
マグカップの中の琥珀色の液体に、口をすぼめて息を吹きかける叶人の横顔はどこか浮かない顔…
家に帰る犬養の車を見送りに門の外に出ると、叶人は少し離れたところに所在なさそうに立って…
処置が早かったため、犬養がクラゲに刺された箇所は赤い腫れが少し残っただけですんだ。夕食…
夕食のテーブルでLINEの着信音が鳴った。 秋臣は車エビの天ぷらをだし汁につけたままスマホの画面に見入った。 「お父さん、どうしたの?」 だし汁を吸ってくにゃりとなったエビをちらりと見て叶人が訊いた。 「え? ああ……明日会社の後輩が遊びに来たいって言ってるんだけど」 秋臣は頭の中で断る理由を探していた。 「後輩って、犬養さん?」 寿美子が弾んだ声で訊いた。 「うん。そう」 「大学の後輩で、とってもいい子だって言ってたわよね。土曜日だから泊まってもらえばいいじゃない
車の中で叶人は一言も言葉を発しなかった。眠っているのかずっと目を閉じたままだ。 家か…
「今日は稽古だから出かける」 朝、出勤する秋臣とすれ違いざまに叶人がささやいた。週三日…
家に帰り着くと、門の前にかかりつけの病院の車が止まっていた。毎日午前中に一度医師が往診…
「お父さん、起きて」 縁側のガラス戸から朝日が射し込んでいる。重たい瞼をやっと開けると…
「智夏(ともか)ちゃん! 智夏ちゃん! 智夏ちゃん!」 あっと思う間もなく、叶人が秋臣を…
車は都会を抜け、海沿いの道にさしかかった。夏色に変わった空は指先まで青く染まりそうで、…
三日ぶりの梅雨晴れの一日が終わろうとしていた。 秋臣はオフィスの大きなガラス窓から下界を見下ろした。高層ビルの二十三階から眺める景色は、いつもと何も変わらない。 「失礼します!」 元気よく入ってきたのは入社二年目の犬養日向(いぬかいひなた)だった。 「先輩、本当にありがとうございました!」 犬養はニッと笑って体を真半分に折った。彼が秋臣を「部長」ではなく「先輩」と呼ぶのは二人きりの時だけだ。うまく使い分けているなぁと秋臣はいつも感心してしまう。営業部の部下で大学の後輩