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宝石箱

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2019年6月の記事一覧

おしまいの夢

その夢の中で、僕はひとを殺した。 すっかり子供の姿になった僕は、おなじく子供の友達3人と暗いビルのなかで息を潜めていた。皆の手にはそれぞれ別の形の銃があり、僕はスナイパーライフルを持っていた。 だれをやろうか、なんてことを小声で話し合ったりしていた。先生に悪戯するような無邪気さだった。 クスクスと笑い声が響くなか、そっとスコープを覗きこむ。 ミニチュアになったような町のなかで、数人の大人が歩いているのが見えた。そのなかの一人に自然と照準を合わせていた。見たこともない人な

シンデレラの頃。

うちの奥さんは、田舎の寒い地方で育ったのでとても頑丈にできている。 風邪さえもほとんどひかない。「こんなに美人で色白な奥さんを捕まえて、あなたって本当に幸せ者のよねぇ」なんて自分で言う人だ。きっと私より長生きするに違いない。 彼女には面と向かって言ったことはないけれど、私はとても感心していることがある。彼女が私の前で泣いたことは、今までたったの1度しかない。(奥さんはテレビドラマを見ていてよく泣く時があるけど、それ以外。) いつでも彼女は私の前では弱みを見せない。出産前

年縛り

スマホを機種変したので アドレス帳を整理しました もう会わない名前たちを 一括で削除しました 未送信トレイに残っていた あけっぴろげな想いの残滓を 建前と共に飲み干しました 取り返しのつかないことだけが 今も私に苦悩を強制します どんなに傘を広げたところで 雨には抗えないように もう大人になったので 卒業アルバムにしつこく居残る 私の下手な笑顔だけ潰しました 消せない歴史ごと修正テープを 横に一本強く引きました どんなに傘を広げたところで 全然気分は晴れないけれど