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宝石箱

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#日記

幻想  エレクトリック・ドラゴン

冬が好きだ。 空が澄んで星が冴えるように 私の五感も澄み冴える気がする。 暖かいリビングのハンモックに身を委ねながら オルゴールの音を浴び、 万華鏡の色に溺れる。 音には色があると思う。 色には音があると思う。 聴こえない音を聞きながら色を見るのも 見えない色を視ながら音を聴くのもいいけれど 音の色を探し 色の音を求めなくてはいられないこの渇きが唯一残った飢餓だから 私はこれを趣味と呼ぶ。失くしたくない愛おしい飢餓。 今宵もオルゴールの奏でる色と模様を万華鏡の中に出

どうして、という言葉を飲んで。

何度も繰り返した「どうして私ばかりこんな目にあわなければならないのか」という言葉を、私は最近使わなくなった。 幸せになったわけではない。ただそんな言葉をいったところでなにも変わらない事を知っているから、吐かなくなっただけだ。 何度も繰り返し、その感情を華麗にかわしては、無視し、いつの間にか無感情の状態になったけれど、むしろ、前より辛く強固な感情の固まりになってしまった気がする。 「どうして、」というところで、言葉を止めるかわりに「純粋で何一つ偽りがない、しかし汚れた悲し

シンデレラの頃。

うちの奥さんは、田舎の寒い地方で育ったのでとても頑丈にできている。 風邪さえもほとんどひかない。「こんなに美人で色白な奥さんを捕まえて、あなたって本当に幸せ者のよねぇ」なんて自分で言う人だ。きっと私より長生きするに違いない。 彼女には面と向かって言ったことはないけれど、私はとても感心していることがある。彼女が私の前で泣いたことは、今までたったの1度しかない。(奥さんはテレビドラマを見ていてよく泣く時があるけど、それ以外。) いつでも彼女は私の前では弱みを見せない。出産前