日本の保育費は英米から見れば安く、大陸欧州から見ると高めだが、意識は大陸寄り

平成27年度少子化社会に関する国際意識調査報告書 の「出産について」の項目を見ると、日本において出産を戸惑わせる要素のナンバー1が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」であり、調査対象の50%がそう回答している。他国では、フランス27.8%、イギリス26.1%、スウェーデン5.7%となっている。ここまで見ると日本の育児支援があまりに不十分なように見えるが、筆者はちょっと疑問を抱いた。なぜならば、イギリスの育児は保育園が月額20万ともっと金がかかるからである。

保育の支払い額から手当てを引いたネットの保育費用の国際比較を見ると、保育費用がフルタイム共稼ぎの給与収入の何%に当たるかで標準化した場合、イギリス43%、日本20%、フランス15%、スウェーデン8%となる。日本、フランス、スウェーデンを見ると、日本ではもう少し保育費を援助して良さそうだが、それにしてもイギリス――というより英米系の国は全般に「母親の月収を丸ごと保育費に突っ込み、その間実質ただ働き」というスタイルが当たり前に受け入れられている、という状況に改めて感覚の違いを感じるところである。

また、近年は共働きの増加によるパワーカップルの増加が世帯間格差の拡大につながっている例が報告されているが、世帯月収100万の家庭と世帯月収30万の家庭がともに同じ金額の公的保育を使う理由はあるまい。世帯年収300~500万の範囲では所得の増加とともに子供の数の増加が観察される一方、それ以上の年収では金銭的支援をしても子供が増える効果は期待できないので、少子化対策として考えるならば、パワーカップルには相応の負担をしてもらい、所得が少ない夫婦に集中的に保育費支援をする傾斜をかけるのが効果的だろう。

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