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俺が真也で真也が俺で

夫が真也に理解を示している。
それも、とびきり深い理解と同情をだ。

我々夫婦が、そろってAmazonプライムのバチェラージャパンを楽しんでいることは、既に何度かお伝えした。
参考記事①
参考記事② ←最近ようやくリンクを付けられるようになったから多用

バチェラーとは、たった一人の完璧な男性を複数人の女性たちが奪い合う恋愛リアリティショーである。

シーズン4から視聴をスタートさせ、その後シーズン1、2と順調に視聴を重ね、このほどついにシーズン3を完走した。完全制覇である。おめでとう!ありがとう!

前述した「真也」とはシーズン3のバチェラーであった。

彼はバチェラーでの最大の禁忌を冒した伝説の男である。
簡単に説明すると、彼はバチェラーの番組で出会った女性「恵」に一目ぼれした。その一目ぼれぶりときたら、我々一般視聴者にすらバレバレだったので、実際に参加し、恵と競い合っていたその他の女性陣の心境は如何ばかりであったか。

真也は最初から最後まで恵一筋だった。
にもかかわらず、恵の反応はあまり芳しいものではなく、バチェラーは最後の最後に恵以外の女性を選び愛を伝えたのだ。

ずっとバチェラーに好意を伝え続けていた苦労人の女性が真実の愛の相手に選ばれ番組的にはハッピーエンドで幕を閉じたものの、なんと真也はどうしても恵を諦めきれず、番組終了後すぐに恵に会いに行き、口説き落とし、とうとう結婚しちゃったのだ。

現在も二人は順調に結婚生活を続けている。
恵は資産家の真也に溺愛されゴルフと旅行三昧、高級バッグプレゼントされ放題である。正直死ぬほど羨ましい。

可哀そうなのは一度は番組内で真実の愛の相手に選ばれた女性である。
本編終了後の恒例のスタジオトークで、真也はまるで犯罪者のようにつるし上げられ、その様子はさながら謝罪会見であった。

番組終了直後に振られた女性が不憫で、私はスタジオトークを見ながら悪しざまに真也を罵った。
そんな時、夫が言ったのだ。
「俺は真也の気持ちが分かる。俺は真也だ。…いや、真也が俺だ」

はあ!?である。
目をひん剥いて、正気かというように夫にガンを飛ばす妻である私。

「真也は最後の最後で間違ってしまっただけなんよ。恵じゃなくて、別の女性に逃げてしまったことだけが真也の大きな間違いだった。真也は何の苦労もせず育ったボンボンだからアホだけど悪い奴じゃないんよ。真也の気持ち俺は分かる。運命の相手に巡り合ったら、もう他の人じゃ絶対ダメなんよ。」
お前は真也の親友か何かか?と疑うほどに力説する夫。

「俺もそうだったから分かる!」
キリッと私を見つめる夫。
夫の熱弁の中盤頃にはこの流れを予想していた私、余裕の構えである。

そうなのだ。
自分で言うのもなんだが、真也が恵に一目ぼれしたように夫は私に一目ぼれしているのだ。

出会ったのはもう15年以上前だ。
私たちは同じ会社の同僚で、同じ九州内の別の県で働いていた。
彼は私を見た瞬間に、将来この人と結婚するはずだと確信した。

夫が私に一目ぼれをしているという噂は、県をまたいで私にまで聞こえてきていた。

そのころ私は別の男性に恋をしていたため夫のことは眼中になかったものの、自分を熱烈に好きでいてくれる人がいるということ自体は有り難く思っていた。

夫には言っていないが、好きだった彼とダメになった時、私を間接的に支えてくれたのは、私を好きでいてくれている人がいるという事実だった。

結局その時はシャイな夫が直接私に声を掛けてくることはなく、その後それぞれ別の会社に転職した。

再会したのは当時流行っていたFacebook上でだった。
出会いから既に10年弱経っていたが、この機を逃すまいと夫は猛烈果敢にアプローチをしてきた。
初めて夫と二人で食事をした夜、夫の好意を受け入れるか迷っていた私を見透かすように夫はこう言った。

「たいたいさん、自分にはもっとこれからいい男が現われるかもしれないって思っているでしょ?断言しますけど、今後俺以上にたいたいさんを大事にする男は現れませんよ」

思い返すとこれが決め手だったような気がする。
そして実際に夫以上に私を溺愛してくれる男は現れなかっただろうと思う。
夫の言うことは正しかった。

結婚して8年経つが夫はどうも未だに私をとても愛しているらしい。

俺が真也で真也が俺で。

エルメスの紙袋にまみれた恵のようにはいかないが、愛情の与え方に関しては夫は真也に引けを取らないのではないかと思っている。

そう夫に伝えたら、夫は眉根を寄せ、俺が真也に引けを取らないのではなく、真也が俺に引けとらないのだと訂正した。

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