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【PMP×野球】#6:資源マネジメント

「プロジェクトマネジメント」×「野球」

世の中には様々な”やるべき事”が溢れている。そのやるべき事を然るべき準備や手順(プロセス)で進めていく手法に”プロジェクトマネジメント”という概念がある。

あらゆる仕事に転用できるベースとなる概念・考え方だが、なんせとっつきにくくて分かりにくい。参考書を読んでもイメージもつきにくいし、頭に入ってこない。

そこでこのプロジェクトマネジメントを自分の大好きな”野球”というフィルターを通し、野球とのアナロジーを見い出しながら”プロジェクトマネジメント”を分解していく。野球というスポーツも、各自がそれぞれの準備や役割を正しく行う事で”試合に勝つ”というプロジェクトを遂行していると捉え置き換えれば少しは頭に入りやすいし、知識として定着するはずである。

苦手な食べ物を好きな食べ物と一緒に食べるように…
難解な用語を身近なものに置き換えることで覚えるように…

#6.資源マネジメント

<計画プロセス群>
6.1:資源マネジメントの計画
6.2:アクティビティ資源の見積もり

<実行プロセス群>

6.3:資源の獲得
6.4:チームの育成
6.5:チームのマネジメント

<監視・コントロールプロセス群>
6.6:資源のコントロール

プロジェクトに必要なものは「人」と「物資」の両方の資源が必須。これらの資源を適切な時に、適切な場所で利用することがプロジェクト成功に導くためには必須の条件。資源マネジメント領域はそれらの活動をまとめたプロセス。

プロジェクトの計画と意思決定にはチーム・メンバー全員が関与することが望ましく、計画策定プロセスにメンバーを巻き込むことにより各自のプロジェクト参加意欲が高まり良いパフォーマンスを出せる。

資源マネジメントの領域は、野球でいうところの遊撃手(ショート)のような役割を担っている。プロジェクトマネジメントでは資源マネジメントのプロセスはチームを一つの方向にまとめ、意思統一を図り、チームを成熟させていくための重要なプロセスである。

野球というスポーツにおいて遊撃手(ショート)はチームを勝利に導くというプロジェクトに対してグラウンドの中心でチーム全体の試合展開を頭に入れながら指揮・コントロールの一翼を担い、ゲーム内で発生する課題も中心となって関与していくポジションである。

中長期的なチーム強化においても強いチームには”良い遊撃手”がいることが多いし、チームを中長期的に強化マネジメントしていく際にこの”良い遊撃手”が様々なチームメンバーのモチベーションを引き出し、チームは成熟していく

6.1:資源マネジメントの計画

物的及びチームの人的資源を見積もり、獲得し、マネジメントし、活用する方法を定義するプロセス。

<6.1:資源マネジメントの計画(主なアウトプット)>

◎資源マネジメント計画書
プロジェクト資源の分類、配賦、マネジメント、その後の離任などのガイドラインとなる。主に大切なポイントは以下の2点である。
 資源の特定:必要なチームと物的資源を特定し、定量化する方法
 資源の獲得:チームと物的資源の獲得方法に関するガイダンス

◎チーム憲章
チームの価値観、合意、業務上のガイドラインを確立するための文書。チームが行動規範を常に把握し、アップデートすることで団結を高めたり新メンバー参集にあたり障害を少なくする。
 ー チームの価値観
 ー コミュニケーションのガイドライン
 ー 意思決定の基準とプロセス
 ー コンフリクトの解決プロセス
 ー 会議のガイドライン
 ー チーム合意

6.2:アクティビティ資源の見積もり

プロジェクト作業を進めるのに必要なチームの人的資源及び物資、装置、サプライの種類と数量を見積もるプロセス。

具体的にプロジェクトに”何がどれくらい必要なのか?”を明確にする。

遊撃手(ショート)はチームで一番の野球脳の持ち主であることが多い傾向にある。そして、その野球脳をもって試合中のみならずチーム育成や強化視点でもその能力は発揮される。

試合中であれば”今のシチュエーションで何が必要なのか?”であったり、試合進行中の流れを見て”相手が何をしてきそうか?”またはそれに対して自軍として資源の入れ替え(選手交代など)や作戦変更のためのコミュニケーション(マウンドに集まり対策を共有するなど)起点となることもある。

<6.2:アクティビティ資源の見積もり(主なアウトプット)>

◎資源要求事項
ワークパッケージごとまたはその中のアクティビティに必要とされる資源のタイプと量を特定し、プロジェクト全体としての資源の見積もりを決定するために必要な資源情報を集約する。

◎資源ブレークダウンストラクチャー(RBS)
必要な資源を区分し、タイプ別に階層化したもので資源を獲得し監視するために使うもの。
 資源区分:労働力、資材、装置、サプライなど
 資源のタイプ:スキル・レベル、等級、必要な認定など

6.3:資源の獲得

プロジェクト作業を完了するために必要となるチーム、メンバー、設備、装置、資源、サプライ、他の資源を確保するプロセス。

プロジェクトで一定の成果物を完成させるためには人的資源と物的資源の両方が必要不可欠である。その必要な資源をこのプロセスで確実に確保することが重要なポイント。

<6.3:資源の獲得(主なアウトプット)>

◎物的資源の割り当て
プロジェクト中に使用される資材、装置、サプライ、場所、及びそのほかの物的資源を記録したもの。

◎プロジェクト・チームの任命
プロジェクトのチーム・メンバーとその役割および責任を記録したものであり、プロジェクト・チーム名簿やプロジェクトマネジメント計画書に記入された名前が含まれる。
※プロジェクト立ち上げ時に”チームが任命される”と誤認しがちだが正式にチームが任命されるのは「資源の獲得」プロセスである。

◎資源カレンダー
チーム資源と物的資源がプロジェクト期間中に「いつ・どのくらいの期間」で利用可能かを表すことができる。また資源の経験レベルやスキルセット・スキルレベルや地理的位置のような属性への考慮もここに記載される。

6.4:チームの育成

プロジェクトが進むにつれて”チーム”は徐々に進化していく。そのパフォーマンスを高めるためにコンピテンシー、チームメンバー間の交流およびチーム環境全体を改善していくのが”チームの育成”プロセスである。

良いチームとして成熟期を迎えていくのか?
衝突の絶えないストレスフルなチーム環境になってしまうのか?
はこのプロセスのアプローチ次第と言っても過言ではない。

遊撃手(ショート)は内野手のリーダー的なポジションである。チームが強くなっていくには、様々な軋轢や課題が露見してくるものである。

例えば、高校野球など新チーム発足時は往々にしてチームが成熟しておらず、ディフェンスの意識や個人能力の格差、サインプレー成熟度など様々な面において未完成である。そのような場面で遊撃手(ショート)はチームの軸となり、様々なコミュニケーションを駆使してチームを良い方向へ成熟させていく方向性付けをしていく重要な役割を果していく。

ゲームではダイヤモンドの中心いてチームの課題に大きく関与していく存在であるし、試合外でも”チーム育成”という観点で中心的な役割を果たす存在である。

チーム形成のステップを示す”タックマンモデル”

チーム育成は一足飛びに為し得るものではなく段階を経て成熟していくと言う考え方がベースとなる。そのチーム形成の流れにもいくつかのプロセスが見て取れる。そのチーム形成のプロセス(発展段階)を5段階で示したモデルが”タックマンモデル”である。

成立期:プロジェクトや各自の役割をチームが理解する段階
動乱期:チーム内部でコンフリクトが発生する段階
安定期:チームが機能しはじめ、PMがリーダーシップを発揮する段階
遂行期:集団として効率的に業務遂行。PMは管理監督・委任
解散期:PJ終結し、チームは解散。個人が不安を抱く難しい段階

3つのモチベーション理論は基本的な知識として仕入れておきたいところ。

【マズローの欲求5段階説】

人の欲求は5段階あり「生理的欲求」→「安全の欲求」→「社会的欲求」→「承認/尊重の欲求」→「自己実現の欲求」と人間の本質的な欲求から順を追って、満たされてゆく。

↓⒌「生理的欲求」
↓⒋「安全の欲求」
↓⒊「社会的欲求」
↓⒉「承認/尊重の欲求」
↓⒈「自己実現の欲求」

【ハーズバーグの二要因理論】

職務満足度に影響を与える要因に関する理論。

◎動機付け要因:達成する事、承認される事、責任、昇進、成長など
 → 満たされると”満足”。だが欠けても”不満足”には繋がらない

◎衛生要因:給与、会社の方針、職場環境、監督、人間関係など
 → 不足すると”不満足”。だが満たしても”満足”には繋がらない

野球界に目を向けて、上記2つの要因を理解しようするならば選手のFA移籍が想像しやすい。FA移籍の取っ掛かりは「衛生要因(=複数年契約など)」の条件で自分の付加価値や選手としてのランクを確認するステップからスタートしつつも、最終的には「動機付け要因(=うちの若手の見本に…コーチ手形など)」によって心を動かされて移籍先を決める、といったシチュエーションだ。

【マクレガーのX理論/Y理論】

組織管理における動機付けに関する対立する2つの理論。
簡易的に言えば人を”性善説”で捉えるか?”性悪説”で捉えるか?の違い

X理論:人間は生来的に労働を好まず、生産的に働かせるためには命令や強制などで常に管理が必要

Y理論:人間は生来的に良い仕事をしたがり主体性を尊重すれば、自己実現のために進んで働き貢献する。

<6.4:チームの育成(主なアウトプット)>

◎チームのパフォーマンス評価
チーム形成、トレーニング、コロケーションなどプロジェクト・チーム育成活動を実行する過程でその機能の実効性に関して正式または略式にて評価を行う。チームパフォーマンスを向上させることでプロジェクト目標達成の可能性を引き上げる。

6.5:チームのマネジメント

プロジェクト・パフォーマンスを最適化するためにチーム・メンバーのパフォーマンスを追跡し、フィードバックを提供し、課題を解決し、さらにはチーム変更をマネジメントするプロセス。

コンフリクト発生時の解決策

プロジェクトが進んでいくうちにチーム内では様々な問題が発生する。問題が発生したら、なるべく初期段階のうちに対照すべきであり、PMはその要因に対して直接的で協業的なアプローチを通じて非公式に解決していくことが望ましい。

PMは人々をリードしながら、積極的にマネジメントし続ける必要があり、その方法には6つの手段がある。

一番良い解決方法は”問題解決・対峙/協力”である。

問題解決・対峙:問題と向き合い、根本原因を解決する。
協力:個人/チームが一緒になり解決を図る。
妥協・和解:合意に至るために両者が歩み寄る。LOSE/LOSEの結末を迎える
強制・指示権力や地位を利用し、緊急事態を解決根本的解決は×
鎮静・適応:意見の同意部分に注目。対立の根本解決を模索しない。
撤退・回避課題を先送りにする(PMが取るべき行動として正しくない)

<6.5:チームのマネジメント(主なアウトプット)>

◎変更要求
チームマネジメントプロセスにおける変更要求はプロセス実施の過程においての人事異動やそれによるスケジュールの変更、予算変動、メンバー補充などが発生し、それらが”変更要求”としてアウトプットされる。

6.6:資源のコントロール

プロジェクトに割り当てられ、配賦された物的資源が計画通りに利用可能であることを確実にし、資源の計画に対する実際の利用を監視し、必要に応じて是正処置を講じるプロセス。

内部資源、外部資源にかかわらず獲得した資源が常に計画通りに運用・実行できる続ける保証は無い。そのために常に獲得した資源が”計画通りに活用されているか?”を監視・コントロールし続ける必要がある。

<6.6:資源のコントロール(主なアウトプット)>

◎作業パフォーマンス情報
資源要求事項と資源配賦をプロジェクト活動全体での資源利用と比較したプロジェクト作業の進捗状況に関する情報が含まれる。この比較は”資源の可用性”における対処を必要とするギャップを示している。

”資源マネジメント的”プレイヤー

資源マネジメントという”チームの核”となるポジションとなると連想するキーワードは”野球偏差値の高さ”と”広い視野と理論”を持ち合わせているかどうか?がポイントである。

そのポイントから実際のプレイヤーに資源マネジメント的な印象を重ねていくとすると個人的には井端弘和(元中日ドラゴンズ)源田壮亮(埼玉西武ライオンズ)である。

井端弘和(元中日ドラゴンズ)

言わずと知れた中日黄金期を支えたレジェンド的遊撃手。中日現役時代はまさにチーム形成の様々なプロセス(タックマンモデル)を経験してきており、プレイヤーとしての能力はもちろん”チームを形作るうえ”でなくてはならないピースであった。

源田壮亮(埼玉西武ライオンズ)

もう一人の”資源マネジメント的”プレーヤーは源田壮亮である。その堅実で正確無比な玄人好みの守備であまたの野球ファンを唸らせている。野球というスポーツにおいての遊撃手の重要性を知るには、”源田の西武入団の前と後”を見てもらえれば一目瞭然だと思う。源田もまた試合中で見せるそのプレーそのものの能力もさることながら、その”存在”がどれだけチームを形作る上で重要なピースであるかを物語っている。

次回は「#7:コミュニケーションマネジメント」


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