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La Vague寄稿詩人の紹介 ~ゲスト編~

詩誌La Vague Vol.2の刊行が近づいてきました!

今回はゲスト詩人のお二人に詩とエッセイを寄稿していただいています。
お一人は詩を、もうお一人にはエッセイを。
素晴らしいゲストですのでお楽しみに。

ご紹介していきましょう!

◆詩 ゲスト 文月悠光さん

文月悠光(ふづき・ゆみ)
 詩人、武蔵野大学客員准教授。1991年北海道生まれ。
2008年、16歳で現代詩手帖賞を受賞。第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(ちくま文庫)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少18歳で受賞。
その他の詩集に『わたしたちの猫』(ナナロク社)など。エッセイ集に『臆病な詩人、街へ出る。』(新潮文庫)など。2023年、新詩集『パラレルワールドのようなもの』で富田砕花賞を受賞。
web:http://fuzukiyumi.com/

LaVagueへのメッセージ

「LaVague」vol.0を拝読したとき、驚いたことを覚えています。過去の女性詩人たちの詩を受け継ぎながら、見事に今の時代に開かれていたからです。傷を描くこと、身体を尊ぶこと。雪柳さんによる「創刊のことば」を拝読し、私もここに続いてみたいと思いました。

◆エッセイ ゲスト 青木由弥子さん

青木由弥子(あおき ゆみこ)
1972年、東京生まれ、埼玉育ち。
シラサギが飛び交い、コジュケイが道を横断するような田舎道を通学していました。大学では美術史や美学を専攻。東日本大震災後から現代詩の通信添削講座を受講、講師の勧めで伊東静雄を読み始めます。ほどなく詩誌に投稿を始め、2015年に第24回詩と思想新人賞受賞。既刊は詩集『星を産んだ日』2017(詩と思想新人賞の副賞)、同じく詩集『しのばず』2020、評論集『伊東静雄―戦時下の抒情』2023 。

LaVagueへのメッセージ

日本文学の「戦記物」は、諸外国の「戦記」に比べて、武勲を讃えることよりも敗北していくものの痛み、哀しみに深く共感し、失われゆく命の尊さに共鳴する文学だったように思います(漢文による歴史的な記録文学ではなく、仮名文字による叙事詩的な語り物についての話です)。これはしばしば「女性的特性」と言われる、共感力が強く発揮されたゆえだったのではないか、と密かに思っているのです……語り手や歌い手が肉体的性別においては男性であったとしても、文学そのものが女性的、フェミニンな性質を強く示していたのが、そもそも日本文学なのではないでしょうか?(それは戦記という、きわめてマスキュリンな性格を持つであろう叙事詩においても、見受けられる特徴のように思うのです。)
今、世界が分断され、戦争が各地で起きているのですが、白か黒か、という二項対立に分断し、相手を批判(糾弾)するマスキュリンな性向が過剰に世界を覆いつつあるように思います。私たちもまた、その恩恵を受けている西欧的近代主義の正の側面ではなく、その負の側面、主客分離・マスキュリンな思考形態がもたらす分断と諍いの悲しみを、全一的な融合・いたわり合いの中で癒していくフェミニンな思考形態が求められているように思うのです。女性だけの詩誌……が、男性/女性の分離ではなく、むしろ溶解・融合の新たなステージへと至るためのひとつのゲートとなるように、導きの戸口となるように。女性たちによる詩誌の試みに、そのような期待を抱いています。

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創刊号から次の波へ。
わたしたちの航海に、お二人から力強いメッセージをいただきました。

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