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【トークイベント】雪柳あうこ×宮尾節子 詩誌La Vague vol.0 【第3回】 「女たちよ」(宮尾さん詩)~傷から生まれる「発泡」

この記事は、2023年5月14日(日)に行った、詩誌LaVague Vol.0の出版を記念して行ったトークの内容を収録しています。vol.0 ゲスト詩人の宮尾節子さんと主宰の雪柳あうこの対談です。
本トークイベントの記事は、数回にわけて連載していきます。本トークのマガジンをフォローしていただくと連続して読むことができます。


※宮尾節子さんの詩「女たちよ」をゲストに迎えた詩誌La Vague vol.0はこちらより購入できます。

◆「La Vague(ラ・ヴァーグ)」という名前

雪柳 (中略)議論の最初、この詩誌のタイトルを決めるところも、なかなか最初決まらなかったんですよ。(私が)主導してるんだから先に決めちゃえばいいかなとか思ったんですけど、やっぱりそうできなくて。皆さんと議論や対話を繰り返してるうちに、あ、これはすごく「波」だ、「うねり」のようだと(直感的に)思ってですね。「私たち」の現象全てに、ぴったりくるぞと思ってですね。そこに「ラ・メール」への敬愛も込めて、詩誌La Vague(ラ・ヴァーグ)と名付けた次第なんです。

宮尾 すごい。その思いや、もやもや、わちゃわちゃのうねりもまとめてラ・ヴァーグに決まったっていう。なんかすごいね、ライブ感があって、素晴らしいですね。

雪柳 最初「ラ・メール」(注:仏語で“海”の意)に憧れがあったのもあって、水に関する言葉とか、色々探ってみたんですけど。でもやっぱり、皆さんの気持ちがうねってぶつかりあって、色々話をしていく過程こそが、波っぽいって思ってですね。ラ・ヴァーグで行きましょうって決めたのが(2022年の)秋の終わりぐらいでしたかね。 そこからは、割とスムーズに話が(進みました)。
……私はきっかけにすぎなくて、やっぱりメンバーがそういう風に、しっかり私たちとそれぞれと向き合ってくれたおかげだなって、私は本当に強く思っていて。私は。「やりましょう」っていう、たまたまこのタイミングで、このきっかけで作ろうっていう声掛けをしただけなんじゃないかなって。(中略)私の名前が一応主宰として出てはしまうんですけど、基本的には、みんな横並びだって、私は思っていて。

◆「女たちよ」(宮尾さん詩)~傷から生まれる「発泡」

雪柳 宮尾さんがVol.0に寄せて下さったゲスト詩「女たちよ」ですが、この詩をゲスト作品に選んでくださったのは? 何か理由とか思いとかがあって載せてくださっているのかなと思うんですけれど。

宮尾 はい。最初、これは、「発泡せよ」っていうタイトルでつけてたんです。でも色々事件もあって、発泡せよ、はあまりかなと思って詩誌に因んで「女たちよ」と。 
もう一つは、私と仲良くしてもらってる西原真奈美さんがシャンパングラスの詩を書いたことがあって。その時に初めて知ったんですけど、シャンパングラスは(わざと)傷をつけてるんですって。なぜかって、それは綺麗に気泡が上がるため。 気泡が上がるために傷をつけてるっていう、それがすごくて。 傷ついたっていうことと、朗らかなシャンパン。傷つけられた方が(泡が)上がる。なんか、転じられるなという気がして。
よく考えたら、女の人って色々、たくさんの傷口と付き合ってるような感じがしてね。私は子ども産んだ時に、おっぱい、 冷蔵庫で冷やしたことがあって。冷やしてたら、だんだん赤くなるんですよね、乳っていうのは、血なんだ、血液なんだっていうことが分かって。神様って優しいなって。赤ちゃんに飲ませる時には、赤い血もこわくないように白くなって。そして、涙になる時は、透明になったりして。
それと、人魚姫の泡となって消えていった思いなんかも、入れました。

雪柳 言えずじまいだったものと、受け継がれてきた声ですね。

宮尾 はい。崖から飛び降りた戦争中の沖縄の女の人のこととか、そんなこと思いながら。今、書けると思って、いい機会をいただいたと思って(書きました)。本当に書けてありがたかったです。


雪柳 (宮尾さんの詩を)祝福の発泡ように受け取りつつ、改めてそういった傷というところに着目して読ませていただくと、詩から立ち上がるイメージがさらに具体的に、立体的に感じられるような。シャンパンの匂いが香るような印象を受けながら読ませていただきました。

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