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ブレる人間とブレない生き方?

 さいとうたかをさんと言う有名な漫画家がいます。名前を聞けば分かる人は分かるのですが「ゴルゴ13」や「鬼平犯科帳」の作者です。私は「鬼平犯科帳」の大ファンで、最初はドラマから影響されたのですが小説も漫画も社会人になって購入してみたらどれも同じ話なのに味があって大変有意義なお金の使い方でした。「鬼平」の『悪人も時に善人になりたがる』と言うセリフは漫画版では印象深いものだと思います。さいとうさんは3年前に亡くなりました。子供の頃戦争を振り返り、ようやく平和が訪れたと言う思いの一方戦中のスローガンであった看板が外されていく様子を見て「今日善だったものが明日には悪に変わる」と実感したそうです。子供の頃からこういった価値観の持ち主だったらそれは素晴らしい作品が書けるでしょう。
 さいとうさんが若い頃の漫画界は手塚治虫や赤塚不二夫など大衆漫画黎明期に活躍した超人が絵からストーリーまで一人で考え作品を発表していました。どんな天才漫画家でも創作能力が優れていても体は正直なもの。特に手塚治虫さんはまだまだこれからの時に亡くなりました。さいとうさんが取り入れたのは「分業制」。脚本を書く人や絵を描く人を完全に分けローテーションを組むことで長年に渡る長期連載を可能にしました。当時としては画期的です。絵を描くだけでも人を描くのは苦手だけど、背景は抜群に上手いと言う人は得意分野が全然違います。長年同じことをやっていて極めたと言う人もいるでしょう。さいとうさんが亡くなっても「ゴルゴ13」と「鬼平犯科帳」は新しい話が追加されて単行本も出続けています。こう言う漫画家の形を生み出したものも人間の知恵でした。

人間立ち位置変われば意見は変わる!だけど・・

 非正規雇用だった人は正社員になった瞬間自己責任論者になったと言う話が散見されます。正社員が必ず安泰!と言うわけでもないんですが、ただ雇用に関して言えば正社員の方が会社が解雇を切り出されても粘りやすい、雇用の継続を勝ち取りやすいのも事実と言えば事実です。非正規雇用でも交渉の仕方次第で色々な戦術を取れるのですが、伝わりにくいものです。最低賃金も元々は学生のアルバイトを想定し、あくまで学業の合間で働く人の賃金の最低保証だけ設定しておくと言う意図だったのですが現在では「これだけ支払えば法律違反にはならない」ぐらいの感覚で設定されています。さらに経済政策ではその賃上げを否定され、「人件費増大で企業は海外に逃げる。最低賃金賃上げは天下の愚策」と言う人もいます。そう言う人ほど「日本の素晴らしさは勤勉さ」とか言ってしまうのですが。その勤勉なはずの日本企業経営者がたかだか最低賃金が賃上げするぐらいで生産拠点を移すのはある意味勤勉に経営している証拠かもしれませんが、できれば収益を上げる形で人件費をアップさせてほしいです。労働者側の立ち位置なので経営者にとって「簡単に言うな!」と言う話を言いますが、リストラが経営手腕の一つだったら誰でもできます。私だってできます。というか多分私が経営者なら絶対に人件費に手をつけるでしょう。悲しいかな私には経営の才能が一切ありません。ですが、サラリーマン社会の頂点である経営陣がコストカットのうまさだけで経営者の格が決まるなら、それこそAIに経営を任した方がいいでしょう。経営者が人間である理由は必ずしも人間しかできない仕事がそこにあるからです。前にTwitterでも言った記憶がありますが多大な事故を起こした時、謝罪するのはAIでしょうか?もちろん技術は進歩するものでAIの進歩は生活を豊かにしてくれるはずです。ただ人間のやることは不合理性があるぐらいが丁度いいのです。事故はあってはいけないものですが、それを未然に防ぐのも人間の知恵でしょう。技術を過信しすぎるのも考えものです。何故なら技術を過信して、大きなミスを見逃すのは結局人間だからです。

ブレすぎた社会民主党

 そもそも私の出身労組はつい最近まで日本労働組合総連合会傘下の民間労組にしてはほぼ唯一の社会民主党支持労組で民主党支持に転じてもかなりの組合員がその後も社民党応援団だったのですが流石に庇いきれないぐらい整合性が取れなくなったため、現在はほぼOBや退職連合が主軸です。平和の党社会民主党が何故か小沢一郎の路線に乗っかり、護憲派がすっかり社民党を見放しました。そもそも民主党政権が消費増税を決めた時当時の福島瑞穂党首は「どんどん新自由主義な世の中になっていく」と発言したものです。これに関して言えば福島だけの責任ではなく当時の社会民主党全体に責任があるのですが、徐々に「減税こそ正義」に傾斜していったのは福島瑞穂の責任が大です。
 とは言え10年前から存亡の危機だと言われ続けているのに、そこから脅威の粘り腰で国政政党の要件を確保しているのは福島瑞穂のカリスマ性だとは思います。できれば高負担、高福祉として熱く社会主義を語る福島瑞穂党首だったら現在以上の党勢が維持できたのかもしれませんが、案外権力闘争(社民党内と言う極めて狭い枠内ですが)に長けていた福島は党内総主流派体制を確立しました。もはや現在の社民党は福島瑞穂に異を唱える人すらいません。党内団結は必要ですが、反主流派無き政党は個人独裁者を生み出すだけです。社民党に世代交代論が出てこない状況は非常にまずいです。長く党内とはいえ権力の座に居続けるのは明らかに弊害なんです。善だったものが悪に変わった時、個人のカリスマ性だけで乗り切るのは危険です。彼女は民主党と連立を組み、辺野古移設で離脱したのに結局小沢一郎だけでなく民主党と選挙協力をしながら、地方組織をほとんど民主党に吸収されながらも未だ立ち位置が見えないから。本当に新自由主義から決別すべきなのは社会民主党です。高負担から逃げてはいけません。高福祉を達成したいなら。安定的な財源は国債ではなくいつだって税なのですから。

脱原発議論から見えたもの

 東日本大震災では原子力発電事故から日本の技術力の脆さも痛感させられました。原発は常に危険性と隣りあわせであり、その強靭な技術力を持ってしても制御できないなら代替エネルギーの必要性は出てきます。あの事故を見て国民的議論となった「脱原発」。とは言えその前まで原発は日本で1番安全と言われ、地震が起こればそこに逃げればいいぐらいのことコメディアンですら言ったのです。安全だと思っていました。あの光景を見るまでは。ただ昨日善だったものは次の日どうなるか分かりません。あの事故が起こる前まで優秀な技術者集団だった原発従事者は一夜で「原発事故の最大の戦犯」と言われるぐらい状況が変わりました。ここから言いたいのは誰だって自分の生涯をかけたものを悪様に言われるのは気分が良くないです。脱原発とかは抜きにして自分は批判されるのは構わない。何故技術そのものを腐すのか。事実自然エネルギーは事故のリスクが低い代替エネルギーですが必ずしも原子力や火力発電を全てカバーできるほど技術は発展していません。また自然エネルギーももしかすると危険な事故に繋がる欠陥があるかもしれないです。原子力発電が結局リスクが大きかったこと同様です。
 私は今はタクシーの運転手が生業ですが、「ライドシェア」議論が出るのはまだ構いませんが「タクシーの運転手なんか利権集団。技術なんか必要ない」と言われるとカチンときます。職業を軽視し、そんなものは代替できるとコストをカットした結果、実質賃金が下がり続ける世の中を招いてしまいました。人件費がかからない仕組みが世の中が求めているなら、太平洋戦争同様に価値観が変わる第二の敗戦があり得ると思います。
 原子力発電に警鐘を鳴らしたのは前述したさいとうたかをさんの漫画「ゴルゴ13」で現在1番人気ストーリーである「2万5千年の荒野」と言うタイトルの漫画があります。最初それを読んだ時「呆れた経営者だな」と思ったのですが、ストーリーを全て言ってしまうと興醒めなのでこれ以上は言いませんが印象的なセリフがありました。
「原発の技術に問題があるわけではない。扱う人間に問題があるんだ。だから優秀な技術者の育成が必要」と言う主旨の内容でした。このセリフに出てくる優秀な技術者は自らの手で大事故の危険を回避し、勤勉な労働者として仕事にケリをつけた好人物でした。自動車ですら人を殺せます。扱う人間がその技術にあぐらをかくほど、事故の危険性が増えていきます。「2万5千年の荒野」は原子力発電というより、優秀な労働者、仕事に対する責任を軽視した愚かな世界を予言したものかもしれません。意見や立ち位置が変わっても仕事の不始末は自分でつけられるような人間に私はなりたいです。それこそ人間は責任を持つことを通じて、ようやく自分の意見を持てるようになるからです。


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