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「デザインしかできないデザイナーにはならない」 デザイナー3年目の決意 #羅針盤のつくりかた

「デザインを仕事にしはじめて1年経ったとき、ようやく自分はデザイナーだと名乗れたんです。」

そう話すのは、ラブソルのデザイナー 小野寺美穂。
幼いころからの夢だった「デザイナー」になり、3年目に突入しました。

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小野寺・美穂(おのでら・みほ)

LA BOUSSOLE ,LLC(ラブソル)のデザイナー。
学生時代、一度はデザイナーを志したものの「自分はデザイナーにはなれない」と思い込み、新卒で営業職に。しかし、デザインに関わりたいという思いは捨てきれず、会社員をしながらオンラインサロンを舞台にクリエイティブに向き合い始める。その後、フリーランスのデザイナーとして活動。組織の中での更なるステップアップを志し、業務委託として働いていたラブソルに正社員として入社。
今では、指名で仕事の依頼がくるほどに。

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小野寺が担当した制作物

憧れてきたデザイナーという夢に対して、「自分はデザイナーを名乗ってもいいのか」というジレンマを抱き続けてきた。

「ラブソルのデザイナーの、小野寺です。」
そう名乗れるようになったのには、主に、ラブソルでの二つの経験があったそうです。

一つは、たった一人でスタートしたデザイン事業部に、大学生インターンや後輩メンバーが増えたこと。彼らにフィードバックをするうち、自らのデザインとは何かを考え、言語化できるようになったといいます。

もう一つは、クリエイティブを納品したときのクライアントさんの反応です。パッと見た瞬間に表情がほころび、心から喜んでくれる姿を見られることが、たまらなく嬉しかったのだそう。

こうした経験が自信や覚悟となり、いつしか「デザイナー」と名乗れるように。

小野寺は、1年前にも「羅針盤のつくりかた」に登場しています。

1年の時を経て変化したことと、変わらないもの。夢だったデザイナーになって3年目を迎えた今、どんな覚悟で仕事と向き合っているのか。

後輩として直接指導を受けている私、野元と、これからラブソルにジョインする須田が聞きました。

まるで武士!? 自分の仕事に向き合い、決めた覚悟

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ーーラブソルのデザイナーとしてのお仕事は、2年目になりますよね。1年前と比べて何か変化したことはありますか?

小野寺:今は、ロゴやWEBのデザインから、フライヤー、冊子などの紙媒体まで幅広く関わらせていただいています

1年前は、イベントバナーのデザインなどの案件が多かったですが、最近ではWEBサイトの制作を複数企業から同時にご依頼いただけるなど、お仕事の幅が広がっているなと感じています

お声がけいただける企業さまも、LINEさまや電通デジタルさまというように、私から見ると規模の大きいところが増えてきていますね。昨年は、大阪・関西万博の関連イベントでのビジュアルレポートなど、企業だけでなく行政が関係する案件も担当することができました。

ビジュアルレポートとは?
「情報のデザインを通じて、コミュニケーションをよりなめらかにすること」を目指し、イベントやカンファレンス、サービスなどの内容を、ビジュアルとテキストの力を使って届ける手法

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大阪・関西万博の関連イベントのビジュアルレポート

ーーメジャーな大企業からだけでなく、行政まで! プロジェクトの規模が大きくなるということに対して、どう感じていますか?

小野寺:率直に、嬉しいです。個人の目標でもあり、私の所属するデザイン事業部の目標でもある「売上を上げること」。これを実現できているのが、本当に嬉しいですね。

ーー比例して、責任も大きくなってきますよね。プレッシャーや不安はありませんでしたか?

小野寺:不安かあ…。プロジェクトの大きさに関係なく、「本当に私にできるのかな? 」と思うことはあります。でも、それを何度も乗り越えてきたからこそ、今こうして幅広く携わらせていただけているのだと思っています。

ーー経験を重ねることが、自信につながっているのですね。はじめは「できるかな」と思っていたことも、何度も乗り越えてこられたのには何か理由がありますか?

小野寺:とにかく冷静に、自分がやるべきことに意識を向けて、精神統一をする。クライアントさんのことが好きだ! と溢れるほどの気持ちはもちろんあるけれど、ときには自分の気持ちを抑えて、冷静に手元の作業をしたり、メンバーに指示を出したりしていました。なんだろう…、やるぞ! 押忍! みたいな(笑)。

ーー押忍! (笑) なんだか、武士みたいな一面がありますよね。

小野寺:武士! よく言われるかも。「腹をくくる」ような、覚悟を決めるタイミングがあったので、そのように見えるのかもしれないですね。

ーー「腹をくくる」。それは、どんなタイミングで?

小野寺:最初の覚悟は、自分が「デザイナー」を名乗って働くと決めたときですね。それから、ほのかや堀くんなど、事業部の後輩が出来たとき。何度かタイミングはありました。その度に、改めて自分の仕事に向き合い、覚悟を決めてきた気がします。

立ち位置が変わっても、やるべきこと、仕事に対する姿勢は変わらない

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ーー規模が大きくなると同時に、デザイン事業部のメンバーも増えていきました。ご自身の立ち位置や仕事内容に変化はありましたか?

小野寺:メンバーが増えてくると、役割分担や指示出し、スケジュール管理などのお仕事が必要になっていきました。これまでは、デザイナーとしてひたすら手を動かし続けてきた。でも、事業部を成長させるためにも、今の私がすべきことは手を動かすことだけではないと考え始めています。「ディレクター」というスキルや視点も必要になってきました。

ーーディレクター。全体の統括や、メンバーに担当振りをするような立ち位置は、元々得意でしたか?

小野寺:得意…かはわからないですが、抵抗はなかったです。これまでの人生で、役割を分担する機会は何度かありました。学生時代やオンラインサロン、その人の様子や状況を見て、この人にはこれだなと役割を振っていく…みたいな。

ーーなるほど。小野寺さんは、人のことをすごくよく見ていると感じます。人の得手・不得手を理解して、適材適所に担当を振っているというか。でも、手を動かす「デザイナー」になりたかった小野寺さんにとって、「アートディレクター」や、「クリエイティブディレクター」といった、100%自分の手を動かすことはできない立場になることについて、どう感じているのか気になります。

小野寺:ありがたいことに、この頃WEBサイト制作案件が立て込んでいて…。私がすべてを担当して手を動かすことは、現実的ではなくなってしまいました。そこで、あるWEBサイト制作のデザイナーを堀くんにお願いし、私がアートディレクターを担当することにしました。これが、今までに経験したことのないほどの寂しさで…

もちろん、ご依頼いただける数が増えれば売上が上がるし、他のメンバーに打席を回せる。それは、本当に嬉しいことです。だけど、自分が手を動かせないということが、ただただ悲しくて。

ラブソルの代表のゆかさんやみかさんは、実際に手を動かすわけではないですが、クライアントさんの心を誰よりも掴んでいます。現場で手を動かせないからといって距離が離れてしまうということはもちろんないのですが、今の私には距離を縮める手段が他にないことが、悔しくって。ディレクターとしての経験や場数がまだ足りていないのだと思って、一旦心を落ち着けました(笑)。

ーー小野寺さんにとってクライアントさんの存在がいかに大切で、心から愛されているのかが伝わってきます。

小野寺:うわぁ、嬉しいなあ。特に、今回堀くんに任せようと思った案件は、コロナ禍で大変だったときにご依頼をいただいたことがあったし、私生活でもお世話になっている方。私のPCが壊れたときには、修理費の足しを送ってくれた方でもあるので、なおさら思い入れが深くて。

深く愛して、尊敬しているからこそ、アートディレクターとして、私は私なりにクリエイティブの力で恩を返したいと思っています。

売上0円!? デザイン事業部はいかにして売上を獲得したのか

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ーー「デザイナー」という夢を大切に育ててきた小野寺さんが、「100%手を動かすことができなくなる」。それでも、事業部の拡大が嬉しいと感じられているのは、ご自身以上に事業部を大切にされているということですよね。

小野寺:「デザイン事業部」といえども、当初のメンバーは私一人だけ。今でこそ、ビジュアルレポートのようにデザイン事業部単体で売上を立てられるケースも増えてきましたが、事業部ができたばかりのころは、案件も全然なくて。当然、売上も0円でした

ーー売上0円!? 今では大きな売上を生んでいるデザイン事業部の売上が0円だったなんて、信じられないです…。

小野寺:本当に0円でした(笑)。今やラブソルのメイン事業のひとつになっているなんて、自分でも信じられないんですよね。

ーーどうして事業部の売上を立てようと思えたのですか?

小野寺:うーん…。すごく古めかしい言い方かもしれないけれど、代表の二人に「恩返し」がしたくて。私はこれまで、仕事に悩んだり、離婚をしたりと、人生の中で苦しかった時があって…。その経験から、自分が本当に掴みたいもの、一緒に居たいと思える人に接していかないと自分がだめになってしまうことを学びました。

当時の私を救ってくれたのが、ラブソル代表のお二人なのです。私が心から居たいと思えたラブソルという場所、一緒に居たいと思えた代表のお二人。そこで何もできなかったら、私はもう生きる意味がない私がやるべきこと、したいことは、まずは売上を立てること。その気持ちは自然と湧いていました。

ーー小野寺さんにとって安心する、本当に居たいと思える場所が出来たのですね。

小野寺:そうですね。私は、人と比べてすごく能力が高いわけではありません。美大を出ているわけでもないし。だからこそ、入社して数ヶ月、ちょうどコロナ禍が始まって世界が変化していたころ、「今はまず仕事だけを一生懸命やってみよう」と覚悟を決めました。自分は特別じゃない人間だからこそ、他にやることを減らして、集中しようと。それはもう、退路はないぞ、という気持ちで。

ーー自分の容量の無駄遣いを減らし、覚悟を決めて退路を絶つ。まさに武士じゃないですか! 極端というか、ストイックですよね。

小野寺:そうかもしれないです(笑)。でも、その時の判断は間違っていなかったと、今のデザイン事業部の実績が証明してくれている気がします。

ーーたった一人で始まったデザイン事業部。今では複数のメンバーがいますよね。事業部長として、これからデザイン事業部をどうしていきたいですか?

小野寺:良くも悪くも、「デザイン会社」にはしたくないですね。というか、なり得ないんだと思っています。

先ほどもお話ししたように、私自身美大を出ているわけではないので、私のつくるクリエイティブにはどこか亜流なところがあります。弊社で取り組んでいるビジュアルレポートがいい例かなと。でも、だからこそ評価されるものもあるのだとも感じています。

クリエイティブは、あくまでも手段だという意識を忘れず、クライアントさまの「こうしたい」という気持ちを叶える姿勢を持ち続ける。同時に、クオリティからも逃げずに向き合い、磨いていきたいですね。

ーー前回のインタビューでも、「デザインをするだけのデザイナーにはなりたくない」ということについてはお話されていましたよね。芯は変わっていないのだなと思いました。

小野寺:はい。デザインの力だけだと、私には存在価値がつけられない気がしていて。私たちは、どの分野で、何を強みとして戦っていくのかは、常に考え続けていきたいです。

ーー来月から、デザイン事業部にデザイナーを志す須田が新たに加わりますね! 最後に、須田のようにこれからデザイナーになりたいと思っている人に、 小野寺さんからアドバイスをいただきたいです。

小野寺:デザインとは何か、その答えを自分の中に見つけてもらえたら嬉しいです。その人にとって、一番生き生きとできるもの、瞬間を、大切にして欲しい。

デザインを仕事にするとなると、もちろん楽しいことばかりではありません。ひたすら手を動かす時間は孤独だし、日々納期との戦いだし、いろんな人のいろんな要望をグッと受け止めて、答えを出すような場面は精神的にも肉体的にも負荷がかかるし。正直しんどくて「何のためにやってるだろう。」って思うこともあったりします

それでも私はデザインを続けたいと思う。

なぜなら、デザインを通すことで初めて、人と心の深いところでつながることができると実感しているから。 

これからデザインを続けていく中で、苦しいと感じる瞬間が来るかもしれない。そんなとき、自分にとって「デザインとは何か」への答えを持っていれば、それが羅針盤となって助けてくれるはず。


クリエイティブの力を信じて、一緒に楽しんでつくっていきましょう。

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▷ ポートフォリオ

【書籍イラスト】

『はじめてでもできる!LINEビジネス公式ガイド』(インプレス)のイントロダクションでイラストを制作。
サービスがよりスムーズに理解できるよう、ビジュアル化を担当。LINEさまと一緒にイベントのビジュアルレポートを制作し続けてきたことが生かされています。

https://book.impress.co.jp/books/1121101033

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【WEBサイト制作】

ライター/コラムニストの佐藤友美(さとゆみ)さまオフィシャルサイトのデザイン。
リンクを送るだけで、今と過去の活動を説明することができる。生きたポートフォリオサイトをイメージしています。

https://satoyumi.com/

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【WEBサイト制作】

表参道にある、完全手ぶらで利用できるパーソナルジム「IJK GYM」のWEB サイトデザイン。
同じ建物で美容院も経営しているため、イメージを合わせつつ、双方を利用することによる相乗効果を伝えています。

https://ijk-gym.com

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【ロゴ制作】

ストレングスファインダーコーチをされている齋藤綾治(さいとうりょうじ)さんが代表を務める、株式会社といろさまのロゴを制作。
会社のコンセプトや、りょうじさんの人柄に寄り添ったものに。オフィシャルサイトも弊社で制作しています。

https://10potential.co.jp

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【企業クレドのビジュアル制作】

うぶごえ株式会社さまのクレド制作をラブソルで担当。
更なる浸透のため、クレドをビジュアル化しました。使用するシーンや場所に合わせ、2つのテイストで展開。

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取材:野元 萌乃佳須田 有咲
執筆:野元 萌乃佳
編集:柴山 由香
撮影:池田 実加
バナー制作:須田 有咲
バナーディレクション:小野寺 美穂

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