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アーティスト/デザイナー/画家/決定的な違い。AI時代を生き抜くヒント

「オシャレなデザイン」。


最近引越をして、新しい日用品や家具の情報を集めることが増えてきた私が、やたら目にしてモヤモヤしてしまうフレーズです。

審美眼にかなう品物が購入の決め手になっていることに喜びを感じる一方、「デザイン」の薄付きのイメージに異論を唱えたくなってしまう専門家としての熱量が見え隠れしてしまうのです。

私の立場、つまりデザイナーとは何かを考ると、同族である「アーティスト」や「画家」の存在と対比するとよくわかります。

そこで今回は、薄付きなデザインのイメージを確立するため、芸術分野の根っこを書いていこうと思います。前半は無料で公開していますのでお楽しみ下さい。前半が過去編、後半が未来編です。

無料の目次
・アーティストとデザイナーと画家の定義
・画家が分裂したきっかけ~18世紀と19世紀の境界~
・アーティストの誕生
・デザイナーの誕生
・画家とはどんな職業だったのか



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アーティストとデザイナーと画家の定義

まず、このブログで便宜上の定義します。
「芸術家」という大きなくくりの中に3つが存在し、「画家」のことを「18世紀以前の芸術活動をする者」、「19世紀以降の芸術活動をする者」をアーティストまたはデザイナーとさせていただきます。

何故、年代で名前を分けたかと言うと。
世界史が得意な方はピンと来るかもしれませんが、18世紀、芸術分野に限らず全ての仕事がガラリと変わったからです。
こ18世紀以前は、「仕事」と言えば家で行い、家族と共に営んでいたようです。

しかし、18から19世紀にかけて職場が一変しました。

家で仕事したのが、工場やオフィスに変わったのです。
大勢の人々が、同じ時間に仕事をするようになりました。
いつしか彼等を労働者と呼び、家庭とは時間も場所も別れました。

それが産業革命。機械化のはじまりです。

このブログでは、機械化の影響で激変した世界を境目とし、画家/アーティスト/デザイナー と大きく分けています。
この区切りは、芸術分野を知るために重要な要素です。特に芸術に苦手意識のある方がつまずく原因を解消してくれるかと思います。他にもフランス革命(18世紀)や宗教改革(16世紀)も後押ししていますが、やはり全体を見て激化したのはここだと考えています。

芸術分野が苦手だと感じる理由は、私は主に3つあると考えます。
①基礎知識の欠落(大枠がわかってない)
②専門家の専門家すぎる見解(枝葉の知識合戦が目立つ)
③戦後の学校の教育方針を引きづる(言うことを聞く人が偉い=自発を抑制)

それぞれ根の強い原因で、議論してたら日が暮れそうですが。
このブログの普段から掲げる目的は、①の解決のみに焦点を充てています。できるだけ大枠で核心を突く内容を心がけているので、あなたのお役に立てることを願います。



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画家が分裂したきっかけ~18世紀と19世紀の境界~

先に産業革命による激動の時代を書きましたが、芸術の分野、特にヨーロッパ・フランスでは「フランス革命(18世紀)」も芸術界に大きく与えた要素であります。ナポレオンとかの時代です。

西洋美術の中心地で会ったヨーロッパ諸国では、画家の仕事は大きく2つに分かれていました。


・宗教画家
(一般市民のために聖書を絵で表現したもの、キリストが書いてあるものなど。)
・貴族画家
(金持ちのために書く絵、一般は見れない。当時の歴史書、ギリシャ神話を題材としているものも多い。)

しかし、ここでフランス革命です。

これがきっかけとなり、ルーブル美術館が市民側の所有となるなど、貴族絵画が崩れて行きました。

さらに産業革命により、多くのアイテムは機械製造に任され、これまで手書きで絵を描くのが常だった画家の仕事は衰退して行きます。
しかも写実的な絵はカメラの勢いもあったでしょうし、いよいよ画家という職が危ぶまれてきたようです。

ジョルジュ・ルオーの記事でも少し触れましたが、新しい時代では宗教心が薄れ、教会の壁画などを書いていた宗教絵画の仕事も減って行きます。

「画家」は、画家ではない新たな職を掴み取る必要がありました。



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アーティストの誕生

アーティストの役割とは「自己表現」です。

マズローの欲求五段階説を思い浮かべていただけるとわかるかと思いますが、アーティストが目指したのは、全ての欲求が満たされた先の贅沢な領域です。

これまで画家がしていた仕事(依頼を受けて描く)の先にある、時代が上がったからこそ生まれた職ではないでしょうか。

画家が自己実現で描いていたわけではなく、職として働いていたとされる議論は、ルネサンス期のドイツ画家、クラーナハが複数描いた「マルティン・ルターの肖像」でも触れています。
*クラーナハ“ルター”―イメージの模索 (作品とコンテクスト)三元社; 新装版 ,2006

「芸術家とは、世界の真実を映すもの」

宗教絵画やギリシャ神話絵画を描いていた伝統的な「画家」の職業で培った真理とは、信仰の具現化や神聖な神を民に伝えるためのものでした。

それが発展し、例えば19世紀に活躍したアンリ・マティスは、写実では表すことのできない、第一印象の新鮮な状態や感動を表現しているのだと述べています。

全の真理を描いた画家は、個の内側にある感受性や感情に目を向けて、芸術の真髄を模索する者へと発展して行きました。これが、アーティストの正体だと考えます。



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デザイナーの誕生

また産業革命に順応し、大衆のために芸術活動を行ったのがデザイナーです。画家が自己実現、つまりごく少数に響くモノに対し、デザイナーは大量生産が可能となった世界に羽ばたいて行きます。

しかし激闘の時代に勝ち残ったデザイナーは、しばしば下請けに回ることが多かったようです。
20世紀のアーティスト,デザイナー,教育者など様々な顔をもつブルーノ・ムナーリも、自著で言及しています。


それでも、πが大きくなる業界では、優劣に関係なくデザイナーという職業が活躍できたのではないでしょうか。

しかし先にも述べたとおり、デザイナーは「芸術家とは、世界の真実を映すもの」を、大衆に向かって行った者です。

現在のコンサルタントに近い、会社そのもの/業界そのものの真実を映す職業と言えるでしょう。



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画家とはどんな職業だったのか

元来、画家とはアーティスト寄り、つまり自己実現の象徴だと考えられてきました。

しかし、アーティストのような職業は19世紀以降の思考であり、それまでの画家とは「仕事として、絵を描いて」いました。

そのため、18世紀以前の絵画というのは、とても説明的、図式的な側面も持ち合わせています。

例えば絵本の挿絵を見るように、最後の晩餐などを鑑賞することができます。

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wikipediaより

宗教絵画は、日本人の私たちにとっては馴染みの薄い分野かもしれませんが、基本的に聖書が読めない民衆に向かって描いているため、何かを説明していることは伝わるかと思います。

また、神様や貴族を描くことが多かった画家。

特に神はより神聖で信仰心を仰ぐモノでなければならないため、基本的に画家の描く絵画はわかりやすく美しいのが特徴です。

つまり良い画家の見極め方は2つ

・説明がわかりやすい(わかりやすそう)であるか
・見て美しいかどうか

でまずは判断できる分野となります。皆さんも、美術鑑賞の際には、絵画の年齢をチェックして、18世紀以前のものだったら上記2点に注目して見てくださいね。


有料の目次
・産業革命再び、AI時代の芸術家
・手間賃の無価値化
・未来のアーティストに待ち受ける困難
・デザイナーの二分化!ぼーっとしてると無賃労働に
・芸術思考の鍛え方

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

前半では、過去を振り返り、芸術の分野がどんな道のりを辿ってきたかを大きなくくりでお話してきました。後半は、未来に待ち受ける内容となっております。人口減少やハイテク化、グローバル化に伴い、未来は大きく変わっていくでしょう。

エクサスケールの世界は、もうすぐそこまで迫っています。

芸術分野は人工知能は出来ない領域だからと踏ん反り返っていることが、いかに愚かな行為か。その理由をお話します。


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