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【アートのミカタ20】クラーナハLucas Cranach der Ältere

【概要】ルネサンス期、生粋のドイツ画風

北方ルネサンスを代表するドイツ画家ルーカス・クラーナハ(クラナッハ/クラナハ)。1472-1553年

イタリア・ローマを中心としたルネサンス期(14~16世紀)に、ローマより北側の国や地域を「北方ルネサンス」と総称しています。
これは北方ルネサンスが、本場ローマのルネサンスに対抗して独自の道を歩まんと奮闘する地なのですが。

そんな場所で、クラーナハはどのように画家としてのキャリアを築いていくのでしょうか。

なぜ美的センスをくのか。科学の発展に伴い、心を作る芸術的思考もより広く知ってもらいたい。
このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテーマに、少しでも多くの人にアート思考を築くきっかけにならないかと書いています。
まずはそれぞれの画家の特徴を左脳で理解し苦手意識を払拭するのがこのブログの目標です。その後展示等でその画家に触れる前の下準備として御活用下さい。私たちの味方となり、見方を変える彼らの創造性を共有します。

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【背景】宗教改革と画家

クラーナハを語る上で、ドイツの神学者マルティン・ルターの話を軽く挟んでおきましょう。

教科書にも登場する彼の肖像画を、クラーナハは数多く描いています。

マルティン・ルターの肖像 (1529年)ルーカス・クラナッハ

1517年より始められたと言われているルターの宗教改革は、indulentia日本語で「免罪符」と呼ばれる文章を発表しました。「贖宥状」の訳の方が意味が近いのではという研究者の声もあるようです。

ラテン語で書かれたことから、当時はエリート層に向けた?論文みたいなもので発表したのだと言われています。

内容は文字の通りです。
「罪を免じる」、別訳でいえば「罪により発生した罰を免じる」です。

この頃、ライバル地域であったローマより発生した宗教の広まりに対抗すべく、ドイツ勢力が盛り上げた発言だったようです。「俺たちの国もすげーぞ」アピールですね。

アダムとエヴァ,1528年クラーナハ

そこでルターを盛り上げようとしたドイツ勢力が、ルターの肖像画を依頼したのが、生粋のドイツ画風をもつクラーナハだったようです。

アダムとエヴァ,1507年アルブレヒト・デューラー

ちなみにこの同時期、同じ国ドイツで活躍するデューラーという画家もいました。2つを見比べると、デューラーの方がイケメン美女だし、プロポーションも格好いいですよね。

しかしドイツ勢力は
「なんてローマかぶれな画家だ!!」
と(怒ってはいないと思いますが、)そんなこんなでお願いしなかったみたいです。確かにデューラーがイタリアの絵画を最も研究したドイツ人画家とも言われています。デューラーも、ドイツ的な構図にイタリア的技法を掛け合わせた面白い画家なので、追々取り上げていきたいです。


まあ、要するに、クラーナハとはとってもドイツらしーい有名画家だったようです。

【核心】ドイツ的な審美眼

国らしさが自国の食べ物に現れるように、ドイツらしさはクラーナハの作品からも垣間見れるように思います。

確かに、私たちから見ると西洋美術とは本場ルネサンスの、科学的・写実的な作品を思い浮かべてしまうため、対するドイツ画風のプロポーションは大変奇異に映ります。

少し暗っぽいというか、怪しいし、ぺったりしている。

しかし、「プロポーション」という目で見ると、我々日本人の祖先が築いた水墨画や浮世絵に描かれた人間や動物の方が、よほどアンバランスで奇異でしょう。イタリアとドイツでは、国が違うのだから美的感覚の歴史が違うのは当然です。

補足。西洋美術、特にローマ的な芸術には、解剖学に基づくデッサンなど、とても学術的な面を持っているのではないかと考えられています。
これは科学技術の進歩と共に、政治的に芸術を活用したからです。宗教画は、文字の読めない庶民に対し、より強い信仰心を芽生えさせようと、彫刻や壁画が描かれました。また、ルーブル宮殿に画家や彫刻家、職人たちを住まわせた(自分のお城に芸術家を住まわせた)という歴史もございます。

ルクルティア,1532年 ルーカスクラーナハ

ドイツといえば(あまり詳しくないけど…)、寒くて、いつも雲がかっている風土。今では森は伐採されてひらけた土地も多いようですが森は深い黒色。

また物語ではグリム童話を想像させ、ファンタジー感の中に潜む怪しさとか身に迫る緊迫感を思い出されます。

ドイツ料理は「肉!!」「じゃがいも!!」といった豪快なイメージ。大きなお皿にちょろりっとしか肉が載ってないフランス料理と違い、なんとも食べごだえのあるというか、見た目を気にしないような風潮があると思います。

そんな民族から生まれた、民族らしさを象徴するクラーナハの絵画作品は、見るだけで小旅行をしたような気分にさせる程です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。
画家一人一人に焦点を当てると、環境や時代の中で見つけた生き方や姿勢を知ることができます。現代の私たちにヒントを与えてくれる画家も多くいます。
また次回、頑張って書くのでお楽しみに。


いつもたくさんのご支援・ご声援、ありがとうございます。