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その56)人は働かなくなるのか

ベーシックインカムが施行されると「働く人がいなくなる」という意見を聞くことがあります。実際に世界各地でベーシックインカムの実験をしたところ仕事をやめた人はわずかだったそうです。それに対しても「実施期間に終りがあるなら働き続けるだろう」という意見がありました。実際にベーシックインカムが施行されたとしたら「いつこの制度が廃止されるかわからない」という噂は絶えないと考えられるので、やはり辞める人は少ないと考えるのが自然なようです。

転職サイト「ミドルの転職」が2019年に実施したユーザーアンケートでは、ベーシックインカムで最低限の所得が保証されたとしても89%の人が「働き続ける」と回答しています。あなたならどうしますか。

私が想定しているベーシックインカムの世界は汎用AIや汎用ヒト型ロボットが人間の仕事とどんどん代わっていき、ベーシックインカムはCBDC(中央銀行デジタル通貨)で生体認証によって配布されるUBI(ユニバーサルベーシックインカム)、CBDCに非対応の物資は地域通貨の発行で補完されている世界です。ベーシックインカム以外に収入がある人は、株式や債券など資産形成に成功した人や、ベーシックインカムのライフインフラに関わる事業者、政治家などが考えられます。

残っている雇用は代替が難しいエッセンシャルワーク(社会の中で必要とされる仕事)や土木関係など高度なテクノロジーが必要な分野です。公務員もホワイトカラーの仕事がなくなり、リスキリングによってこの領域での仕事が増えました。仕事の難易度はAIやロボットのおかげで低くなっています。

ベーシックインカムに追加する収入が欲しい人が多いので、1人分の仕事を3人でシェアするケースも増えています。一般市民は接客と土木が人気で、公務員は保育や介護、防災支援、治安維持などが人気です。

雇用が収入を得るための活動であれば、それが得られない人とか働かない人々は何をしているのでしょう。

例えば、介護や育児など人の手が必要なものは地域のコミュニティが発達して、ボランティア的に動く人が増えていると思います。また、食料の調達も高齢の年金生活者のように、家庭菜園を頑張る人が増えているでしょう。学生は将来の活躍を夢見て勉強し、サッカーのクラブハウスなどでは明日のスーパースターを夢見て多くの子供が練習にせいを出していると思います。多くのことがコモディティ化した社会であっても、社会をより良く発展させるべく起業を志したり、人件費は後回しにして仲間を募って事業を起こす人もいるでしょう。

資本主義経済社会では、とにかく競争に勝ってお金が儲かることがいちばんで、負けた人は生きていけない社会でしたが、ベーシックインカム社会では、資本主義の競争に負けても、競争に加わらなくてもなんとか生きていける社会です。

私は、こんな時代は自由な文化が発達したり、夢を叶えたり、色々チャレンジしたりする人が増えて、自己実現がさかんな時代になっていると想像しています。

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