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「北島亭のフランス料理」と料理コンクール

こんにちは
もうすぐ料理人歴30年になる、ラ・フェ修家です。

「北島亭のフランス料理」

この本には思い入れがあり、何度も読み返しています。

この本が出版された時期は、当店のオープンと同じ2003年です。
ですので、オープン当初に買ってよく読んでいました。

なぜこの本を手に取ったかと言いますと、フランス料理コンクールの決勝で東京に行った時に、フレンチレストランを食べ歩き、おいしさがいちばん印象に残り、親切な対応をしてもらえたので、料理以外の厨房の裏側を知りたくて本を買いました。

当時の僕は27歳で、ホテルの料理人をしていました。
18歳で入社して9年目の時期に、コンクールがあるので応募したい人はいますか?と通知があったので、日頃の仕事の成果を試すのと、全国レベルを知りたくて、応募させてもらいました。

それがこちらのコンクールです。

最初に指定された食材とテーマを使った書類審査があり、それに通過したときは驚いて、それだけで満足するほどうれしかったです。

書類審査が通ると、準決勝に規定の料理を作る審査があります。
その規定の料理は、今でも忘れはしない

「うずらのノルマンディー風」

この料理は中抜きしたウズラとリンゴをパイで包みオーブンで焼き、うずらの骨からジュ(濃いめの出汁)をとって、ソースを作る料理です。

制限時間内で作るためには、かなり作業スピードが必要でしたので、業務終了後に、何度も作って練習をしました。

会場のオーブンなどの機材は、はじめて使うので不安もありましたが、なんとか制限時間内に仕上げて完成させました。

審査員のフランス人シェフに「肉の焼き具合がよかった」と言ってもらって嬉しかったです。
かなりスピーディーに作業することを意識して、オーブンで焼く時のルポゼ(焼いた後に内部の肉汁を落ち着かせるために休ませること)の時間が取れたのがよかったです。

肉は焼き加減が命です。

これで最高の焼き上がりになりました。

結果は準決勝通過で、ついに決勝戦です。

決勝戦のテーマは、鯛を使ってノルマンディーのイメージで作る料理でした。

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ノルマンディー地方といえば、フランスの北部で、乳製品、りんご栽培などが盛んです。
ですので、リンゴ、シードル、クリーム、バターなどを使って作りました。

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鯛のガトー、シードル風味の野菜のブランケット添え

受賞はできませんでしたが、全力を出し切ったのでいい経験になりました。

この時に行ったお店のひとつが「北島亭」です。

コンクールなのでひとりで東京に行って、1名で予約の電話をいれました。

スーツを着てスーツケースを持って入店すると、いかにも若い料理人が田舎から勉強するために食べにきたという雰囲気です。

お店の方(マダム)も察してくれたのか、ひとりで料理を待っている僕に、料理書を持ってきていただけました。

味の方は、うわさ通りにびっくりするほどのおいしさでした。

定番のウニとコンソメジュレーと魚料理、子羊のロースト、デザートを注文しました。

特に印象に残ったのが魚料理で、ヒゲダラのポアレとフォアグラのソテーにトロンペットのソースでした。
ヒゲダラとフォアグラの相性の良さは驚きでした。

食べ終わったら、最後はご夫婦で出口まで見送っていただきました。

この経験から、北島素幸さんの関連の本はほとんど買って持っています。

そしてこの「北島亭のフランス料理」の本は、そのレストランの裏側が時系列にリアルに描かれています。

本が使いすぎて、汚れるほど読んでます。

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お店の開業当初の事から、朝の仕入れ、仕込み、準備、掃除、賄い、教育など個人店のレストランを経営している人には、すごく参考になります。

特に水の節約が印象的で、食材も水も無駄なく使う姿勢などは学ぶところが多いです。

仕事のほうは、今で言うとブラックな環境かもしれませんが、いいお店の料理や仕事のノウハウは、お金を出してでも習う価値があると思います。

また食べるお客さん側も、この本を読むと飲食店のイメージが変わるかもしれません。

働くとは、仕事とは、プロとは、の考え方のひとつとして、飲食業の人でなくても読むと学びになる本だと思います。












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