Lifestyle|A slice of life〈02.森で過ごす時間と春の訪れ〉
a slice of lifeでは、ライターがリレー方式でフィンランドの美しい一コマを紹介します。今回は、アアルト大学に在学中のまりこさんにフィンランドの春の訪れを伝えていただきます。日課にしている森の散歩は、季節の変化を感じたり人との結びつきを深めてくれる大切な時間だと言います。
フィンランドに来てから思うのは、フィンランドの人は森で過ごす時間をとても大切にしているということです。フィンランド国土の70%が森のため、都心でもすぐそばに森があり、多くの人が森で散歩やランニングをしています。ベビーカーを走らせながら、ランニングしているお父さんやお母さんがいたり、冬はクロスカントリー、凍った湖でスケートをしている人もよく見かけました。そんな森を歩いて出会った人や、春の訪れを感じたことをお話ししたいと思います。
森での散歩時間
「ヨカミエヘンオイケウス(Jokamiehenoikeus)」という言葉がフィンランドにあります。これは森へ入ることや自然環境の享受をすべての人に対して認める権利を意味します。基本的にブルーベリーなども自由に取ることができます。誰もが森に行けることが国によって守られているというわけです。
私の近所にも森があり歩くことを日課にしています。森を歩いていると様々な人に出会うことができます。初めはフィンランド語で話しかけてくれますが、私が話せないことを分かるとスッと英語に切り替えてくれます。
ある時、3匹の大きなワンちゃんが私に同時に猛ダッシュしてきました。飼い主さんも「好奇心が旺盛な子達でごめんなさいね〜」と。そのワンちゃんたちにはそれから何度か会って、飼い主さんともちょっとしたお喋りをするようになりました。森の中ではリードを外して散歩をしている人が多いので、犬と触れ合うチャンスです。
また別の日には、この記事のために一眼レフを持って歩いていると、おじさんが「いい写真撮れた?街の中でもこんな美しい森があっていいよね」と声をかけてくれました。近所に住んでいるそうでまた会えたらいいなと心がほっこりしました。こんな森の中での出会いがリモート授業の多い今、私の癒しとなっています。
森での散歩中は携帯を通知オフにし、見ないようにしています。そうするとメールやSNSから解放されて、木々をボーっと眺めたり、鳥のさえずりを聴くことができ、思考の余白時間を作ることができます。その余白時間のおかげで、悩んでいたことを客観的に見られたり、思わぬところで考えがつながり、新しいアイディアを閃くことがあります。フィンランド人の友達も森での散歩は瞑想に近いと話していました。
毎日同じ森を歩いていると、小さな変化にも気づくようになります。最近は雪が溶けてきたので知らなかった森が現れたように見え、変化に驚いています。まず鳥の声がとても賑やかになり、雪が積もって見えていなかったところに岩山があったのかと気づくこともありました。
下の写真は同じ場所、同じアングルから撮った松の木で、左が1月、右が4月に撮ったものです。春の訪れがよくわかると思います。
春を告げるイースターも
みんなと森へ
そんな森で拾った葉っぱを使って、イースター休暇に、友達と卵に色付けをしてみました。
小さい頃にやっていたからと、ラトビアからの友達が卵へのナチュラルな色付けの仕方を教えてくれました。今回はターメリックやサフランで染める方法と玉ねぎの皮で包んで煮詰める方法を試しました。
みんなで思い思いに卵を飾って、煮詰めて、開いてみるととても綺麗な色と模様になっていました。色をつけた後はゆで卵としていただきます。
フィンランドのイースターは宗教色が薄く、コテージに行ったり、家族で集まったりと春の訪れを祝うものだそう。私は猫柳とチューリップを飾られた友達の部屋で、それぞれが持ち寄ったご飯をのんびりと味わい、みんなで森を散歩して過ごしました。
オンラインで話しているのとは違い、森で歩いていると心がほぐれてきて、友達に悩みを打ち明けて相談に乗ってもらったり、相談に乗ったり、友達との心の繋がりが強くなったのを感じました。
フィンランド人の友達の家を訪れると必ずといっていいほど、森を一緒に散歩します。フィンランドの人にとってどれだけ森での時間が大切かこちらに来てよくわかりました。そんな中でもIT先進国と言われているフィンランドでは、基本的な行政手続きはオンラインで行うことができ、教育でのIT化もとても進んでいます。自然とデジタルがうまく共存している社会だなと実感します。森を散歩することで、デジタルとよりうまく付き合えるようになれたように思います。
そんな森での散歩途中に見えた虹を、最後に皆さんにプレゼントします。
Instagram: ma10ri12co