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「ブラック企業で働くなんて御免」大学卒業後、3年間“積極的ひきこもり”を選択した青年。社会復帰への道筋は…

海外のある国では、大学を卒業しても就職が難しいか低賃金の労働しか見つからないため、若者たちが自宅にこもる「ひきこもり」の状況が社会問題化しています。ある男性は、就職を拒否し積極的に引きこもり生活を3年間経験しました。彼が立ち直るきっかけとは何だったのでしょうか? 現在は自立し、一人暮らしをしている彼がどのように仕事を見つけ、立ち直ったのかを聞いてみました。

「神童」と呼ばれた幼少期

幼少期、彼は普通の子どもと同じように生活しつつも、学校での成績の良さから教師たちの注目を集めていました。

「子どもの頃は、おもちゃの銃で遊んだり、近所の友達と一緒に遊ぶことが多かったよ。トラブルは特になかったけど、何か物足りない感じがしていたんだ。
小学校では、8年間もトップの成績をキープしていたんだ。その中で、特に印象に残っているのはある数学の先生の存在だ。普段は普通の数学の先生だったけど、放課後には数学コンテストの準備や追加のサポートをしてくれた。コンテストではよく次のステージに進めたし、彼女と一対一で勉強することもあった。彼女との数学の勉強は本当に楽しかった。そのおかげで、小学校の先生たちはずっと私の頭の良さ、特に数学の才能を認めてくれていたんだよ」

「成績が悪ければ罰を与える」両親にうんざり

小学生時代、親や学校の先生たちから頭がいいと注目されていた彼。このままいけば、順調に明るい未来が待っているかのように思われました。しかし、高校に入ってから少しずつ状況が変わり始めたのです。

「高校に入ってから勉強の難易度が上がったけれど、成績はまあまあだった。自分では成績表が4でも5でもそれほど気にしていなかったけど、高校2年生のときに、親が私の成績に口を出し始めたんだ。彼らは私の成績が悪いとゲームの時間を制限するなどの罰を与えてきて、それが原因で口論が増えたんだ。高校3年生になると、ストレスが頂点に達したよ。

そんな状態だったにも関わらず、レベルの高い大学に行けたことは自分にとって大きな成果だった。ただ、同時に成績がそんなに重要ではないことに気づいたんだ。実際、授業に参加しなくても減点されないクラスもあったから、自由な大学生活を謳歌していたんだ」

長年のコンプレックスからの脱却

子どもの頃から天才肌で、勉強が良くできたという彼。友達との交流はどうだったのでしょうか?

「学校でいじめられることはなかったものの、子どもの頃から内向的な性格で、積極的に自分から友達の輪に入るタイプではなかったんだ。そんな自分が変わったのは18歳のとき。きっかけは14歳頃からつけていた歯列矯正を外したことで、歯に対してのコンプレックスが解消されて自分に自信が持てるようになったこと。そこから少しずつ社交的になってきたかな。パーティーにも行くようになって、お酒も飲むようになった。
それから女の子との関わり方も変わってきたな。以前は全然モテなかったけど、高校後半になるとなんか変わり始めて、女の子からもモテ始めて頻繁に彼女を作るようになったんだ

「ブラック企業で働くなんて御免だ」

大学卒業後、多くの学生は就職活動を経てさまざまな企業に入社し働くことになりますが、彼は就職活動すらしなかったといいます。

「私が住んでいる国では、日本でいうところのブラック企業が多く、安い賃金で長時間働かせる企業も多い。大学を卒業してからわざわざそのような企業に就職する気はなかった。実際、大学を卒業してからは、たまにちょっとしたバイトをするくらいで、ほとんど家にいて特に何もしないで過ごしてたよ。幸いなことに、家に引きこもっていても友達や彼女はいて、彼らと出かける時は、親がお金を渡してくれてたんだ」

彼の両親は、自宅で引きこもるよりも、外で友達や彼女と交流しているほうが社会復帰へのきっかけがつかみやすいと考えていたかもしれません。一方で、仕事をしていない彼は、毎日家でどんなことをして過ごしていたのでしょうか?

「毎日、ただひたすら時間があったから、好きな映画を見たり、本を読んだり、ビデオゲームをしたり、新しいことを学んだりして過ごしていた。今思い返しても、この時間は自分の人生にとってすごく貴重な時間だったと思う。本や映画、ゲームにたくさん触れることで、物事を深く掘り下げたり、関連性について学んだりできたからね。この時間があったおかげで、同世代の人たちと比べてより専門的な知識が増えて、考え方も深まったよ。普通の人には時間が足りないからね。自分の人生を楽しむ方法を見つけたんだ。

ひきこもっている間は、友人や彼女もいたけど、時々、孤独を感じることがあるんだ。この先、自分の人生がどう進めばいいのかわからないときもあって、絶望的な気持ちになることもあった。でも、その一方で引きこもり生活の中で、ひとりの時間を楽しむ幸せを見つけることができたんだ」

ひきこもりからの脱出。きっかけは…

彼の引きこもりは約3年間続きましたが、その生活を変えるきっかけとなったのは何だったのでしょうか?

「就職のため弟が家を出ることになって、私も一緒に引っ越して二人で生活を始めたんだ。実家には両親と祖母が残るだけで、居心地があまりよくなかったからね。弟に引っ越しを提案したら、すぐに了承してくれたよ。ただ、弟の世話になるわけにはいかないと思って、すぐに仕事を見つけようと決めたんだ。オンライン英会話の仕事を見つけて、最初は収入があまりなかったから、生活費はほとんど弟に助けてもらってたんだ。それで1年後、弟が転勤で別の街に引っ越すことになったから、実家に戻ることにしたんだ。

私たち兄弟が実家を出た後、両親は離婚し、実家を去ったんだ。祖母は一人で実家に残ったけど、幼い頃から交流がほとんどなかったし、関わることもなかった。孤独を感じることもあったけど、一人暮らしのような感じで気楽さもあった。なによりも実家にいれば家賃はかからないからお金も貯まるしね」

英語が上手な生徒に教える怖さ

ところで、3年間のひきこもりを経て英語講師として働きだした彼。初めての仕事は順調にいったのでしょうか?

「学生の頃から友達に勉強を教えていたから、英語を教えること自体はそれほど問題なかったよ。しかし、私は内向的な性格だったから、初対面の生徒と話すのは得意ではなかった。また、生徒によって英語のレベルはバラバラ。文法や発音、ニュース教材でのディスカッションなど、教える内容も多岐にわたっていた。なかには私よりも英語がうまい生徒もいて、正直、不安というか恐怖を感じたこともあった」

数か月で英語力が飛躍的に向上

当時、彼は、英語のスピーキングは得意だったものの、リスニングやリーディングはまだそれほど高いレベルではなかったといいます。しかし、生徒に英語を教えることで、自分自身も英語を学び直すこととなり、この経験が彼の英語力向上に大きく役立つことに。

「英語を教え始めて数か月経つと、自分の英語レベルが上がって自信がつき、指導方法もどんどん良くなってきたんだ。仕事に慣れてくると、生徒にどうやって高く評価されるかや、新しい生徒を集める方法、さらに収入を増やす戦略についても考える余裕が出てきたんだよ。

この仕事は本当にやりがいがあり、毎日充実した日々を送れているよ。最初は英語初心者に分かりやすく教えることに集中していたけど、5年経った今は、英語中級や上級の生徒との会話を楽しんでいるんだ。生徒との会話はとても楽しくて、自分の知的好奇心も刺激されて、仕事がより楽しく感じられるようになってきた」

リアルな友達とオンラインの生徒

彼は、英語講師として働き始めたことで、英語力が上がり毎日が充実していると語ります。この経験が彼の人生の見方にも変化をもたらすことに。

「少しずつ、だけど確実に人生に対して前向きにとらえられるようになってきた。学生時代やひきこもりの期間は、物事について常に斜に構えていたし、楽しいと感じることが少なかった。自分の人生に後ろ向きな姿勢を持っていたんだ。その頃は、バスケットボールやクラブに行ったりと友達と遊ぶこともあったけど、活動が主体で深い話をする機会は少なかったから、その友人たちをどれだけ深く知っているかといえば、正直、疑問を感じることもあったんだ」

彼の心境に大きく影響を与えたのは、英語を教えることによって生徒たちと信頼関係が築けるようになったからかもしれません。子どもの頃の彼は、知能の高さゆえまわりの子どもたちと話が合わなくて孤独を感じたり、大人たちからは優秀な成績ばかりが注目されて、彼自身を見てもらえていないと感じていた可能性もあります。

人とのつながりや交流を楽しむ場

「オンラインで英語を教えるときは、会話が中心なので生徒の話に集中しやすく、生徒とのつながりが現実の友情よりも強く感じられることもあるんだ。以前は雑談をつまらないと感じていたけれど、実は深いつながりや議論の基盤になっていることが理解できるようになってからは、その重要性に気づいたよ。今は、生徒の英語の上達よりも、彼らが私のクラスにきて、心からリラックスして会話を楽しみ、これから先より幸せな人生を送れることに焦点を置いているんだ。

オンライン英会話は、英語を学ぶためのプラットフォームとしてだけでなく、人とのつながりや交流を楽しむ場としても役立っていると思うよ。仕事が終わった後に、世界中の気の合う仲間と英語で雑談することで英語の勉強にもなり、仕事のストレスから解放されることもできる。さらに、孤独感を解消する手段としても重宝されているんじゃないかな。手ごろな価格で利用できるし、自分のペースで受講できるので、忙しい人にも利用しやすいだろうね」

学生時代に感じた鬱屈とした気持ちやひきこもりをしていた際の孤独感を十分に知っている彼だからこその視点かもしれません。

シンプルで満足度の高い暮らし

前は、人生に対して暗い気持ちを抱えていた彼も、英語講師の仕事についてからは今の仕事を心から楽しみ、充実した日々を送っているようです。

「最近の自分の人生は、自分が望んでいた方向に進んでいると感じるよ。今は実家を出て自由で快適な一人暮らしを送っている。生活費もしっかり賄えている。朝起きてシャワーを浴びたり歯を磨いたり、服を着たり髪を整えて通勤するというルーチンに縛られることもない。毎日自宅にいながら、いろんな生徒たちとの交流を楽しんでいるよ。好きなことをしてお金が稼げるなんて、本当にいい仕事だよ。

収入も十分で、シンプルな生活が快適だよ。自分の欲求はそれほどなくて、贅沢をするわけでもない。大切なのは、この仕事で満足できることと自由に過ごせることなんだ。自分は怠け者だと思ってるけど、毎日を楽しんで過ごせることが何より大事なんだ」

”引きこもっている時間”をどう過ごすか

私は、ライターとして多くの人に会ってきましたが、その中でも彼は天才肌の一人です。彼は”積極的なひきこもり”期間中に、自己成長と学びの時間を大切にしました。自宅でさまざまな知識を習得し、特に思考力や分析力、観察力、批判的思考力を鍛えることに重点を置きました。この経験が彼の能力を磨き、仕事環境で大いに活かされることとなったのです。

弟が自立するタイミングで、彼は仕事探しを始めました。彼のレッスンスタイルは、最小限の労力で最大の成果を上げることに特化しており、生徒からは高い評価と信頼を得ています。

彼の人生は「積極的引きこもり」期間を経て大きく変わりました。自己探求と学びの時間が、彼の現在の成功に繋がっているのではないでしょうか。




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