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言い訳する相手にバイバイ

 煙草を辞めたからベンチに座らなくなったけど、十年前にキミの隣が空いたから、また座る理由ができた。

 「ねえ、わたし思うんだけどさ」そんな前置きをしてから、いつだったか君が言っていた。バイバイを言うのは、また会いたいと思ってくれている人で、そういう人ほど「死んでくるわ」みたいなことを笑った顔で言いながらそこに向かって行くから、怖いと。
 そのときのボクは分かったような顔をして、分からないのを隠していた。

 今日、キミは知らない街へ行く。
 ボクは煙草に火を点けた。ベンチに座る理由が必要になったんだ。キミはもう怒らないらしい。ボクはその理由を分かったような顔をして、分からないのを隠してる。
 急に夜のドライブに出かけたくなって、雨だというのに外へでた。車窓を流れるのは雨だと思う。ボクは、分からないのを隠してる。
 

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