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寂しい別れと、ワクワクな明日

全くのわたくしごとですが、4月いっぱいで美術館の仕事を辞めて、5月から「普通の」会社に勤めるべく就職活動をします。
「現実社会」に戻ることにしました。

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2017年5月、ピーテル・ブリューゲル『バベルの塔』に出会い、突如 絵画鑑賞の面白さに気付かされました。いくつもの美術展に出かけ、何冊も美術本を読むことに夢中になるだけでなく、それまでの仕事を辞めて美術館で働き始めたのが2018年6月。

我が家の『バベルの塔』(玄関にて)

それまで全く美術と関係のない生活を送ってきた私の仕事は、正規の職員でも、もちろん学芸員でもありません。ただ職場が美術館というだけです。
それでも毎日、日本で一番好きな場所に通って、その中で過ごすことができます。展示室にも自由に出入りできるのです。
日中は展示室の隣にある 職員・学芸員さんが居る建物で働いていたので、打ち合わせ、来客、スケジュール、メールなどから、美術展の企画、立案、決定、準備、実施、そして片付けまでの流れを知ることができました。
何という恵まれた環境なのでしょうか。

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美術鑑賞に目覚めるまでの私は仕事一筋ひとすじ人間。
書類を家に持ち帰り、寝る直前まで、そして朝目覚めた直後から仕事のことを考えていました。
夢中になる趣味も持たなかったし、友人の誘いも「忙しいから」と断りがち。
ゆっくり本を読むこともなく、本屋さんでたまに手にするのは仕事に役に立つものばかり。忙しい時期には食事を摂るのも忘れて仕事をしていました。残業なんて当たり前、睡眠不足で体調を崩すこともよくありました。

しかし、この6年間は大好きな西洋絵画のことをずーっと考えて過ごしていました。
持ち帰る仕事は何もないので、美術館を出たら次の休日に訪れる美術館のことを考えたり、通勤電車ではフォローしている美術館のInstagramを見て楽しんでいました。

毎朝、職場の最寄駅にある喫茶店でコーヒーを飲みながら一時間以上 iPadを開いて美術作品の画像を見たり、noteの記事を書いていました。
記事を投稿するために資料を読んで、新たな発見に驚き、これは記録しておかねば!とキーボードを打ち込む毎日。
次は何について投稿しようか … と考えて調べものをする時間が至福の時でした。

主に古本屋さんで集めた我が家のコレクション(一部)

やさしい気持ちで心穏やかに過ごせた6年間は、夢のような毎日でした。

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そんな生活を送っていたので、「現代」社会から距離ができてしまいました。
テレビは以前からあまり見なかったのですが、芸能界、流行りのドラマはもちろん、現実の出来事にあまり興味が持てなくなり、ニュースもほとんど見ていません。
最新のAIはもちろん、どんどん新しくなるパソコンをはじめ機器操作もついて行けないかも・・・。現実の社会とは別の世界に生きていたのですね。

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今回美術館を辞めようと思った理由はいろいろあるのです。
一週間に2〜3日休みがあり、たっぷり睡眠・栄養がとれたおかげで体調はすこぶる良くなりました。
しかし土・日のどちらか1日と祝日は必ず出勤。美術館が忙しいG.W.やお盆、年末年始もあまり休みが取れません。
旦那さんと過ごす時間が少ないのが悩みの種でした。

そして一番大きい理由は。。。
ふと “私はあと何年働けるのかなぁ” と考えたことです。
健康であるならば10年は絶対働きたい!できるならば15年は・・・と思っています。
でも現状のまま?

今は「仕事」をしている、という実感が全くありません。
美術館で私ができることは限られているのです。もちろん縁の下の力持ちにはなれるのですが、それは私でなくても良いかも知れませんね。

目標を立てて その達成に向かって試行錯誤する、うまく行かず苦しむ。
チーム・メンバーと意見を衝突させながら、全員で前に進んでいく。
問題解決のために事実把握・分析、アイディアを出して実行。。。そしてそれが誰かのお役に立てたら嬉しいなぁ、と考えた次第です。
以前のように。
元来働くことが好きな私は「仕事」ができなくなってから後悔するかも知れません
「何でもできる時に、何でもやっておけばよかった」と。

大好きな美術に携わる場所で「仕事」ができたら良いのですが、そんなに甘い世界ではありません。好きな美術館に通って記事を書いて食べて行けたら良いのですが、そんな実力もありません。
6年近く夢のような毎日を遅れたのですから、そろそろ踏ん切りをつけるべき。
やるなら明日ではなく今日、今ですね。

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大好きな 西洋美術に “関する” 業務に携われて、最高に幸せでした。
これからは平日にゆっくり美術館を巡ることはかなわず、じっくり美術本を読んだり調べごとをする時間は限りなく短くなることでしょう。
仕事に慣れて自分のペースが作れるまでは、1回/週を目安にしていたnoteへの投稿も頻度が落ちるかも知れません。これまでは気がつくと延々と下書きを書き続け、投稿する際にかなりの部分を削っていたnote記事が、短くてあっさりしてしまうかも知れません。

しかし、どんなに忙しくても美術館に足を運び、本棚にずらっと並ぶ図録や本たちをときどき開いて、ワクワクしたいと思います。

シャンティイ城に続く道(2019年撮影)

明日に続く道は希望に満ち溢れているのです。

note投稿は、今後もずっと続けていくつもりです!
これからもよろしくお願いします。

<終わり>

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