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[論文メモ] アオウミガメの地図感覚

Hays et al.
Open Ocean Reorientation and Challenges of Island Finding by Sea Turtles during Long-Distance Migration
Current Biology, vol. 30, 16, P3236-3242.E3 (2020)
https://doi.org/10.1016/j.cub.2020.05.086


問いと背景

外洋を泳いで小さな島や餌場に長距離移動するアオウミガメは、何に頼ってナビゲーションしているのか。

→ 人工衛星タグでウミガメを追跡した研究は数多くあるが、ほとんどが本土の沿岸域への移動(=ナビゲーションの難易度低め)を記録したもので、外洋の小さな島や餌場への移動を記録した例は少ない。
※ これがかなり意外だった


実験方法

アオウミガメが産卵場の砂浜から特定の餌場へ移動する際の経路をFast-loc GPSで記録(33頭)。
→ 1日数点の位置データを6時間間隔(=1日4点)に線形内挿。

→ (たぶん実際の海流環境を仮定して?)シミュレーション推定した2種類の経路と比較
  ・6時間おきに餌場に定位し直す = precise true navigation
  ・特定の方位に体の向きを維持したまま進む = simple compass orientation


主な結果

・アオウミガメの経路は、シミュレーション経路から大きく外れている場合がほとんどだった。
→ シミュレーションで想定したようなメカニズムでナビゲーションしているわけではなさそう。

・餌場にピンポイントで到着したケースはなく、行き過ぎたりあさっての方向に進んだりした後、うろうろして目的地に到着していた。
→ "pinpoint accuracy"の地図感覚は持っておらず、crude map senseに頼っているのだろう。


おもしろかったこと気になったこと

・ウミガメのナビゲーションについては研究がかなり進んでいるイメージだったけど、まだ記載的な報告を積み重ねる段階っぽいのが意外だった。

・論文の中でも言及されていたけど、他の個体が餌場として利用していたエリアを別の個体は素通りして別の餌場にたどり着いていることがあった。目指す餌場がしっかり決まっているということなんだろうか。経路が記録された年や時期が違うとしたら、餌場の状態が違うという可能性はありそう。

・目的地を行きすぎたとか、移動方位がずれていると気づくきっかけはなんだろう。この論文ではcrude mapという解釈をしているけれど、アリやシャコなどのようにpath integration情報に基づいて探索を開始しているという解釈もできないだろうか。探索モードの経路を細かく取れたらおもしろそう。


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