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さよなら、さよなら、さよなら!からはじまった映画体験。映画館に今、できる恩返しを。

「映画が好き」という言葉はほうぼうで聞く。きっとそれを言う人によって、好きの温度や距離は違うだと思うし、映画という表現が好きな人もいれば、家で一人で見る体験が好きな人もいれば、映画館で見ると言う映画体験が好きな人もいるだろう。

私は田舎者だったので、私の映画体験といえば、小さい頃は金曜ロードショーか日曜洋画劇場くらいで、特に日曜洋画劇場がお気に入りだった。両親の影響で洋楽しか知らなかったし、わざわざ英語の授業がある私立の小学校に1時間くらいかけて電車とバスで通っていたくらいに、海外に興味があったから、とまとめたいところだが、淀川長治の「さよなら、さよなら、さよなら!」が聞きたかっただけかもしれない。

中学生の頃、車でしかいけない場所にある商業施設の横に、シネマコンプレックス(と言っても2つくらいしかシアターはない)がどっしりと建った。薄ピンクの外壁に青いライン。今見るとくたびれたお弁当箱のようなのだけど、当時は近未来でポップだった。うれしくて、母と私は映画を観る時間がなくても、車で近くを通ろうものならその映画館に立ち寄り、右手には何枚も選んだ公開予定のチラシ、左手にはバターをかけてもらったポップコーンと、両手にワクワクを詰め込むだけして、ほくほくと帰ったものだ。

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学区のない競争率の高い高校で、みんな四方八方から集まっていたので、私の地元の友人を見つけることができてやっと、初めてと言っていいくらい、自転車を使ってどこかに行く、と言う遊び方ができるようになった。私と好きな音楽も一緒で気の合った男友達Kは、ある日「自転車であの映画館まで行ってみよう」と決めた。私たちにとってはちょっとした冒険だった。観た映画は覚えてない。でも私たちにとっては当時、自力で遠くの映画館まで行って映画を観る、ということ自体が、映画体験だった。

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さらに遠い場所に、もっと大きなシネコンがあると知り、私は大学受験を終え、自分の最後の10代となる誕生日にそこに一人で行ってみることにした。高校で散々ダンスやバンド、映像編集、ラジオドラマ、恵まれない子供達へのボランティア活動など、新しいことを山ほどはじめ、途轍もないバイタリティでこなしていたにも関わらず、映画館に一人で行く、ということは当時とても神聖なように思えた。誕生日に全ての誘いを断り、一人でいることを決めたことも、その不可侵なひとり時間という自分への約束ごとだったけれど、一人を楽しんでやる、と思った時、行きたい場所はまず映画館だったのだ。

その年、私はTSUTAYAでバイトを始めていた。元々は洋楽の知識を買われて入ったものの、働いている人たちで気が合う人は皆「ミニシアターチーム」で、普通は入って最低3ヶ月、業務習得やスキルが認められなければチームには配属されないのだが、リーダーが選んだ作品のPOP(お客様に対してオススメするコメントとして商品に添える商品説明)を書いてきて、よければ入って良いと店長に言ってもらい、結果、まんまと入った。そこで「ミニシアター」の存在を初めて知るのである。そこから、シネコンで見るようなハリウッド映画以外にも、ヨーロッパをはじめいろいろな国で映画が作られていて、どれも色があり面白いことを知る。それをお客様に勧めたくて、製作国別の棚を作りたい、手に取りやすくしたいから、とクレヨンで可愛く書いた国旗を貼り、棚を展開させてほしい、と出しゃばってやらせてもらった。今思うといちバイトに、あれだけ好きにやらせてくれたのはとても良いお店だったなと思う。

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自分なりにお客様と会話してDVDを勧めると、感想を伝えに来てくれたり、君の勧めるものを観たい、と言って会いに来てくれるようになり、私にとって映画は新しい人と出会い、気分や感情を共有してくれる飛び道具のようだった。

そして大学で上京すると、私の映画体験は一変した。

文字上・概念でしか知らなかったミニシアターが、たくさんあった。

アップリンク武蔵野館ジャック&ベティバウスシアター(閉館)、イメージフォーラム… どれも思い出深く、今でももちろん訪れる。

東京で生まれ育った人には当たり前なのかもしれないけれど、私にとってはこのミニシアターの存在は貴重で、映画の世界を万華鏡のようにいくつもの側面を照らすひとつひとつの光のように思っています。

それぞれも語りたいけれど… もう十分すぎるほど長くなってしまって、反省している

どうしよう、これ全部前置きだったんだけど笑、相変わらずまとめるの下手、引き算が苦手な私だけれど、要するに、今いろんな映画館が危機を迎えていることが、途轍もない心痛なのです。

4/29からのGW、おうちでミニシアター幕開けしませんか?

STAY HOME MINI-THEATER
ミニシアターらしい個性豊かな作品や貴重な作品、そして”ミニシアター”の魅力でもある上映後の監督やキャストによる遠隔収録によるトークショーの模様も併映するなど、今この状況でできる限りのことにチャレンジ!

そして、一部にはなりますが、映画館への寄付に一添えを…!
署名だけでもいいです。一瞬です。クラウドファンディングもあります。

SAVE the CINEMA  ミニシアターを救え!
SAVE the CINEMAは映画と人、映画館と人、人と人、すべてを繋ぐ大きな架け橋になることを目的として活動をしております。



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